【釉薬って何】

 釉薬は、陶磁器素地の表面に施されたガラス質の層である。板ガラスやびんガラスなど、一般のガラスと同様の物質であるが、釉はアルミナ分が多いのが特徴である。

陶磁器釉とガラスの化学組成例

名 称

SiO2

Al2O3

Fe2O3

TiO2

CaO

MgO

K2O

Na2 O

中国龍泉窯青磁釉

69.16

15.40

0.95

-

8.39

0.61

4.87

0.32

鍋島窯古陶磁器釉

66.70

18.85

0.67

-

8.41

0.77

3.50

1.77

スコータイ遺跡古陶磁釉

57.17

13.84

0.99

0.07

19.66

2.43

2.41

1.45

びんガラス

72.90

2.00

0.04

-

10.95

0.14

1.40

12.30

板ガラス

72.60

1.83

0.10

-

7.91

3.80

12.19

<釉薬の起源>
 中  国: 紀元前1500年頃、植物の灰を使った釉薬が用いられた。(Ca系釉薬)
 中近東: 紀元前3000年頃、天然ソーダー灰を使った釉薬が用いられた。(Na系釉薬)

<釉のできる過程>

   @ 施釉時・・・・・素地に粒子状の釉がかかっている状態
   A 焼結・・・・・・・950℃ぐらいで粒子同士がくっつく
   B 溶融・・・・・・・1200℃前後で表面が液体状態になる
   C 過焼・・・・・・・釉薬がアワ状になる

<釉薬が溶けるということ>
 釉薬は、焼成することにより、温度がその融点を超えると溶融し、液体状態になる。適度な溶融状態から冷却させることにより、平滑な表面が得られやすい。
 釉薬は、長石、石灰石などと混合することにより溶けやすくなる。

物 質 名

融点(℃)

  カリ長石

1170

これらが混合されることにより、低温で溶融し、釉を形成する。

  ソーダ長石

1120

  石    英

1723

  カオリナイト

1770

  石 灰 石

2570

<釉の働き>
 @ 水などの液体を漏れないようにする。
 A 陶磁器を汚れにくくする。
 B 着色、絵付けなどの加飾を可能にする。
 C 陶磁器の強度を増加させる。

<釉の種類>
 (1)外観、表面性状による分類
  @ 透明釉・・・・・透明で表面光沢のあるガラス質の釉
  A マット釉・・・・表面に細かい結晶が存在し、つや消し状態の釉
  B 結晶釉・・・・・表面に大きな結晶が存在する釉
  C 乳濁釉・・・・・表面は光沢があるが、内部に結晶または分相したガラスが存在し、乳濁した状態の釉
 (2)焼成温度による分類
  @ 高火度釉・・・SK6(1200℃)以上で焼成する釉。長石釉、石灰釉、石灰マグネシア釉、石灰バリウム釉、石灰亜鉛釉など
  A 低下度釉・・・SK6(1200℃)以下で焼成する釉。フリット釉、鉛釉など
 (3)組成による分類(無数に分類されますのごく一部を掲載しました)
  @ 長石釉・・・・ほとんど長石だけでできた釉・・・志野釉など
  A 石灰釉・・・・長石-石灰石、長石-木灰系などの釉
  B 石灰マグネシア釉・・・長石-石灰石-タルク、長石-ドロマイト系などの釉
  C 石灰バリウム釉・・・・・長石-石灰石-炭酸バリウム系などの釉
  D 石灰亜鉛釉・・・・・・・・長石-石灰石-亜鉛華などの釉
  E フリット釉・・・・・・・・・・アルカリ、ホウ素などを多く含むフリット(ガラス)を用いた釉
  F 鉛釉・・・・・・・・・・・・・長石-石灰石-酸化鉛系などの釉