素地を焼いていくと、どのような変化が起こるのか。

100℃

主に粘土(カオリン鉱物、セリサイト等)に吸収されている多量の水分が(これが粘土の可塑性のもととなる)が放出される。陶磁器素地はこれで乾燥状態となり、粘土含有量が多く、また粘土が細かいほど乾燥強度が大きい。水を加えればまた練り土の状態になる。

450℃

カオリンOH基(水酸基)が水として放出され、カオリン鉱物は分解し、メタカオリンといわれる無定型の物質に変わる。水を加えても元に戻らない。素地の強度はかなり大きくなる。カオリン鉱物の量が多くまた細かいほど強度は大きい。

500℃

素地に含まれている有機物が炭酸ガスと水に変化し終わる。

573℃

素地中の石英がα型からβ型に転移し異常膨張が起こる。(冷却時も逆の現象が起こる。このタイプの転移を可逆型転移という)

800℃

粘土の内セリサイト、スメクタイト(モンモリロナイト)、パイロフィライトのOH基(水酸基)が水として放出される。無定型にはならないが、水を加えても元には戻らない。ドロマイトがあると分解する。

1000℃

粘土鉱物がムライト(または類似鉱物)に変化(再結晶)する。素地の強度は更に大きくなる。石灰石が分解する。分解した石灰石成分(CaO)、ドロマイト(MgO,CaO粘土再結晶物が反応し、灰長石またはゲーレナイトが生成するため、素地の強度は大きくなる。(石灰質陶器、白雲陶器)

1150℃

長石、セリサイトが溶融し始めガラスを生成。他の素地成分がこのガラスに溶融したり、ガラスが接着剤の役割をし、素地崩れ強度が急激に大きくなり始める。以後この現象が進み形状が、磁器状態にまで到達した後、形状が崩れ完全に溶融するに至る。

1200℃

この温度くらいから石英がクリストバライトに変化し始める。石英が細かいほど、またガラス量が少ないほど(素地の長石、セリサイト量が少ないほど)生成量が大きい。クリストバライトは200℃付近でα-β移転による異常熱膨張を起こす。さめ割れの等の原因となりうる。