政策レポート−名張市長 亀井利克
挑戦レポート●2004  市政一新、地域再生。

「新しい公」を目指して
 平成十四年四月以来、九百日あまり−−。名張市長として日々、全力の歩みをつづけてまいりました。市町村合併で自主自立の道を選択した名張市にとって、この二年半は「市政一新」を合言葉とした改革の毎日となりました。多様な主体の協働による「新しい公」を基盤とし、持続可能な発展の道を探って地域を再生するために、名張市はさらなる挑戦をつづけています。
≪ 目 次 ≫
まちづくりの方向性
「公」のなりたち
「新しい公」の形成
「新しい公」のために (かきだし)
市民の意見を市政に反映させる仕組みづくり
市民が主体のまちづくり
財政的自立への努力
新たな課題に向かって
名張市内の14地域の委員会
まちづくりの方向
 本年四月、市制施行五十周年を迎えたおり、市長としての所信の一端を小冊子『名張市の挑戦』に述べさせていただきました。そこにも記しましたとおり、名張市の挑戦とは、二十一世紀の新たな地域社会づくり、地域住民が主人公となったまちづくりを実現することにほかなりません。
 市民みずからが知恵を寄せ合い、力を合わせて汗を流し、自分たち自身の手でまちづくりを推進する。そうした挑戦を可能にするために、私は次の三つのプログラムを方向づけ、順次実施に移してきました。

 @行財政経営一新、市政一新の取り組み……行財政経営一新プログラム(平成十五年三月策定)
 A福祉の理想郷に向けて……「新しい総合計画」の推進(平成十六年三月策定)
 B住民自治の道を開く参画・協働のシステムの確立……自治基本条例の策定(策定中)


 今回のレポートでは、このプログラムに基づく具体的な取り組みについて、「新しい公」という視点からご報告を申しあげたいと思います。
 少子高齢社会と財政難という二重の課題に直面しながら、名張市が持続可能な自治体としてまちづくりを進めていくためには、市民と行政が情報と目的を共有し、お互いの役割と責任を自覚して、緊密な連携と協働を実現することが必要です。
 市民一人ひとりがみずからの問題として地域の課題に取り組み、多様な人や組織が協働することで「新しい公」を確立する。そうした時代の要請に応えるため、名張市はさまざまな施策を展開しています。
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「公」のなりたち
 最初に、「公」について考えてみたいと思います。中国ではもともと、「公」という言葉は「官」を意味するものだったとされています。しかし日本では、「公」は国家や官を指すと同時に、さまざまな共同体の枠組みを示す言葉としても使用されていました。
 江戸時代には、幕府は「公儀」と呼ばれ、その主宰者は「公方」と呼ばれていました。いずれも国家としての「公」を表現する言葉です。一方、諸大名の所有地はすべて私領でしたが、私領の中では大名が「公」の頂点であり、その下に多くの「私」が仕えていました。商家もまたひとつの「公」であったことは、そこに働くことが「奉公」と呼ばれていたことからも知られます。
 つまりわが国の社会には、国家をはじめとして多様な「公」が存在していたことになります。「私」はその「公」に従属し、「公」と「私」はあくまでも上下関係で結ばれているのが一般的でした。
 現代社会ではおおむね、行政が「公」を担当するものとされていますが、行政の「お上意識」が批判されてきたことからもわかるとおり、「公」は「私」の上に位置するものであり、行政は市民から隔たった場で「公」を運営するものだという考え方が支配的でした。
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「新しい公」の形成
 そうした古くからの「公」に対して、近年、「新しい公」という概念が定着してきました。前者を「国家的公共」、後者を「市民的公共」と呼ぶこともありますが、行政が担うものとされていた地域の課題に市民自身が主体的に向かい含い、行政と協働しながらその解決を図っていくあり方のことが、「新しい公」という言葉で表現されています。
 わが国では従来、「私」は「公」に従うものと認識されていましたから、「私」が「公」に参画するという意識が希薄だったのですが、住民の二ーズや地域の課題が多様化し、行政だけではそれに対応しきれなくなったことや、身近な問題もすべて行政に任せてしまう「お任せ民主主義」の弊害が明らかになってきたこと、さらに各種の市民活動や住民運動が活性化して市民の社会参加が進んだことなどから、一九九○年代に入って市民的公共性が強く認識されるようになり、現在では住民やNPO、企業、団体、行政などの多様な主体が、上下ではなく対等な関係のもとに連携することで「新しい公」が形成されつつあります。
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「新しい公」のために
 「新しい公」を基盤としたまちづくりを推進するために、名張市は何を進めているのか。今回は、
@市民の意見を市政に反映させる仕組みづくり
A市民が主体のまちづくり
B財政的自立への努力
−−以上の三点に関して現況をお知らせいたします。
市民の意見を市政に反映させる仕組みづくり
 市民との架け橋として発行されている「広報なばり」を、本年五月にリニューアルしました。従来は月一回の発行で、地域団体に配付作業をお願いしていたのですが、ほかの行政関係チラシを一元化したうえで、月に四回、日刊紙に折り込んで配付するスタイルに改めました。「行政が身近になった」「広報紙を必ず読む習慣が定着した」などの評価をいただいています。また、一元化によって印刷経費が削減されたことも大きなメリットとなりました。
 印刷媒体だけでなく、インターネットも積極的に活用しています。平成十年九月に開設した市のホームページには、年間四十一万件のアクセスがあり、情報の共有と広聴機能の強化に役立っています。十四年九月には電子メールや郵便、ファクスによる「市長への手紙」の受け付けを始め、十五年度には三百四十八件をお寄せいただきました。
 市民との直接対話も充実させ、平成十五年度には、市民と市長が自由に意見交換する「まちかどトーク」が十回、テーマを設定して市当局が説明を行う「出前トーク」は三十六回の開催となりました。
 平成十四年九月には、市の政策や条例を策定するにあたり、決定以前の素案の段階で公開して広く意見を求めるパブリックコメント制度を導入し、十五年度は六案件に対し百十三件の意見を頂戴しました。
 こうした多様な手法を駆使して集約された市民の意見は、行政全般に確実に反映されています。
市民が主体のまちづくり
 名張市は平成十五年四月、「ゆめづくり交付金」と名づけた地域予算制度を導入しました。従来の補助金のように事業を限定することなく、使途をすべて地域にゆだねて配分される予算です。
 この制度により、地域のことをもっともよく知る住民自身の自己決定と自己責任に基づいて、地域コミュニティを再生させ、個性を活かしたまちづくりを進める活動が市内十四の委員会の手で進められています。
 一方、それぞれのテーマに基づいて活動する各種団体を支援するために、本年四月には市民活動支援センターを開設しました。センターでは、地域社会への貢献を目指すさまざまな団体が交流や連絡、印刷などの作業を行っており、市民活動の中核的施設に育ちつつあります。
 以上のとおり、「新しい公」の確立を支援するための施策が着々と実現しつつあるところですが、それを支える財政面の問題もお伝えしておかなければなりません。
財政的自立への努力
 市長に就任して間もない平成十四年九月、私は「財政非常事態宣言」を発表し、市財政の危機的状況を告知するとともに、喫緊の最重要課題として財政健全化緊急対策に取り組みました。翌十五年三月には「市政一新プログラム」を策定し、十五、十六両年度で市財政の建て直しを断行することを目指しました。
 このため、進行中の大規模事業にも適宜見直しを加えながら徹底した改革を進めた結果、平成十五年度には総額十二億六千万円の経費削滅が図られ、財政健全化緊急対策と「市政一新プログラム」によって一定の成果をあげることができました。
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新たな課題に向かって
 順調に進んでいた名張市の財政健全化に、ここへ来て、国が進める三位一体の改革という新たな課題が立ちはだかってきました。補助金の削減、地方交付税の改革、税源の移譲−−以上三つを同時に進めるこの改革は、地方財政のスリム化と地方自治体の裁量権拡大を目的とし、地方分権を推進しようとするものです。
 ところが現実には、税源移譲が伴わない状態で交付税や臨時税制対策債の大幅な削減が地方に押しつけられ、本来の姿からほど遠い形で改革が進められつつあります。市町村合併に加わらない道を選んだ名張市には、さらに厳しい交付税の算定が行われることも予測されます。
 どんな苦しい状況に置かれても、名張市の挑戦を停滞させることはできません。名張市を自治体として自立させ、住むことに誇りが感じられるまちに再生して、この地に「福祉の理想郷」を実現するための歩みには空白は許されません。
 それには、平成十五、十六両年度の成果を糧として、これまでの「市政一新」を今後の「地域再生」に結びつける努力が必要です。「新しい公」を確立し、それを基盤として、市民一人ひとりが主人公になったまちづくりを進めることが求められます。
 市民のみなさんがそれを自覚し、「新しい公」の一員としてまちづくりに主体的に参加してくださることを期待しています。
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名張市内14地域の委員会
名張市内14地域の委員会(名称)
@設置年月日 A地域の人ロ B地域の特徴
C組織の構成
Dおもな事業
桔梗が丘まちづくり委員会
@平成15年9月6日 A14,000人 B住宅団地
C代議員制度を導入し、理事会、役員会、部会
D10号公園整備計画策定、自主防災訓練、防犯パトロール
梅が丘地域づくり委員会
@平成15年7月27日 A8,184人 B住宅地と農山村部
C役員会、部会
D梅の木3,000本植樹
 
名張地区まちづくり推進協議会
@平成15年6月29日 A8,443人 B市の中心市街地
C役員会、専門部会、ワーキング部会
Dエコロード整備、まちなか再生プラン
蔵持地区まちづくり委員会
@平成15年4月1日 A3,489人 B農村部と住宅地
C運営委員会・事業部会
D伝統文化保存事業、桜植樹とちびっこ広場整備
薦原地域づくり委員会
@平成15年7月26日 A2,241人 B農山村部
C理事会、役員会、事業委員会、部会
D地域マップ作成事業、環境美化活動
美旗まちづくり協議会
@平成15年8月31日 A9,348人 B農村部と住宅地
C役員会、運営委員会、事業部会
D馬塚月見コンサート、福祉施設行事への参加
ひなち地域ゆめづくり委員会
@平成15年9月25日 A5,401人 B農村部と住宅地
C理事会、専門部会
D夏祭りの開催
すずらん台町づくり委員会
@平成15年8月31日 A4,121人 B住宅団地
C役員会、執行委員会
D通学路安全確保事業、広報褐示板設置事業
つつじが丘・春日丘地区地域づくり委員会
@平成15年6月28日 A11,505人 B住宅団地
C役員会、部会
D公園活性化事業、福祉マップ作成、いきいきサロン事業
錦生地区地域づくり委員会
@平成15年6月28日 A2,266人 B農山村部(一部住宅地)
C役員会、評議員会、部会
D防災訓練の実施、ホームページの開設
赤目ふるさとづくり委員会
@平成15年6月1日 A4,474人 B農村部と住宅団地
C理事会、役員会、事業委員会、専門部会
D県道赤目滝線整備推進活動、交通安全教室、防犯パトロール
箕曲地域づくり委員会
@平成15年8月10日 A3,130人
B農山村部(一部住宅地)と幹線道路沿い
C役員会、部会
D箕曲史編纂事業、ごみ拾い等クリーン事業
百合が丘自治連合会
@平成15年4月1日 A7,732人 B住宅団地と農山村部
C連合役員会、連合評議員会
D星空のコンサート、環境美化行動
国津地区地域づくり委員会
@平成15年8月31日 A979人 B農山村部
C役員会、部会
D特認校支援事業、ホタル狩り
 
名張市長  亀井利克
平成16年10月

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