日食

今回の皆既日食におけるコロナの形態

いよいよ太陽も細くなり,第二接触が近づくと,ざわめきが始まり口笛,歓声が各所でおこりダイヤモンドリングが見事に見えその瞬間,すばらしいコロナが真っ黒い太陽の周りに輝き,双眼鏡を通してみると,刷毛でなでたような磁力線で形成された細いすじが何とも言えない素晴らしい光景として目に焼き付いて行く。
また,数個のプロミネンスが黒い太陽表面に小さく深紅に輝いていた。
しばらくはこの光景に見とれていたが,スケッチブックを手にしていることに気が付き,あわててスケッチを始めた。
用意していったスケッチブックにはあらかじめ太陽直径の1倍,2倍,3倍,4倍,5倍の円を書いてあったので,コロナの広がりを双眼鏡で確かめたところ,西方への広がりは非常に長く,ほぼ4倍と見積れた。
同じグル−プの中に目盛りのついた双眼鏡を準備していった方もいて,隣から約4倍以上と言う声があり,自分の見積に自信を持ち双眼鏡で時折眺めながらスケッチを行った。
余りにも素晴らしい太陽の姿に自然に手が振るえてしまうのを感じた。
双眼鏡ではコロナの中の非常に細かい構造まではっきりと観察することができる。
始めての皆既日食でこの構造をすべて満足に表現することは不可能であったが,西方へ太陽直径の約4倍の距離までコロナの先端部が広がっていたこと,北東から北の方向に広がっていたコロナはすこし先端部が地球からみて右方向へ曲がっていたこと,までは確認できたが,南東方向へのコロナの広がりの再確認などは,今回の皆既日食の皆既継続時間2分16.4秒の間には不可能であった。
西方へのコロナの広がりは,8月上旬に出現していた巨大黒点群が太陽面の西縁に達している時期でもあるので,この影響も少なからずあるのではないかと思われる。
コロナの形状は太陽活動の極大,中間,極小の時期により変化することは1903年にロッキャ−により分類されている。
これに基づくマウンダ−の模式図では,今回のコロナは極小型の影響の残った中間型と見ることができる。
太陽黒点相対数の変化から見てもちょうどこの時期に相当していると考えられる。(鈴木美好)


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