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2005年11月中旬
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●11月12日(土) いやー、まいった。やっぱりまいった。きのうの朝はホームページ作成ソフトの不調のせいで更新を果たせず、これは不吉だと泣きたいような気分であれこれ試みているあいだにぱんぱかぱーん、雄松堂書店オフィシャルサイトで第四回ゲスナー賞が発表の運びとなっておりました。不吉な予感はあやまたず当たっていたようで、名張市立図書館の江戸川乱歩リファレンスブック3『江戸川乱歩著書目録』は残念ながら入選にとどまりました。 目録・索引部門の受賞作品を引き写しておきますと──
受賞に至らなかった入選作品には、目録・索引部門と本の本部門をこきまぜて六点が枕を並べました。ついでですから写しておきます。
入選作品の書名や版元などをうち眺めておりますと、名張市立図書館が一般の美術館や大学図書館と堂々肩を並べていることに気がつき、名張市もなかなかたいしたものではないかという錯覚に陥るから不思議なものです。 目録・索引部門に関して申しますならば、受賞作品にはちょっと太刀打ちできないなというのが正直な印象です。いかに大乱歩のそれであるとはいえ、そして内容の周到、造本の美麗、組版の精妙、さらには一巻の目録を支える志操の堅固みたいなものまで紙背に徹して残りなく勘案してみたところで(われながらよくいいますが)、結局のところ『江戸川乱歩著書目録』は単なる著書目録に過ぎず、その意味ではありきたりなものであって、『日本の近代活字 本木昌造とその周辺』や『あるサラリーマン・コレクションの軌跡〜戦後日本美術の場所〜』に比較すれば取り扱う素材においておおいに地味であると感じられます。個人的には、これはもう土俵が違うのではないかとさえ判断される次第です。 その点、『南方熊楠邸蔵書目録』と『南方熊楠邸資料目録』は文字どおりの目録ですから、『江戸川乱歩著書目録』はここに至ってようやく同じ土俵で戦える相手に巡り会えたことになるのですが、勇躍土俵にあがってみたならば相手はなんと二巻ワンセット、それも並みの力士では全然なくて、朝青龍と琴欧州がタッグを組んで待ち構えていたようなものですから、いくらなんでもそれはないだろうと思わざるを得ません。悲運というのはこうした場合に使用すべき言葉でしょう。とは申しますものの、『南方熊楠邸蔵書目録』と『南方熊楠邸資料目録』の銀賞受賞はまことに慶賀の至りであって、心からお祝いを申しあげたいと思います。 ちなみにこの熊楠の目録二巻、私は5月3日付伝言でこんな具合にご紹介申しあげましたっけ。
この二巻、私は関係者の方のご厚意でご恵投をたまわり、そのときにはこれがゲスナー賞のライバルになるなどとはなぜか夢にも思っていなかったのですが、この二巻と並べられたら『江戸川乱歩著書目録』の遜色は覆うべくもないでしょう。いやそこまで謙遜する必要はないのかもしれませんが、かたや熊楠の遺族から蔵書や標本などの資料ぐるみ熊楠邸を遺贈され、錚々たるメンバーを集めて目録二巻をまとめたうえで来年4月には南方熊楠顕彰館を開設しようという田辺市、こなた市立図書館嘱託が本業の合間を縫いながら全国の乱歩ファンに支えられつつほそぼそと著書目録をまとめただけで、所有者から寄贈された乱歩生誕地碑のある土地の活用法さえまともに考えられない名張市。彼我の径庭は歴然としていると申しあげるべきでしょうか。 話の流れがいささか強引であったかもしれませんが、その流れに沿って三重県は鈴鹿市の話題。朝日新聞オフィシャルサイトに掲載された竹内宏行記者の記事をどうぞ。
斎藤緑雨の生家跡を寄贈されながら、鈴鹿市がそれを十年間もほったらかしにしておいたあげく投げ出してしまったというニュースです。同市の緑雨関連事業に関しては、前市長は推進派であったが現市長はまったくそうではないという事情もあると仄聞いたしますが(そのせいで斎藤緑雨賞も廃止されたと聞き及びます)、それにしてもあまり誉められた話ではありません。 朝日の記事には「文化行政の貧困」だの「文化戦略の欠如」だのといった手厳しい言葉が見えますが、これはむろん鈴鹿市に限った話ではなく、名張市だって同断でしょう。『江戸川乱歩著書目録』がゲスナー賞に入選したのは名張市における文化行政の輝かしい成果であるはずなのですが(体育会系の話題に置き換えれば、県大会初出場初優勝、そのあと甲子園に初出場してベストエイト入り、みたいな感じでしょうか)、目録をつくった名張市民(私のことです)が「名張市だって同断でしょう」と申しあげているのですから、こんな確実なことはありません。名張市だって同断でしょう。 ちなみに鈴鹿市は、文人などという扱いにくくて人気も出そうにない人種はさっさとほっぽり出し、もっととっつきのいい素材を売り出すことに決めたようで、あす13日には大黒屋光太夫記念館なるものがオープンするそうです。ま、お役所の考えることはせいぜいそんなところかとも思われる次第ですが、大黒屋光太夫はどうでもいいとして、問題なのは名張市における乱歩記念館。 これまでのところ1969年版、1997年版、2003年版という三つのバージョンで乱歩記念館の青写真が描かれようとし、いずれもポシャってしまったことはすでにお知らせしたとおりですが、名張市が寄贈を受けた乱歩生誕地碑のある土地に乱歩文学館を建設いたすべく、名張まちなか再生委員会が性懲りもなく現在検討を進めているプランは名張市における乱歩記念館構想2005年版、すなわち数えて四つめのバージョンとなるわけで、しかしもういい加減にしてはどうかね、と私は最近こんなことばっかいってるわけですが、何の理念も方針もなく、それどころか必要とされる知識や見識もなしにハコモノぽんとつくってそれでおしまいみたいな話、ほんまにもうええ加減にしとかんあかんよ。 |
●11月14日(月) いやー、相変わらずまいってます。ホームページ作成ソフトの塩梅がどうもよろしくありません。塩梅というより、私がソフトをつかいこなせていないということなのかもしれませんが、なんだかんだやっているあいだに、左肩のロゴ下にある「reference」から「guest」まで四行のリンクが完全に死んでしまいました。このリンクはむろんかつて私が設定したものなのですが、設定方法をきれいに忘れ果てておりますので、どこをどう手直しすればいいのか見当もつきません。右肩の「classic」で旧いメニューページにすっ飛んでっていただければとりあえず支障はないのですが、いやー、まいった。 |
●11月16日(水) いろいろな理由であれこれまいっているうちに、2ちゃんねるのニュース速報+板では名張市が大変なことになっておりました。第四回ゲスナー賞発表翌日の11月12日午前1時22分48秒、「【地方自治】永住外国人を含む18歳以上に請求・投票権 三重・名張市が住民投票条例案 1月施行目指す」というスレッドが立てられて、なんか名張市は永住外国人地方選挙権付与の急先鋒であるみたいなことが叫ばれております。 きのうといいきょうといい、朝の私はこのスレッドを読むだけで手一杯。投稿のみならず記載されたリンク先まで目を通しておりますからえらい騒ぎで、たとえばきょう目にしましたこんな投稿の場合──
リンクが設定された「15.天智と天武は兄弟ではない!! 真説・壬申の乱(1997.9.16)」というページも当然読むことになり、天智と天武が兄弟ではないというのはもとより目新しい説ではないのですが、どうして伊勢市民にとって天武天皇が神であることの根拠として壬申の乱が持ち出されなければならないのか、ということに私は頭を悩ませてしまいます。 そもそもこのページは天武天皇こそが本名を金多遂という新羅人、つまりは朝鮮系の人間であったと説いているのですから、この説に従うならば天智から弘文へと継承された本朝の皇位は朝鮮系天武の手で簒奪されてしまったことになります。伊勢市民がそんな天皇を神として奉っているなどと、この投稿者はいったい何がいいたいわけなのか。 いや、いやいや、いやいやそんなこと以前にいったい何なんだこの投稿は。天皇家の長女の婚儀が執り行われたまさにその日の夜に、どうして天皇家の祖先による内乱などという血なまぐさい話題をわざわざ持ち出してこなけれぱならぬのか。それに壬申の乱で自死に追い込まれた弘文の母親である伊賀采女宅子娘は名のとおり伊賀の国の出身で、すなわち伊賀の人間にとって天武天皇は決して神ではないと知ってのこれは狼藉か。この投稿者は伊勢市と天皇家と伊賀地域に喧嘩を売って喜んでおるのか。ここでとりあえず結論を出しておきますと、この投稿者は単なる莫迦にちがいない。 といった具合にいろいろ考え込んだり悩んだりすることが多く、きのうの朝は伝言を一行も書けない始末であったのですが、インターネットにおけるいわゆる嫌韓ってやつですか、あるいはネットウヨってやつなのかな、とにかくそういった傾きを帯びた主張もほぼ理解できたように思いますので、名張市の自治基本条例施行に呼応して定められる住民投票制度について、ちょっと見ておくことにしようかな。名張まちなか再生委員会からは相変わらずうんともすんとも連絡がないことでもありますし。 |
●11月17日(木) まずお知らせです。光文社文庫版江戸川乱歩全集は第三巻『陰獣』が刊行され(10月25日付伝言に記した柳香書院版『石榴』に収められた「陰獣」の異稿は、新保博久さんの解説「『陰獣』もう一つの結末」でお読みいただくことができます)、いよいよ残すところあと二巻となったのですが、『陰獣』の挟み込みチラシにはこんな告知がありました。
了解。じっくり時間をかけて掉尾を飾っていただきたいものだと私は思います。しかし写真とキャプションと索引をそのまま生かし、かてて加えて校訂と註釈か。大変な作業であろうな。 さて、2ちゃんねるニュース速報+板の「【地方自治】永住外国人を含む18歳以上に請求・投票権 三重・名張市が住民投票条例案 1月施行目指す」の件ですが、と思ってアクセスしてみたところ、「このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています」とやらで読むことができないではありませんか。唯一残っている最後のレスがこれです。
「2ちゃんねる Viewerを使うと、すぐに読めます」とのことなのですが、面倒そうなのでとりあえず Google のキャッシュを拾ってみたのがこれ。投稿番号278のスレまで捕捉することができました。しかしこれでは話にならんな。わずか五日ほどの命だったスレッドをネタにするのも間の抜けた話だとは思いますものの、ほかならぬ名張市の話題ではありますし、しかも名張市が、たとえばあるブログで──
なんて感じで「おかしな自治体」呼ばわりされるのは、むろん私とて言論の自由は尊重しているつもりではあるのですが、あまり嬉しいものではありません。ですからもう少しこの話題を検証してみることにして、まず事実関係を確認しておきますと、名張市の12月定例会は11月30日に開会しますが、上程議案のひとつに住民投票条例案があります。上程に先がけて11月10日、市議会総務企画委員会でこの条例案が発表され、それを報じる伊勢新聞の記事が2チャンネルの例のスレッドでソースとして使用されました。 ついで14日、市議会重要施策調査特別委員会でもこの条例案が審議されたのですが、その模様はこのページでお読みいただけます。
この住民投票条例は、来年1月1日に施行される名張市自治基本条例に呼応して制定されるものです。つまり自治基本条例の第七章「参画と協働」第一節「市政への市民参画」で、こんな具合に定められてるわけです。
「別に条例で定める」とされているのが、問題になっている住民投票条例。この住民投票について、自治基本条例ではこんなことも決められています。
この条例は、公表された素案に基づいて今年4月から5月にかけてパブリックコメントが募集され、市民から寄せられた意見に基づいて修正を加えたうえで(上に引用した条例の文中、この色の文字で記したのは素案に新たに加えられた文言、この色の文字で示した箇所は、素案ではそれぞれ「の議決があった」、「6分の1」とされていたものです)、6月定例会において可決されました。以上、名張市オフィシャルサイトの「名張市自治基本条例」に掲載された文書をソースといたしました。 あー、なんかめんどくせーなー。とかいいながらもつづけますと、これがなぜ2チャンネルで問題になっているのか。例のスレッドから投稿を拾ってみることにいたしましょう。
あるいは。
はたまた。
みたいなことなのですが、少数意見としてはこんなのもあります。
そうかと思うとこちら地元民。
またひとり。
この人もそうかな。
ここで地元民のみなさんにお知らせしておきます。名張市は現在、自治基本条例などをテーマとした「市民自治のまちづくりに関する説明懇談会」を市内各地で開催中です。といったって全十四会場のうち十二会場はもう終了。残るは11月20日、くにつふるさと館と比奈知公民館で開催されるのみとなっているのですが、とりあえずこの会場を訪れて訊きたいことを訊き、伝えたいことを伝えるのが、住民投票条例に反対する名張市民のあらまほしき姿ではないのかと愚考する次第です。詳細はこのページでどうぞ。 |
●11月18日(金) 突然ですが、読者諸兄姉にはつつがないご閲覧をたまわっておりますでしょうか。第四回ゲスナー賞が発表された11月11日以来、わが名張人外境はどうにも調子がよろしくありません。きのうなど、このページにアクセスするとパソコン画面がフリーズするようになったとのお知らせを頂戴したのですが、それもおそらく11日以来の不調に起因する現象であると思われます。 もしかしたらパソコン本体に不具合が生じているのか、ほぼ時期を同じくして日本語入力ソフトも変なことになり、これまでに登録してあった単語の辞書が真っ白になってしまいました。それからメールソフトもおかしくなって、結局は別のメールソフトに乗り換える結果となってしまいましたので、アドレスブックはきれいに真っ白。さしたる用事がなかろうと、季節の挨拶などメールで送信していただければ幸甚です。 さて、2ちゃんねるニュース速報+板「【地方自治】永住外国人を含む18歳以上に請求・投票権 三重・名張市が住民投票条例案 1月施行目指す」(すでに過去ログ倉庫に格納されております。キャッシュがこれなのですが、こちらもほどなく消滅してしまうことでしょう)の件ですが、それにしてもあちらこちらとこの件でインターネットを漂流してみましたその結果、若い世代(だと思うのですが)の一部でナショナリズムがここまで浸透し昂揚しているのかと、私はいささか驚いてしまいました。 名張市の住民投票条例がなぜ彼らのあいだで問題になっているのかと申しますと、それがぶっちゃけ在日韓国朝鮮人の参政権に道を開くものだからだというのが彼らの主張なのであって、その根拠はたとえばこの「永住外国人地方選挙権(参政権)付与に反対するメール運動」というページで知ることができます。で、2チャンネルのくだんのスレッドでもそうでしたけど、こうした根拠を基にした臆断と短絡が思索なきコピー&ペーストによってがんがん増幅され、なんだかもうあられもなく付和雷同してしまう輩がとても多いのだなという印象を私は抱いております。 ──おまえらいつのまにこれほどのストレスを抱え込んでしまったんだ。 とさえ、いつのまにか妊娠していた雌犬を茫然と眺めることしかできない飼い主のように、思わないでもない次第です。 試みに「○名張市について書き込んでみましょうPART5○」という掲示板に目を転じてみましても、2ちゃんねるの投稿をそのまま貼りつけて──
などと悲痛な叫びが記された投稿があるかと思うと、これを受けて──
なんて感じで名張市のことを心配してくださっている投稿もあるわけです。「俺、隣だけど」とおっしゃるからには、この投稿者の方はあるいは伊賀市民でいらっしゃるのでしょうか。だとすれば、きょうの伊勢新聞に掲載されたこんな記事にはさぞやびっくり仰天なさることでしょう。
伊賀市はなんと「市内に住む外国人の声を市政に反映させる」のだそうです。当節インターネットを席捲している偏狭なナショナリズムの立場に立つならば、そんなのはとても許されることではないでしょう。それに伊賀市の自治基本条例では、第三章「市民の参加」の第三節「市民投票」にこんなことが定められているのですから、ナショナリストのみなさんはこれにも目くじらをお立てにならねばなりません。
伊賀市は名張市のように住民投票条例を常設しているわけではないのですが、それでも一朝ことあらば市民投票が実施される手筈にはなっており、それに際しては「定住外国人や未成年者の参加に十分配慮する」とされております。いやー、伊賀市も終わりかも。 余談ながら、インターネットをあちこち漂流してみて漠然と気がつくことのひとつは、反語や逆説といった文飾があまり通じない世の中になってきたのだなということであって、いやいや、文飾などという典雅な趣味そのものがすでにして夏炉冬扇のたぐいなのかな。うーん、まあいいか。あすにつづきましょう。 |
●11月19日(土) ここいらで確認しておいたほうがいいのかもしれません。ネット版百科事典「Wikipedia」に掲載された「外国人参政権」の項をお読みください。今回の件でとくに問題になっているあたりを以下に引いておきます。
つづきましては、百地章さんとおっしゃる大学の先生による「永住外国人の参政権問題Q&A」、村田浩さんとおっしゃる高校と中学の先生による「永住外国人の地方参政権」をどうぞ。異なる視点からこの問題が論じられております。 ではここで、例の「【地方自治】永住外国人を含む18歳以上に請求・投票権 三重・名張市が住民投票条例案 1月施行目指す」のキャッシュに残されていた投稿をふたたび見てみることにいたしましょう。
名張市のことをご心配いただいております。「若い世帯がこの先大量に増えそうな予感」などと嬉しいことをおっしゃってくれてるわけですが、事実はそうではありません。名張市が「新興ベッドタウン」として右肩あがりの成長をとげたのは過去の話で、名張市オフィシャルサイトのこのページにある「人口の推移」をご覧いただけば、名張市の人口が平成12年から横ばいをつづけていることがご理解いただけると思います。さらにこのページの「年次別人口表(住民基本台帳人口および外国人登録者を含む)」をご覧いただくならば、市人口が平成12年の八万五千三百六十二人をピークとして漸減状態にあることがおわかりいただけるでしょう。その意味では──
この投稿者の方のほうが実情をよくご存じのようです。関西圏から名張市に転居して子育てを終え、子供と別れてふたりきりで生活するようになった夫婦が、晩年の生活にかつて馴染んだ都市の利便性を求めて「都心回帰」を果たす傾向は名張市ではいまや普通のものであると申しあげていいでしょう。まさしく「大阪から名張に移住てw」みたいな感じなわけです。 とはいえ──
などとご心配をいただいている向きもありますので(厳密には「三重に」ではなく「名張に」とあるべきですが)、ここはひとつシミュレーションを試みてみたいと思います。まず、「【地方自治】永住外国人を含む18歳以上に請求・投票権 三重・名張市が住民投票条例案 1月施行目指す」では──
といった具合に「200人」という数字が取り沙汰されていますが、これは2002年11月22日付産経新聞に掲載された名張市内における永住外国人の数だそうです。いっぽう、毎日新聞オフィシャルサイトの11月11日付記事「名張市:住民投票条例案を市議会に提示、来年にも施行 新税創設など想定 /三重」 によれば、名張市における永住外国人を含む十八歳以上の住民の総数は「今月初旬現在、6万9000人程度」だそうです。 さて、名張市の住民投票条例では「永住外国人を含む18歳以上の住民は、市政に係る重要事項について、その総数の50分の1以上の者の連署をもって、市長に住民投票を請求することができる」うえ、その署名者数が「永住外国人を含む18歳以上の住民総数の4分の1を超えたとき」は住民投票を実施しなければならないと定められています。つまり簡単に申しあげてしまえば、十八歳以上の永住外国人の数が総数の四分の一を上回った場合、彼らから請求がありさえすれば名張市は否応なく住民投票を行わなければならない。 そこで計算。産経と毎日の記事に基づいて、永住外国人を含む十八歳以上の住民の総数が六万九千人、そのうちの永住外国人が二百人だと仮定しましょう。現時点では、総数に占める永住外国人の比率は約0.3%。
この0.3%を全体の四分の一、すなわち25%にまでもってゆくにはいったいどれだけの数字が必要なのか。ささっと計算してみましたところ(なんかきわめて不毛な計算だという気がしますけど)、ざっと二万二千八百人が加われば総数の四分の一を永住外国人が占めることになります。
11月1日現在の名張市の人口は八万四千六百二十五人ですから、これに二万二千八百人が加わるとなると十万七千人あまり。いやー、名張市もとうとう十万都市の仲間入りか。なんとなく嬉しいような話ではありますけれど、実現の可能性は別にして、数字のうえではこれは不可能な話ではありません。 「永住外国人の地方参政権」によれば「現在、日本の永住資格を持っている外国人は約63万人います。そのうちの52万人あまりが韓国籍・朝鮮籍」だそうです。念のために法務省のデータを確認してみると、入国管理局が今年6月に発表した「平成16年末現在における外国人登録者統計について(概要)」(概要版ではない pdf 文書はこちら)なるものがありましたので、pdf 文書から永住者に関する図表のページを無断転載しておきます。 これによれば、昨年末現在の永住者は七十七万八千五百八十三人、うち韓国朝鮮籍の一般永住者四万二千九百六十人、特別永住者四十六万千四百六十人ですから、このなかから二万二千八百人が名張市にお引っ越しをするというのは、あくまでも数字のうえでなら不可能な話ではないでしょう。では、総数二万三千人となった永住外国人は名張市政を牛耳ってしまうのか。 住民投票に限定して申しあげますと、そんなことはまずあり得ないでしょう。そもそも住民投票なるものは、市政の重要課題に関して民意を直接確認するためのものなのであって、住民が政策を提案するための制度ではありません。したがいまして──
というせっかくのアドバイスも、遺憾ながら実行に移すことは不可能なわけです。住民投票が正式に制度化されても、住民がその制度を利用して「永住外国人の請求・投票権の白紙撤回を求め」るという提案を行うことはできません。逆に名張市が「永住外国人の請求・投票権の白紙撤回」という施策を打ち出した場合、住民側がその施策に関する住民投票を請求するために署名集めを行うことは、それが市政の重要課題であると判断されるのであれば可能でしょう。 念のために「Wikipedia」に掲載された「住民投票」の項をお読みいただくことにして、一部を以下に引いておきます。
いやー、とても時間がかかってしまった。本日はこれまでといたします。 |
そろそろ倦み果ててきた感じもいたしますが、もう少しつづけましょう。 きのうの結論は、名張市の住民投票条例が原案のまま制度化されたとしても、それを永住外国人がほしいままに利用するためには二万二千八百人が大挙して名張市に転居してこなければならず、かりにそうなったとしても彼らにできることは住民投票の請求でしかない、というものでした。つまり彼らには、名張市が打ち出した施策に対して住民投票を求めることしかできない。そして、かりにその投票の結果によって彼らが市政を壟断できるようなケースがあったとしても(それがどんなケースなのか、仮定することすら私にはできませんが)、彼らは投票権を有する住民の四分の一を占めているに過ぎないのですから、残り四分の三の日本人が彼らに反対する意思を投票で示せば、彼らの野望は見る影もなく雲散霧消してしまうしかありません。 住民投票という問題に限定して考えれば、以上のようなことでおしまいにしてもいいように思われるのですが、嫌韓ナショナリズムに基づくネットナショナリストの懸念の実体はおそらく、2ちゃんねるの「【地方自治】永住外国人を含む18歳以上に請求・投票権 三重・名張市が住民投票条例案 1月施行目指す」にあった次の投稿に示されているようなことでしょう。
これはもう、あらゆる可能性のなかから最悪の糸だけを選り抜いていった先に織りなされる奇妙な予想図であるとしか、私には申しあげられないような気がいたします。あるいはいっそ、こんなことを申しあげたら嫌韓ナショナリストのみなさんからいっせいにお叱りないしはお蔑みをいただくことになるのでしょうけれど、これは単なる陰謀史観に過ぎないと評しておきたいような気もいたします。いずれにせよ当節の地方自治体には、こんな仮想の話よりもはるかに切実な問題が厳然として存在しているということだけはたしかでしょう。 2ちゃんねるのスレッドのソースとなっていた11月11日付伊勢新聞の記事「18歳以上に請求・投票/名市が住民投票条例案」によれば、「住民投票をできるのは、市の名称変更や合併など市の存立にかかわる選択や、目的税の導入など市民に負担を求める施策の実施、巨額の支出が必要となる大規模な公共施設の設置など、市政にかかわる重要事項について」なのだそうですから、もっともわかりやすいと思われる「目的税の導入」を取りあげてみましょう。 つまり名張市が、何が切実といってこれほど切実なものはほかにないであろう財政難という問題に直面しながら、たとえば高齢者福祉充実のために市独自の目的税を創設すると仮定しましょう。これはたぶん国籍に関係なく課せられる税金になるはずです。で、こんな税制を導入してもいいですかと、名張市は住民投票で民意を確認することになります。その場合、確認する相手が日本人だけでいいのかどうか、ということがいまや問題になっているというわけです。 先日お知らせした11月18日付伊勢新聞の記事「伊賀市が外国人住民協議会の委員を募集/県内初」も同様の問題を指し示すものであって、この協議会は「外国人に市政に参加してもらい、多文化共生社会の足掛かりにするのが目的」なのだそうですが、伊賀市において少なからぬ数の外国人がげんに生活を営んでいる以上(少なからぬ数、というのはなんとも曖昧な表現ですが)、その市政に外国人の意見を反映させなくてもいいのかどうかという問題がいまや無視し得ないものになっていて、それがこうした協議会の誕生を促しているという寸法です。 2ちゃんねるの例のスレッドには──
という投稿も見ることができ、名張市民が地元の問題に目覚めてくれるのはまことにありがたいことなのですが、この方は2ちゃんねらーの支援協力を得て何らかの行動に出てくれたのかな。「正直地元民の私もボーッとしてる間にこんなことになろうとしています」とおっしゃいますけど、この地元民の方は名張市におけるさまざまな問題に関してもぼーっとしていらっしゃるだけなんじゃないのかな。目覚めてくれるのは結構なことですが、思索なきコピー&ペーストで莫迦さを増幅されたネットナショナリストがいくらメル凸や電凸を仕掛けてみたところで、そんなものは権力や体制にとって蚊に刺されたほどのことでもないでしょう。 えーい歯がゆい。おまえらネットナショナリストの胸にはテロルの炎というものが燃えさかってはいないのか。クリスマスキャンドルの火が燃えていることはあっても、テロルの炎なんか八坂神社のオケラ火ほどにも燃えておらんようだな。えーいくそったれども。もっと真面目にやれ。やるのなら死ぬ気でやれというのだ。結局のところおまえら、仮想の電脳空間で反日ナショナリズムと嫌韓ナショナリズムの合わせ鏡ごっこやってきゃっきゃきゃっきゃ喜んでるだけの連中なのか。 いやいかんいかん。思わず胸にテロルの炎を絶やさないナショナリストの気分になってしまいましたが、ふと気になって「○名張市について書き込んでみましょうPART5○」を眺めてみますと、ありゃりゃ、ここにはどうやらナショナリズムの気配さえないようです。
はいはい。その「二人組みの外国人」は名張市内をかけずり回って甲斐ない布教に明け暮れる末日聖徒イエス・キリスト教会、平たくいえばモルモン教のアメリカ人青年です。それから名張市の外国人数はですね、11月1日現在で人口八万四千六百二十五人のうち六百七十五人、つまり住民総数の0.79%を占めています。上野市、というより伊賀市では10月31日現在で十万三千二百三十七人のうち四千六百五十人、比率は4.50%。これは名張市よりもかなり多い数で、だから外国人住民協議会なんてのも結成されるわけでしょうね。わかったかな。 そうかと思うと──
そういう問題ではないであろうが、と思わず胸にテロルの炎を絶やさないナショナリストの立場から説教かましてやりたくなったりもしますのですが、この掲示板は頭の悪い人間ばかりが寄り集う場となっており、私には以前投稿して速攻削除されてしまった苦い経験がありますので、もうわざわざ莫迦の相手なんかしに行ってやらないんだもん。 あーあ、すっかりだれてしまったな、と反省しながら本日はおいとまいたします。 |