2007年7月下旬
21日 住民監査請求買収受付
22日 住民監査請求あいたたたたた
23日 『江戸川乱歩小説キーワード辞典』打明け話
24日 住民監査請求忌日選択
25日 おあとは乱歩文学館の話題となっております
26日 乱歩文学館あっちょんぷりけ
27日 乱歩文学館ちゃんわちょんわ
28日 乱歩文学館あーめんそーめんひやそーめん
29日 乱歩文学館なまんだぶなまんだぶなまんだぶ
31日 住民監査請求かましてまいりました
 ■7月21日(土)
住民監査請求買収受付 

 本日は裁判の話題から。昨日付中日新聞の記事です。

元町長に支払い命令 旧河芸町訴訟 「委託契約は時期尚早」
 町道改良事業の設計委託費の支出が不適切だったとして、旧河芸町(現津市)が、後藤輝人元町長(62)に対して約二百六十三万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、津地裁(水谷正俊裁判長)は十九日、原告側の訴えをほぼ認め、元町長に二百十七万円の支払いを命じた。被告側は控訴する方針。

 判決によると、合併して津市となる前の旧河芸町で二〇〇二年、当時の後藤町長は町道の一部を新設する改良計画を策定した。この計画では、都市計画法に基づく道路計画の変更手続きが困難な状況だったにもかかわらず、元町長は計画に問題があるかを考慮せず、詳細設計業務を財団法人県建設技術センターに委託し、委託費の支出命令に決裁した。

 水谷裁判長は「(問題に対する)具体的解決策が在しない状況下で、委託契約を締結したのは時期尚早で、妥当性を欠く行政行為。町長としての行政裁量権の逸脱があり違法」とし、委託費の一部の二百十七万円を損害と認めた。

 これはありかも、と思いました。どこを見て何がありだと思ったのかというと、「町長としての行政裁量権」ってとこを見て、行政裁量権を盾にするのはありだろうなと思ったわけです。これは考えてなかったな。

 私の住民監査請求のポイントは、以前も引きましたけど大河漫才第三部「猜疑篇」(未発表決定稿)から引くならば──

「NPO独自の判断で生じた支払い義務になんで税金がつかわれなあかんねん」

 この一点です。NPO なばり実行委員会とかいうわけのわからん NPO が勝手に決めてしまった委託研究にどうして名張市民の税金が投じられなければならんのか。しかしこれはそこらの NPO が決めたことなんですから、その決定を住民監査請求の対象とすることはできません。住民監査請求ってのはあくまでも「普通地方公共団体の長若しくは委員会若しくは委員又は当該普通地方公共団体の職員」(地方自治法第二百四十二条)を対象とするものであって、NPO なんて関係ないわけなのね。

 だから私は名張市と三重大学浦山研究室のあいだで結ばれた委託研究の契約そのものを問題にしたわけです。この契約における名張市の最高責任者は当然市長だということになりますし、この契約によって名張市が百四十九万九千円の損害を被ったことは明白なのであるからして、市長がこの契約のことをどの程度了知していたのかなんてことは無関係、とにかく損害を補填していただきましょうというのが私の主張なわけなのね。

 しかし首長としての裁量権なんてものがあったのであった。名張市側が反転攻勢に打って出るのであればおそらくそれが、というか当然それが問題になってくるでしょう。名張市長としての裁量権の範囲内で三重大学浦山研究室との契約を締結した、といったような主張は充分に成立可能だと思われます。名張まちなかの再生を実現するために、細川邸整備に関する研究の費用は市が負担しなければならないと判断した、みたいなことになるんじゃね? ていうか、そうとでもいわないことにはほかにいいのがれの道なんて見つからんのではないか。

 上の中日新聞の記事では旧河芸町の後藤輝人元町長が「委託費支出の予算は議会で認められて執行した。すべて町長の裁量内でやったことで違法行為は一つもない」とコメントしてますけど、ここにある「町長」を「市長」に差し替えるだけで、まんま今回の住民監査請求にもあてはまってしまうのではないかしら。記事をもとにして流れを示してみましょう。

 まず2004年のこと、

 町民「こんなインチキな委託に税金をつかってはいけないと思いまーす。前町長は町が受けた損害を賠償してくださーい。住民監査請求やっちゃいまーす」

 町監査委員「町民の主張はもっともだと思いまーす。町は前町長に委託費の一部を返還させるようにねー」

 町長「お金返して」

 前町長「やだ」

 町長「返してくんないんだったら裁判だもんねー」

 ときは流れて、市町村合併で町はなくなりましたが、

 地裁裁判長「こんにちは。判決王子です。判決。旧町の訴えを認めまーす。元町長は委託費の一部を返還しなさいねー」

 元町長「やだ。だって議会にも認めてもらったし町長の裁量内だし違法なことはなーんにもやってないんだもん。控訴してやるぞー」

 みたいな感じでしょう。名張市の場合はまだ、

 「こんなインチキな委託に税金をつかってはいけないと思いまーす。市長は市が受けた損害を賠償してくださーい。住民監査請求やっちゃいまーす」

 といった段階にあるわけなのですが、名張市側が行政裁量権なるものを盾にして、

 「だって議会にも認めてもらったし市長の裁量内だし違法なことはなーんにもやってないんだもん」

 と主張するであろうことはおおいにありでしょう。これは想定してなかったな。しかし何かのときに備えた二段構えの二段目として、私はもう一点──

「けどほんまにええかげんなんですからこの三重大学の報告書」

 このことも問題にしておきました。ですから裁量権という盾が出てきたら、あんなインチキな研究を裁量権で認めちゃった市長の見識はいったいどうよ、という矛を突き出すことが可能でしょう。もちろんそれ以前に、行政と NPO との関係性をどう考えてんのよ、といった問題も出てきますし。しかし実際にはどうなるのかなあ。まったく想定外の方向に話が進んでゆくのかもしれないしなあ。

 それにしても、いまだ住民監査請求を行ってもいないというのに気分はもうリーガルサスペンス。私にとっては生まれてはじめての住民監査請求なんですから、いろいろ思い惑うことが出てきてたいへんです。二回目三回目と回を追うごとに慣れてくるとは思いますけど。

 ところで6月26日付伝言にも記しましたことですが、当方ただいま住民監査請求なんかかまされちゃ困ってしまうとおっしゃるみなさんから買収のご要望を受け付けております。官民学を問いません。どなたからのお申し出もありがたく承ります。請求を中止する場合の買収価格は細川邸整備予定費の一割、つまり六百万円となっております。お気軽にご相談ください。秘密は厳守いたします。とはいえおそらく来週中には請求を行うことになりますから、ご連絡はどうぞお早めに。締切は7月23日月曜日ということにしておきます。当日消印有効。


 ■7月22日(日)
住民監査請求あいたたたたた 

 あー頭が痛い。朝っぱらからネット検索で住民訴訟に関するページをずーっと読んでたら頭が痛くなってしまいました。住民監査請求の結果に不服があった場合、請求者は住民訴訟を起こすことができるわけで、いよいよ裁判沙汰に突入することになります。私の請求はいまだ正式に受理されるかどうかもわからない状態なのですが、転ばぬ先の杖、というのとはちょっとちがうか、とにかく住民訴訟のお勉強もしとかなくっちゃな、みたいな感じかな。

 Google 検索でひっかかってきたページには「住民訴訟の勝訴判決リスト」なんてのがありました。全国市民オンブズマン連絡会議が2001年にまとめた資料で、「判例地方自治」誌上で十年間に掲載された住民訴訟の判決にもとづくデータが紹介されています。判決は便宜的に次のごとく分類されていて──

第1 公費天国を是正する住民訴訟
 1.議員や首長らの「視察」旅行
 2.議員野球大会
 3.架空の接待
 4.高額な飲食
 5.カラ出張・ヤミ手当その他
第2 放漫財政とたたかう住民訴訟
 1.公有財産の格安売却
 2.私有財産の高価買上げ
 3.民間法人に派遣した職員の給与負担
 4.違法な補助金交付
 5.ズサンな契約管理
第3 巨悪とたたかう住民訴訟
 1.談合による不当利益
 2.暴力への屈服
第4 人権侵害とたたかう住民訴訟

 へーえ。たとえば議員や首長の視察旅行なんてあたり、名張市でもつっついてみたら面白いのに。つまり公文書公開請求で視察旅行にかかわるすべての情報を入手して、いくらなんでもこりゃおかしいってとこをあぶり出し、あらよっとばかり住民監査請求をかましてやればいいだけの話なのですが、そんな酔狂に興じようという名張市民なんてひとりもいないか。へっ。そこらの電子掲示板の匿名投稿できゃんきゃん吠えてるだけか。へへっ。

 そんなことはどうだっていいんですけど、住民訴訟にたどりつくまでの住民監査請求だってたいへんといえばたいへんです。とにかく無傷ではいられますまい。そもそも請求をつきつけられること自体が自治体にとって不名誉な話であるわけなのですが、私の住民監査請求は当節の地方自治体が直面しているいわゆる住民自治の根幹にかかわる問題を含んでいますから、名張市が示している行政の方向性に異議申し立てが行われるという意味でも、これはそこそこ痛いのではないか。もちろん私自身も無傷でいられるはずがない。

 だからほんとにどうよ。六百万でチャラにしてやろうっつってんだからさ。誰でもいいから六百万かき集めて私を買収するのがいちばんいいと思うんだけど。それで私が、住民監査請求は中止いたします、誰から買収されたかは口が裂けてもいいません、単なる金目当ての犯行でした、てへっ、てへへへっ、とかいってそれでおしまいになるのだからめでたしめでたしではないか。ちなみに買収の締切はあす23日月曜日となっております。

 それにしても頭が痛い。あー痛。あいたたたたた。


 ■7月23日(月)
『江戸川乱歩小説キーワード辞典』打明け話 

 本日は個展のお知らせから。東京都港区高輪にある Gallery Oculus(ギャラリーオキュルス)できょう、北川健次さんの新作銅版画集展「Element──回廊を逃れゆくアポロニオスの円」が開幕します。8月4日まで。詳細はこのページでどうぞ。

 つづきましては、7月20日付伝言でもちょこっとお知らせいたしましたが、平山雄一さんの『江戸川乱歩小説キーワード辞典』が刊行されました。これが函。画像のリンク先は版元の紹介ページ。

 こちら本体。画像のリンク先は平山さんのサイト「しょうそう文学研究所」です。

 20日につづけて翌21日の伝言でもこの大冊の紹介をと考えていたのですが、なんかこっ恥ずかしいなとか思ってしまい、旧河芸町の元町長が敗訴したニュースに流れて住民監査請求の話題に結びつけてしまいました。きょうもやっぱり住民監査請求の話題にたどりつきますけど、とりあえずこの『江戸川乱歩小説キーワード辞典』のおはなしを進めます。

 この本の監修を担当された新保博久さんと山前譲さんの連名による「監修者序文」から一段落。

 当初は「ホームズ事典」に対置する形で、「明智小五郎事典」として構想されたものだという。それだけでも一大労作になったところだが、これまた労作というほかない江戸川乱歩リファレンスブックの編纂刊行に多年携わっている名張市立図書館嘱託の中相作氏がそれを聞きつけ、どうせなら乱歩の全小説を対象にすべきだと焚きつけてくれたのは、平山氏にとってはさらに大きな試練であり、われわれ普通の乱歩ファンにとっては幸運なことであった。乱歩の評論随筆までもカバーしてもらいたいという要望もあったが、それこそ望蜀の言というべきだろう。

 平山さんとは名張市立図書館の江戸川乱歩リファレンスブック1『乱歩文献データブック』編纂中にいろいろご教示をたまわって以来のおつきあいなのですが、明智小五郎事典の構想をお聞きして「どうせなら乱歩の全小説を対象にすべきだと焚きつけ」たのはたしかにこの私なのであって、おれってなんか偉そうにしてるなと恥じ入らぬでもないのですけど、そのあたりのことは以前「乱歩文献打明け話」にも書いたことがありますので、1998年3月発表の第四回「ああ人生の大師匠」から引いてみましょう。「乱歩は四番を打つ」と題したパートの全文です。

 ここで、乱歩という作家のことを確認しておこう。明治以降の日本の文学者でベストナインを組むとすれば、不動の四番は漱石であろう。生前も没後も変わりなく読まれ、支持され、日本の近代文学を代表する作家といえば、夏目漱石をおいてほかにはあるまいと思われる。なにしろその肖像が紙幣に印刷されているほどの、いわゆる国民的作家なのである。翻って、漱石に代表される主流派の文学者ではなく、一般に大衆文学や娯楽小説などと称されるところの、これまであまり評価されることがなく、研究の対象ともされてこなかった一群の文学者でベストナインを選ぶとなれば、不動の四番は乱歩しかあり得まい。探偵小説という新しいジャンルを切り開き、大衆文学の世界で圧倒的な人気を獲得し、少年小説の分野でも熱狂的な賞讃をわがものとした乱歩こそ、漱石にも比肩すべきもう一人の四番打者なのである。
 その乱歩を、不動の四番を、名張市立図書館はいかようにも料理できるのである。しかも乱歩は、漱石のようにすでに固定した評価を獲得している作家ではない。生前にこそ固定した評価を得ていたものの、没後の昭和四十年代あたりから新しい視点による批評があいつぎ、近年では生前とはまったく異なった乱歩像が多様に提示されている、その意味ではいまなお新しい作家なのだ。こうした作家を運営の素材として所有しているのだから、名張市立図書館はじつに恵まれた図書館だというしかないであろう。そこで私は、私なりの考えとして、名張市立図書館は乱歩コーナーなどという子供騙しのごときレベルでとどまっているべきではあるまいと結論した。乱歩の読者や研究者の需要に充分応えられるだけのテキストを集め、全国を対象としてできる限りのサービスを行うのが、いやしくも乱歩コーナーを開設している図書館の責務でなくて何であろう。
 といったようなことを、私は何も嘱託になってから考えたわけではない。こんなことは誰でも考えつくことである。私は嘱託となった時点で、本を三冊つくろうと考えていたのである。というのも、私が嘱託を拝命する期間は三年間であるというのが、市立図書館の意向だったからである。そのあとのことはよく判らない。むろん継続の可能性もあるが、こんな文章を書いて発表するような人間が、そういつまでもお役所にいられるとは思えぬではないか。しかしまあ、そんなことはともかく、私がつくろうと思ったのは次の三冊である。
 乱歩文献データブック
 江戸川乱歩執筆年譜
 江戸川乱歩著書目録
 どうして図書館がこんな本をつくらねばならぬのか、そんなことは出版社の仕事ではないか、とおっしゃる読者もおありかもしれない。そういう方のためにいささかを記そう。
 私が右に列記した三冊の本は、いずれも出版社から刊行されることが望めない本である。調査編集の労のみ多くして、売れることなどまず見込めぬからである。しかし、乱歩の読者や研究者には非常に重宝な、必携とさえいえるものであることは間違いない。だとしたら名張市立図書館が出すべきではないか、と私は考えたのだ。図書館の本分はテキストの提供にほかならない。単に乱歩の本を集めておりますというだけでは、名張市立図書館は本分をまっとうできていることにはならぬのである。集めたテキストをいかに活用するか、その道を考えるのが図書館の役目であろう。それが図書館の進めるべきサービスであろう。で、名張市立図書館は『乱歩文献データブック』を上梓したのである。さいわいこの本は、少部数の出版ではあったが、望外のご好評をいただく結果となった。手前味噌で恐縮だが、以下にひとつだけ自慢しておくことにする。
 読者は「本の雑誌」という高名な書評誌をご存じであろう。この雑誌は毎年一月号で、前年に刊行された本のベストを選出するのを恒例にしている。編集部が選んだベスト以外に、作家や評論家、編集者などがそれぞれのベスト3を発表するコーナーもあって、今年の一月号に掲載された「一九九七年 私のベスト3」では、驚くなかれと申しあげても驚かれるだろうが、戸川安宣氏によるベスト3のトップに『乱歩文献データブック』が掲げられているのだ。これには私も驚いてしまった。戸川さんはミステリー出版で知られる東京創元社の社長さんで、いわば出版に関してはプロ中のプロである。その戸川さんが、去年一年間に出たすべての本のなかのベスト1として、名張市立図書館の『乱歩文献データブック』を推してくださったのである。名張市立図書館はもって瞑すべきであろう。などとうっかり書いてしまったが、まだ瞑してはいられない。
 瞑するどころか、名張市立図書館が乱歩に関連して出すべき本はいくらでもあるのだ。これからどんな本を出すのかと聞かれることも多いので、私は適当に、乱歩に関する地名辞典や人名辞典はぜひ出したい、などと答えることにしているのだが、世の中には気の早い人がいて、『乱歩文献データブック』のためにご協力をいただいたある方からの年賀状に、試みに乱歩の辞典をつくり始めてみたところ、文庫本一冊で項目が百を超えてしまった、と記されていたのにはびっくりした。しかし読者よ、実際のところ、名張市立図書館がこの「江戸川乱歩リファレンスブック」のシリーズをたとえば五年間で五冊刊行したと考えてご覧なさい。乱歩記念館をひとつおっ建てるより、はるかに安上がりできわめて有意義な事業となることは明白であろう。明白ではあるのだが、というところで紙幅が尽きた。つづきは三か月後である。

 ここに登場する「『乱歩文献データブック』のためにご協力をいただいたある方」というのがほかならぬ平山さんで、くわしい経緯は思い出せぬものの、明智小五郎事典の構想をお聞きした私が、どうせなら明智登場作品だけじゃなしに乱歩の小説全作品やっちゃってよ、とかごく気軽にお願いして、それで1998年に平山さんから頂戴した年賀状に「試みに乱歩の辞典をつくり始めてみたところ、文庫本一冊で項目が百を超えてしまった」と記されてあったという次第なのですが、これは要するに丸投げです。つまり『乱歩文献データブック』をつくりながらいずれは乱歩に関する地名辞典や人名辞典も出す必要があるだろうなと思っていた私は、平山さんの辞典構想をお聞きして速攻で辞典づくりを丸投げしてしまったわけなのね。

 しかしご心配なく。これは名張市あたりでごく普通に見られるようなばかがばかに丸投げしてそのばかがまたばかに丸投げして結局のところ何がなんだかわけがわかんなくなってるばか丸出しの丸投げではなくて、『子不語の夢 江戸川乱歩小酒井不木往復書簡集』を編纂してもらったときもそうだったんですけど、僭越ながら私の場合これと見込んだ方にしか丸投げはいたしておりませんのでご心配なく。それにしてもおれってなんか偉そうだなほんとに。

 ですから辞典の原稿が完成したら名張市立図書館の江戸川乱歩リファレンスブックとして刊行することも考えなければなとは思っていたのですけれど、あれはいつのことであったか、たしか池袋にある焼鳥屋さんで業界関係者の方から版元が東京書籍に決まったと聞き及びましたので、ちゃんとした出版社から出るのならそれに越したことはありません。以来それとなく刊行を心待ちにしていたのがようやく出版されたというわけで、私はなんだかほんとに嬉しい。月並みな表現を用いるならば、わがことのように嬉しい。ていうか、丸投げを聞き入れてくださった平山さんや出版ならびに監修の労をお取りいただいた新保さんと山前さんに対して、私は心からお礼を申しあげたいと思います。

 さて、名張市である。名張市はどうよ、みたいな話題になるとこれはもうだめであるというしかない。大河漫才「僕の住民監査請求」第四部「零落篇」(未発表決定稿)から引きますと──

「名張市はなさけない自治体なんです」
「何がですねん」
「名張市立図書館の江戸川乱歩リファレンスブック三冊のデータをインターネットで公開することさえようしません」
「なんでですねん」
「財政難」
「財政難て君」
「どんだけぇーゆうような話ですけど」
「なんぼなんでも財政難は関係ないと思いますけど」
「つまり図書館として乱歩のことちゃんとやっていくのがいやなんでしょうね」
「なんでですねん」
「いったん公開したらデータの更新とかいろいろ乱歩のことをやっていかなあかんという新しい責任が生じますから」
「けどインターネットを利用して乱歩にかんするサービスを提供していくのは必要なこととちがうんですか」
「お役所の人はそうは考えません」
「どんなふうに考えますねん」
「なんの責任を負うこともなく定年退職まで波風のない公務員人生を送りたい」
「なんですねんそれ」
「とにかくミステリ分室構想には名張市立図書館がインターネットを利用して乱歩関連情報を発信したり全国の乱歩ファンやミステリファンと連携しながら名張独自の企画をくりひろげたりする可能性が秘められていたんですけどその芽がことごとく踏みにじられてしまいました」

 あ。引用してるあいだにまた腹が立ってきた。きょうは住民監査請求の話題にたどりつけませんでしたけど、怒りを静めるためにここまでといたします。

 あ。私の住民監査請求に関する買収のご要望はいよいよきょう23日が締切となりました。よろしくどうぞ。


 ■7月24日(火)
住民監査請求忌日選択 

 まことに残念な結果となってしまいました。きのうが締切となっていた住民監査請求を中止するための買収の受付は、とうとうひとりの申し出もないままにけさを迎えてしまいました。マジかよ。人がせっかく親切に話もちかけてやったっつーのによ。やってらんねーなまったく。しかしそういうことならばいたしかたありません。私はタリバンではありませんから交渉期限の一日延長なんてことはいたしません。とっとと邁進いたしましょう。

 それできのう、週明けにはという約束どおり名張市役所の監査委員・公平委員会事務局から連絡を頂戴いたしましたので、7月18日に提出した住民監査請求のための関連書類、事務局によるチェックの結果を教えてもらいに行ってまいりました。

 問題は二点ありました。一点目は、事務局が作成してくれてあった文書から引用いたしますと──

※ 上記の1請求の要旨の内、契約金額を訂正(1,499,000円→1,499,400円)願います。

 といったことでした。名張市と三重大学浦山研究室とのあいだで結ばれた契約の金額に誤りがあったそうです。名張まちなか再生委員会事務局から提出してもらったこの書類には──

 まちがいなく百四十九万九千円と記されているのですが、これは下三桁を切り捨てあるいは四捨五入した数字であったということなのか、とにかく事務局サイドで精査してもらったところ四百円という端数が存在していたそうです。

 それに関連してもう一点。

※ 事実証明書として、名張市と国立大学法人三重大学との委託契約「歴史的建造物改修に係る基本設計業務ならびに当該建造物を活用した管理運営モデルの開発、運営効果の測定に関する研究及び実践」の契約書及び支出を明らかにする書類を添付されたい。

 私は上に画像を掲げた書類を証拠書類として提出すればいいだろうと思っていたのですが、げんに数字の誤りもあることだから「契約書及び支出を明らかにする書類」が必要だとのことでした。ですからきのうさっそく公文書公開請求書を提出し、必要書類を入手するための手続きを済ませてきました。

 したがいまして書類が整うまで請求も先送りとなりました。なんとか今月中にとは念じているのですが、きょうはもう24日で、ということは芥川龍之介の命日か。つまり河童忌は完全に無理ですけど、26日の吉行淳之介忌はどうかな。これも無理そうか。となると28日の乱歩忌ならびに山田風太郎忌か、と思ったけれど土曜日だからお役所はお休み。週明け月曜日なら幸田露伴忌にして谷崎潤一郎忌の30日ということになります。

 たまたま新潮文庫で「細雪」をぼちぼち読み返しているところでもありますので(ただいま昭和13年の大水害あたり。台風四号のニュース映像の記憶が新しいせいか妙にリアルです)、いちおう谷崎忌の7月30日を目標にしておきたいと思います。ほんとは乱歩忌のほうが嬉しく、また心強くもあるのですが、そんなことして天国の乱歩から叱られたらどうしようという気がしないでもありません。ちなみにきのう事務局で確認したところによれば、住民監査請求を行うにあたっては大安の日を選ばなければならないとかそんなルールはいっさいないそうです。しかし30日は仏滅か。なんだかなあ。


 ■7月25日(水)
おあとは乱歩文学館の話題となっております 

 それでもって住民監査請求の請求書の件ですが、最初はこのとおり「名張市職員措置請求書」という標題にしていたのですけれど──

 名張市役所監査委員・公平委員会事務局のアドバイスにしたがってこれを「名張市長に対する措置請求書」に変更し、やはり事務局から指摘があった契約金額の誤りも訂正したりして、結局こんなふうなことになりました。

 段落間一行アキとして本文転載。

 1  請求の要旨

 名張市は平成 18 年 9 月 26 日、三重大学浦山研究室(以下「研究室」という)と委託研究「歴史的建造物改修に係る基本設計業務ならびに当該建造物を活用した管理運営モデルの開発、運営効果の測定に関する研究及び実践」(以下「研究」という)の契約を結び、翌 19 年 3 月 31 日に研究室の報告書「歴史・交流拠点としての旧細川邸改修に向けて」(以下「報告書」という)が提出されて契約が履行された。研究の対価として名張市から三重大学に「名張まちづくり塾」事業費の名目で 1,499,400 円が支払われたが、これは公金の不当な支出であると思量される。以下にその理由を述べる。

 1 点目。細川邸の整備については、平成 17 年 6 月に発足した「名張まちなか再生委員会」(以下「委員会」という)が、名張市から委託を受けて検討を重ねてきた。委員会の 18 年度総会で「NPO なばり実行委員会」(以下「NPO」という)の設立が承認され、そののちに開かれた委員会の役員会で、細川邸に関する検討を委員会から NPO に付託することが決定されたが、この付託には合理的な理由を見出すことができない。いっぽう NPO の世話人会では、新たに「マネジメント委員会」を発足させ、研究室と「マネジメント委員会」が細川邸の具体的な改修計画を検討することの決定を見たが、この決定にも合理的な必然性は認められない。また、NPO による決定には名張市の意向が反映されていないため、NPO が独自の判断で研究室への研究委託を行ったとしても、名張市にその対価の支払い義務が生じることはあり得ない。委員会から NPO への付託の不当性と NPO による決定の自立性とに照らして、「名張まちづくり塾」事業費の支払いが公金の不当な支出であることは明白である。

 2 点目。報告書の内容については、平成 17 年 3 月策定の「名張まちなか再生プラン」に《細川邸を改修して歴史資料館とします》と明記されているにもかかわらず、《「名張まちなか再生プラン」において、旧細川邸を改修し、歴史・交流拠点として整備することが提案されている》とするなど事実に反する記述が散見され、研究の信頼性に疑問を抱かせる。また、報告書が提案する「イベント利用」「日常的利用」などは「歴史・交流拠点」の概念から逸脱しており、「歴史・交流拠点」という限定を除外して考慮した場合にも、細川邸を活用するにあたって有効な方途であるとはいいがたい。これらのことから、報告書は細川邸の整備を方向づけるうえで著しく妥当性を欠いていると結論せざるを得ず、ゆえに研究を公金の正当な使途として認めることは不可能である。なお、「名張まちなか再生プラン」を策定した名張地区既成市街地再生計画策定委員会の委員長、および平成 18 年度の委員会副委員長を務めたのがともに研究室の主宰者であり、その研究室と NPO によって研究の実施が決定されたうえ、契約が正式に締結される以前から研究室と「マネジメント委員会」によるワークショップが行われていたという一連の事実には、公平性と公正性の見地から納得しがたいものがあることを付記しておく。

 以上の理由によって、「名張まちづくり塾」事業費が公金の不当な支出であることは明らかであり、当該契約によって名張市が 1,499,400 円の損害を被った事実には疑いを容れる余地がない。当該契約における名張市の責任者である名張市長によって損害全額が補填されることを求めるとともに、報告書に基づいて行われた細川邸整備の実施設計は無効であると判断されるため、細川邸の整備事業においてこの実施設計を無効化するための措置を求めるものである。

 契約金額以外にはひとつ手を入れただけで、

 ──公平性の見地から納得しがたいものがある

 としておりましたところ、いまごらんいただきましたように、

 ──公平性と公正性の見地から納得しがたいものがある

 と言葉を補いました。私は名張まちなか再生委員会のみなさんに対して、フェアネスやジャスティスはどこにもないのかこのあんぽんたん、と怒りつづけてまいりましたので、ここはやはり公正性という言葉もワンセットとして入れとかないとジャスティスの機嫌が悪くなるだろうと判断した結果です。

 それでこのあとはといいますと、名張市から「歴史的建造物改修に係る基本設計業務ならびに当該建造物を活用した管理運営モデルの開発、運営効果の測定に関する研究及び実践」の契約書と支出を明らかにする書類が公開されたらそれを添付して、この「名張市長に対する措置請求書」を正式に提出することになります。そのあとはさっぱりわかりません。

 お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、

 ──報告書に基づいて行われた細川邸整備の実施設計は無効であると判断されるため、細川邸の整備事業においてこの実施設計を無効化するための措置を求めるものである。

 とありますところ、この実施設計にも四百六十九万七千円の税金がつかわれているわけですから、本来であれば実施設計の委託料に関しても名張市長による損害補填を求めるべきなのでありますけれど、今回の住民監査請求ではそこまで範囲をひろげないことにしております。この先どうなるかはほんとにさっばりわからぬものの、可能性としてはこの実施設計委託料をめぐって住民監査請求の第二弾をぶちかますことがないでもないとお伝えしておきましょう。

 しかし。

 しかしこんなことばかりもしておれんぞ。細川邸などはむしろサイドのネタなのであって、私にとってメインとなるのはもちろん乱歩のことである。名張市というのははっきりいってもう無茶苦茶、ものの道理のわかった人間がまったく存在しておらず、住民監査請求の参考資料として提出する大河漫才「僕の住民監査請求」第四部「零落篇」(未発表決定稿)から引くならば──

「いっぽうではNPOによる細川邸の私物化工作を放置しておきながらそのいっぽうで再生委員会の協議検討に介入して行政サイドの都合を押しつける」

 こんなばかなことやってるわけなのね。そこらのわけのわかんない NPO が細川邸を私物化することはいっさい黙認し、のみならず NPO とそこらの駅弁大学との癒着に税金まで投じているそのうえに、細川邸とおなじく名張まちなか再生委員会に検討をゆだねていたはずの乱歩文学館とやらに関しては、委員会側の結論がまだ出ていないにもかかわらず名張市にはお金がありませんからそんなものつくりませんと早々に表明してしまう。

 つまりもうなんつーか委員会なるものの主体性や自立性というものをまったく理解できず、ルールや手続きは完全に無視、フェアネスもジャスティスもどこ吹く風で(ちゃんとワンセットで使用しております)、原理原則なんて見たことも聞いたこともございませんというのがわれらが名張市なのでございまして、要するにものごとを決定するというのがいったいどういうことなのかという一点において、ここ名張市では世間の常識から大きくかけ離れた認識が大手を振ってまかり通っているという寸法です。

 とはいえさすがに乱歩文学館とか乱歩記念館とか、もう四十年近く名張市にしつこく取り憑いていた妖怪がこれでようやく退散してくれたということになるのであれば、それはそれでまことにめでたいことであり、だからこそ名張市にはいま、

 ──それでこれから乱歩のことどうするわけ?

 という問いをつきつけなければならないわけなのね。こと乱歩にかぎっていうならば、名張市という自治体にはうわっつらのことを考えることしかできないという事実はもう十年以上も前から私には火を見るよりも明らかでしたし、だからこそ乱歩記念館とか乱歩文学館とかそんな認知症の寝言みたいなことばっか口走ってんじゃねーやこのたこ、ちゃんとこういうことを地道にやってゆけば乱歩を愛するすべての人から名張市ってのはなかなかなものだと思っていただけることになるのだよと私がやさしく教え諭してやったこともまた全然理解できないということなのであろうけれども、しかしいくらなんでもそれじゃまずいぞ名張市よ。

 名張市がこの先も乱歩のことに税金つかってゆくというのであれば、

 ──それでこれから乱歩のことどうするわけ?

 ということをはっきり示しておく必要があるわけね。しかしそれができるのかな。できるわけねーじゃねーか。だってどいつもこいつも乱歩のことなんてなんにも知らないんだもん。だからできないというのであればおれが手助けしてやろうというのである。ただし名張市が乱歩に関して何をすればいいのかということになると、以前からいってるとおりおれの結論はもう決まっていて、

 ──名張市は乱歩から手を引け。

 といったことに尽きるのである。だってもう、やる気がない、知恵がない、お金がない、この三重苦だぜ名張市なんて。しかしそれでもまだ何か乱歩に関して税金をつかいたいとそういうのであれば、おれがいくらでも手助けしてやろうといっておるのだ。なにしろおれにはお金はないけどやる気と知恵はあるのだからな。

 とかなんとかこちらがいたって親切に考えてても相手のほうは、

 ──いいかこら教育次長だかなんだか知らんがろくに経緯や事情もわきまえぬ人間が横からしゃしゃり出てきて人に偉そうな説教かましてんじゃねーぞたこ。

 こんなんばっかだもんなあ。何これ。これっていったいどういうの。


 ■7月26日(木)
乱歩文学館あっちょんぷりけ 

 先日ニュースで知って、この気色の悪い死に方は何よ、とか思っていたあの自殺が名張市内でも発生しました。どこのどなたか存じませんが、また経緯や背景はいっさい不明なのですが、わざわざ愛知県あたりから名張まで自殺しにいらっしゃらなくてもいいと思うの。それでもって2ちゃんねるニュース速報+板では例によって「【社会】“また…”首と支柱にロープ巻き車発進→頭と胴体分離自殺…三重」と「三重」の扱い。どうして「【社会】“また…”首と支柱にロープ巻き車発進→頭と胴体分離自殺…名張」と書いてもらえないのか。やっぱ名張って無名なのね、とお嘆きのみなさんにお知らせですが、だからといって乱歩文学館とやらをつくったら名張市が有名になるとか、観光客の入り込み数が増加するとか、そんな望みはまったくありません。

 みたいなことを書こうかなと考えていたのですが、話題としてあまりにもあほらしいうえ、きょうは朝からなんか蒸し暑い感じで調子が出ません。もうサボっちゃう。


 ■7月27日(金)
乱歩文学館ちゃんわちょんわ 

 それではあまりにもあほらしい話題ながら、乱歩文学館っていったいどうよ、というおはなしを進めます。とはいえこの件、大河漫才「僕の住民監査請求」第四部「零落篇」(未発表決定稿)に──

「乱歩文学館を望む市民の声はあるのとちがいますか」
「そんな市民がどこにいるねん」
「それを聞いてどうするんですか」
「思いきり叱り飛ばしたるねん」
「叱らんでもええやないですか」
「不心得な市民は叱り飛ばしたらなあかんのですけどたしかに乱歩文学館をつくろうという声は昔からあったんです」
「それやったらよろしがな」
「けどそうゆう市民要望にはきちんとノーをつきつけとかなあきません」
「なんでですねん」
「どうして名張市に乱歩文学館を建設しなければならないのか。かんじんの理由がその要望からは欠落してるんです」
「なんでそんなことわかりますねん」
「そしたら乱歩文学館が必要やゆうてる市民つかまえてなぜそんな施設を税金で建てなあかんのか質問してみなさい」
「どないなりますねん」
「誰のために文学館を建てるのか。そんなもん建てて何をするのか。質問に答えられる市民はひとりもいないはずです」

 とかあるあたりで結論は出ているわけで、名張市内にお住まいの頭はからっぽだが(ていうか、頭がからっぽであるがゆえに)見栄だけは張りたいとおっしゃる低能のみなさんにお知らせしておきますと、名張市にはおまえらの見栄のためにつかう金なんて一円もないはずである。残念だったな。

 といったところで終わりにしてもいいんですけど、もう少し記しておくことにいたしますと、だいたいが乱歩の名前を冠した施設つくったりしたらたいへんなことになるわけです。もしも名張まちなか再生委員会が乱歩文学館を構想して名張市がそれを実施に移したりしたらどうなるか。まずまちがいなく、わざわざ名張市外から足を運んでくださった乱歩ファンのみなさんから、

 ──てめーこらこの低能自治体。なーにが乱歩文学館だこのインチキ自治体。こんなしょぼい文学館つくって喜んでんじゃねーぞこの詐欺師自治体が。

 みたいなお言葉を頂戴することになるでしょう。いつでしたか名張市においでいただいたミステリファンの方とおはなしをしておりましたら、

 「どうして松本清張記念館があるのに江戸川乱歩の記念館がないんですか。本末転倒した話じゃないですか」

 と急に憤ろしげな口調になって詰問されてしまいまして、そんなことおれに訊かれてもなあとか思いながらたじたじとなってしまったことがありましたけど、こういう方はもちろん乱歩の記念館ないし文学館は清張記念館よりさらに立派でなければならないと考えていらっしゃるわけです。するってえと名張市に建設される乱歩文学館には十億単位の予算が必要になるということになりますが、名張市にはそんなお金はまったくないのよ。

 ちなみに北九州市にある松本清張記念館のオフィシャルサイトはこちら。

 サイト見て知ったんですけど、清張記念館の開館九周年を記念した筒井康隆さんの講演会が8月3日に開かれるそうです。清張と筒井さんというのは意外な取り合わせだという感じがしますけど、そういえばどこかでこの顔合わせによる対談を読んだ記憶があるような。余談ながら乱歩と筒井さんという取り合わせなら意外でも不思議でも何でもなくて、これはもう名張市恒例のミステリ講演会「なぞがたりなばり」でぜひ筒井康隆さんの講演を拝聴したいものだと思うのですが、講師の人選を日本推理作家協会の理事会に丸投げしてるだけでは無理であろうな。筒井さんみたいに乱歩の謦咳に接した人の話が聞きたいと思うのは私ひとりではないだろうけど。

 閑話休題。とにかく清張よりも乱歩のほうが偉大だと考えている人は普通に存在してるわけですから、そういう人たちは北九州市の清張記念館と名張市の乱歩文学館とを当然ながら比較してしまう。そうするとやっぱ、何よこの乱歩文学館のしょぼさは、ということになってしまって、

 ──名張市は乱歩を愚弄しとるのかこら。

 と名張市が叱られてしまいます。

 このあたりでもういいでしょうか。とにかく名張市に乱歩の名前を冠した施設をつくるのはたいへんなことなのであって、ご町内感覚だけで生きてるそこらの人たちには理解していただけないことかもしれないけれど、視点を外在化させたうえで乱歩がどういう作家なのかをよく考えてみれば、名張市が乱歩文学館を建設するなんて自分で自分の首を締めるような、ていうか、ガードレールと自分の首とをロープで結んで自動車を急発進させようとするようなものだということになります。そういえば2ちゃんねるの「【社会】“また…”首と支柱にロープ巻き車発進→頭と胴体分離自殺…三重」でおなじみの新形式の自殺の件、地元メディアの続報は「【第2報】青蓮寺の変死体は名古屋市の46歳男性 名張署」となっております。「大阪府に住む親戚が遺体を確認、本人であることが判明した」んだそうですけどそんな確認、私なら絶対ようしまへん。

 閑話休題。とにかく乱歩文学館と名のついた施設をつくるとなれば、たとえ建物の規模はしょぼいものであったとしても、展示資料を収集しなければなりませんし、常設展示のみならず企画展も打ってゆかなければなりません。たとえば松本清張記念館オフィシャルサイトの「お知らせ」には筒井康隆さんの講演会のほかにも、特別企画展「新進作家 松本清張 取材に走る─信州上諏訪・富士見行─」、ビデオ上映会、読書感想文コンクール、館報、「松本清張研究」第七号、記念館オリジナル映像「日本の黒い霧─遙かな照射」上映とかいろんな告知が掲載されてましたけど、かりにも乱歩文学館をつくったのであればこの手のこともやってかなければなりません。やってくためには人材が必要です。学芸員はひとりやふたりでは足りないでしょう。つまり運営に結構お金がかかるわけですけど、名張市にはそんなお金はまったくないのよ。

 だから乱歩文学館なんて必要ないのであるとおれはずーっといいつづけているのに、どうして名張市には次から次へ乱歩記念館だの乱歩文学館だのとさえずる連中が出てくるのか。中身のことはなんにも考えずただうわっつらのことだけをぎゃあぎゃあ口走る連中が出てくるのか。名張市のそれこそミステリーだというしかありません。


 ■7月28日(土)
乱歩文学館あーめんそーめんひやそーめん 

 さあ7月28日である。乱歩の命日である。きょうくらいは静かにしていよう。

 とか思ったんだけどきのうの午後、名張市に公開請求してあった公文書二点を市役所で受け取ってまいりましたので、つまり、

 ──名張市と国立大学法人三重大学との委託契約「歴史的建造物改修に係る基本設計業務ならびに当該建造物を活用した管理運営モデルの開発、運営効果の測定に関する研究及び実践」の契約書及び支出を明らかにする書類

 なんてやつのことですが、とりいそぎその報告を記しておきます。

 まず名張市と三重大学との「受託研究契約書」のほうですが、全部で九枚あるうちの一枚目がこれ。

 次が三重大学の「請求書」二点と名張市の「支出命令書」二点。なぜ二点ずつなのかというと、請求が百万円と四十九万九千四百円の二回にわけて行われているからです。全四枚のうちの「支出命令書」一枚を以下に。

 全十三枚分のコピーを受け取りまして、今回の公文書公開請求に要した費用はコピー代百三十円でした。

 これで名張市と三重大学とのあいだに契約が結ばれ、それにもとづいて名張市から三重大学に百四十九万九千四百円が支払われたという事実が証明できたことになります。それでもって三重大学浦山研究室から提出された報告書「歴史・交流拠点としての旧細川邸改修に向けて」をつぶさに読んでゆくと──

 この「名張市長に対する措置請求書」に仔細に記してありますとおり、こんなのはどう考えたって公金の不当な支出ではないかということが明瞭にわかります。端的にいってしまえば、そこらの NPO が勝手に決めたことなのにどうして名張市民の税金がつかわれてるわけ? ということに尽きてしまうのですけれど、この請求書ではそういった主張を補強する意味において、だいたい NPO の成立過程がインチキだし、報告書の内容もインチキだし、そこへもってきて NPO と研究室が最初っから癒着してたんだし、と固め技を畳みかけておきましたからこれで逃れようなどないのではないか。週明けには請求書を提出することになるでしょう。

 おあとは乱歩文学館の話題をつづけますが、きのうも記しましたとおり乱歩という名前を冠した施設を名張市に建設することはまったく得策ではありません。関係各位にはそのことをよくよくご理解いただきたいものです。

 だいたいが乱歩文学館であれ歴史資料館であれ、単なる思いつきでうわっつらのことだけ決めてものごとをスタートさせてしまうとろくなことにはならんのだぞ。なんつーか、ただのアクセサリーっていうのか、地方都市のグレードがどうとかステータスがこうとか、要するに見栄を張るためにハコモノつくったってだめなわけなの。内側からあふれ出てくるものっつーのか、大河漫才「僕の住民監査請求」に記した言葉でいえば「内発的な動き」ってやつですけど、そういうものがないとまったく意味のないハコモノつくって関係者が身内で喜んでるだけの話で終わってしまいます。

 そのあたりのことは関係各位も細川邸整備構想を検討する過程で身にしみて思い知ってくれたはずだと思うのですが、なにしろ連中のことだから懲りてもなければ学習してもおらんのか。蛙のつらに小便か。やってらんねーなまったく。しかしやってらんねーのは名張市のみならず三重県も同様であるらしく、ブログ「三重県よろずや」経由で閲覧したのが三重県オフィシャルサイトのこのページ。

 「平成19年度第1回三重県文化審議会意見概要」とかなんとかごたいそうなことであるけれど、要するに県立博物館の建設をオーソライズするための隠れ蓑がこの審議会であると思われます。細川邸の整備をオーソライズするためにかき集められた名張地区既成市街地再生計画策定委員会と似たようなものでしょうけど、なんかほんとに歴史がくり返すというか悪夢がよみがえるというか、三重県知事も懲りておらんなというべきか。

 そもそも知事と私とは知らぬ仲ではないのですから、伊賀地域を代表する知性とその名も高いこの私をその審議会とやらに加えてくれてもよかったのではないかしら。知事と私の仲なのに、ずいぶんつれない仕打ちでありんす。あッ。もしかしたら私は知事から嫌われておるのかも。ていうか私は誰からも嫌われておるのだが。

 そんなことはどうだっていいんですけど、われらが伊賀地域からははたしてどのようなやんごとない方々が三重県文化審議会の委員として名を連ねていらっしゃるのか。

 この委員名簿によりますと、皇學館大学社会福祉学部長の方と伊賀の里モクモク手づくりファーム総合企画部ブランド推進チームキャプテンの方が伊賀地域代表でいらっしゃるとのことでして、えーっとまあ、がんばってねー。

 ところでこの「平成19年度第1回三重県文化審議会意見概要」を読んでみますと、審議委員のみなさんも正直とまどいを隠せないみたいであるとの印象がぬぐえません。「新しい文化振興策の考え方について」「部会の設置について」「検討の進め方について」の三点にわたって委員の質問と意見がまとめられているわけですが、文化振興などというとりとめもなければとらえどころもない茫洋たるテーマを与えられて、

 ──縦割りの行政にあって、今日の文化振興を切り口とする取組は、今後総合行政を進めていく上で大きな試金石となるもので、期待したい。

 とナイーブな期待に胸をふくらませている方もいらっしゃいますけど、

 ──文化芸術分野に加えて生涯学習分野などの近接分野も含めた検討を行うとあるが、近接領域はどこまで広げるのか。

 ──近接領域の所管部局との関係はどのように整理されているのか、またそれらでは「文芸術振興方策」のような計画等は作成されていないのか。

 といったあたりをはじめとしてしごくもっともな疑問がつるべ打ちされたような感じです。僭越ながらお知らせしておきますと、「近接領域」との連携なんて絶対できっこありません。残念でしたまたどうぞ、てなもんでっせ委員の先生。

 それにしても三重県ももうちょっと正直になれんものか。畏れ多くも文化でございましてとかなんとかかっこばっかつけていないで、博物館つくるから協力してねー、ともっと手のうち腹のなかをオープンにして話を進めればいいのである。余計なかっこつけたばっかりにみずからを窮地に追い込んでしまう結果となった愚かしい例、すなわちわれらが名張まちなか再生プランと住民監査請求の経緯に学ぶことをお勧めしておく次第なのですが、とにかく三重県庁のみなさんは心して博物館関連の職務に精励してくださいねー。ちょっとでも脇が甘かったらそこらのばかが住民監査請求ぶちかますかもしれませんからそのつもりでねー。

 いやほんと、名張市だってまったくおんなじことなんです。まちなか再生などという大風呂敷をひろげて見栄を張るからことごとくつまずいてしまったわけなのである。身のたけ身のほどをわきまえて、細川邸を整備するから協力してねー、みたいなことで話をスタートさせればよかったのである。お役所というのはどうしてこうかっこばっかつけたがるのか。中身がないからっつーか、ものごとには中身なんてものがあるのだという事実を知らないからなのであろうけれども。

 乱歩文学館のおはなしがどっか行っちゃいましたけど、あすという日がありますからねー。


 ■7月29日(日)
乱歩文学館なまんだぶなまんだぶなまんだぶ 

 朝っぱらから蒸し暑いなあ。当地はおととい27日に梅雨明けしたそうなのですが、おとといもきのうもいきなりの猛暑でまいってしまいました。きょうも暑いのか。ていうか、ほんとに梅雨が明けたのかな。なんか蒸してんだけど。

 そんな当地ではきのうの夜、名張川納涼花火大会という昭和6年からつづく伝統のイベントが催されたのですけれど、あれはきっと神罰がくだったにちがいありません、途中でえらく雨が降ってきてときに雷鳴もとどろき、花火大会は一時間ほど中断を余儀なくされてしまったみたいです。私は足を運ばなかったのですが、まち BBS の「○名張市について書き込んでみましょうPART6○」に報告が投稿されていて──

289 名前: 東海子 投稿日: 2007/07/28(土) 21:16:12 ID:CjelKoqw [ dhcp-3545.nava21.ne.jp ]
花火どしゃ降りで途中で帰ってきた
傘持ってなくてズブ濡れ 今再開してるけどあの雨ではどうしようもない
あぁ最後まで見られず残念・・・・

290 名前: 東海子 投稿日: 2007/07/28(土) 23:23:31 ID:x70RiYiI [ wtl7sgts55.jp-t.ne.jp ]
>>289
一時凄かったね。で、の後に雨止んだんだ。
ただ雨が止んだ後、それまで吹いていた風がぴたっと収まってしまったのか、花火の煙が直ぐには消えず。見る場所がマズかった事もあるんだろうけど、ナイアガラ【でいいのかな?】の煙が上空に滞留していて、それが消えるまでのしばらくの間の花火が少し残念だった。煙が消えた後は綺麗に花火を見れた

 新しく立てられた後継スレ「○名張市について書き込んでみましょうPART7○」には──

2 名前: 東海子 投稿日: 2007/07/29(日) 03:20:18 ID:zPIvI2F2 [ dhcp-4946.nava21.ne.jp ]
今年の納涼花火大会は今ひとつ盛り上がりに欠けた。
その上、怪我人も出る始末に。
多度の中断、大雨のせいか花火の数が例年に比べ花火が少なく思えた。
こんなに大波乱の花火大会は今までなかったと思う。
昔からの仕来りを守らなかったからだろうか…?

帰り道、そこらへんに散乱してるゴミを見るとやはり名張市民のマナーも悪さが伺えう。
来年度は、もっとボランティアの人を集めて警備体制を強化してマナーの改善に徹底すべき。

 ボランティアによる警備体制なんてのはいかにも危うく、何かあった場合の責任の所在が曖昧になりますからちゃんとお金を出してプロに警備をまかせるべきだと私は思いますけれど、そんなことはまあどうだっていいとして、興味深いのは「昔からの仕来りを守らなかったからだろうか…?」との問いでしょう。名張市民による(と推測されるわけですが)投稿にこんな疑問が呈されているのが面白い。心のなかで、これって神罰じゃね? とたとえぼんやりとでも感じている市民が存在しているということです。

 名張川納涼花火大会は7月の24日、住民監査請求をまぢかに控えて話題再燃の細川邸にほど近い、ということは乱歩の生家跡からもほど近い新町愛宕神社の夏祭りの夜に催されると昔から決まっておりました。ところが今年は平日よりも土曜のほうが多くの人出を見込めるだろうからと28日に変更され、それにともなって愛宕神社夏祭りも28日ということにしてしまいましたからさあ大変。てめーらの都合で祭日を勝手に変えていいと思ってんのか人間ども、とばかり愛宕神社の祭神である迦具土神が激怒されたのに相違ありません。神罰がくだって花火大会が雷雨に見舞われたのじゃよ。いやまあ自分たちの都合で既定路線をまったく勝手に、ルールや手続きを無視し原理原則を踏みにじって好きなように変更してしまうのはこのあたりではごくあたりまえのことですから、そのうち細川邸が迦具土神の怒りの炎に包まれたりなんかしてもわしゃ知らん。くわばらくわばら。

 ところできのうの午後11時41分42秒に立てられたこの「○名張市について書き込んでみましょうPART7○」では、スレ立て宣言がこんなぐあいになってました。

1 名前: 東海子 投稿日: 2007/07/28(土) 23:41:42 ID:wZt2ipjs [ ntmiex095006.miex.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp ]
江戸川乱歩生誕の地名張。
ネタは少ないですが、引き続きマターリいきませう。

前スレ ○名張市について書き込んでみましょうPART6○
http://tokai.machi.to/bbs/read.pl?BBS=toukai&KEY=1165751818

 結局のところ乱歩しかないわけです。スレ立ての挨拶に使用できるような名張の代名詞、それを出しさえすれば全国どこにでも通用するであろうと思われる名張ゆかりのブランド、つまりは名張のまちのアイデンティティの拠りどころ、その最終兵器はやっぱ乱歩であるという認識を、この東海子名義の投稿は雄弁に物語っているといえるでしょう。

 しかしだからといって、乱歩という名前を冠した施設を名張市に建設することはまったく得策ではないのだよ。私はこんなことばっかいってるわけですけど、要するにご町内感覚だけで乱歩文学館とやらのことを考えてくれるなということです。乱歩文学館とやらはご町内だけ、名張市民だけを対象にした施設ではないはずだろうがということです。名張市民しか入場できない乱歩文学館にするのであれば問題はないでしょう。しかし全国の乱歩ファンやミステリファンやその他のみなさんにもひろく公開いたしますというのであれば、しょぼい文学館つくることは名張市にとって絶対マイナスにしかなりません。てめーらいったいどこが乱歩文学館だこのいかさま自治体が、とお怒りになる人は必ず出てきます。ていうかたいていの人はそう感じてしまうことでしょう。だから関係各位にはそのへんをなんとかご理解いただきたいものなのですが、いったいいかがなものであろうか。だいたいが乱歩ってのは名張にほとんど関係ないんだしさ。

 かりそめにも乱歩の名前を僭称した文学館なのであれば、資料収集や企画運営の面でそれなりの予算が必要になってくるわけです。そんなものは名張市にはないでしょう。なにしろやる気がない、知恵がない、お金がないの三重苦だ。だから私はもういっそ、

 ──名張市は乱歩から手を引け。

 といってるわけなんですけど、そんなことはできないというのであればほんとにもう、住民監査請求でおなじみの細川邸を名張市立図書館ミステリ分室にしてしまうのがベストの選択であったはずなのね。図書館の分室なんだから、いま図書館にある乱歩の遺品や著書を細川邸まで運んで展示しておけばそれでいいわけです。新たな展示資料を購入する必要はありませんし、図書館なんですから定期的に企画展を開催しなければならないこともない。蔵書だってこれまでに名張市立図書館が寄贈していただいたミステリ関連書籍を図書館の地下書庫から移動して、ミステリ分室の開架にならべて運営を開始すればそれでいいわけ。そこから地道にスタートすればいいわけなんですけど、なんかハコモノつくりたがる人たちってのはハコモノつくったらそれがゴールだと考えてるからばかだというのじゃ。

 ゴールとスタートをまちがえてどうする。とにかく乱歩が生まれた名張の新町にミステリ専門の公共図書館をつくりました、というところからスタートすればよかったのよ。全国のミステリファンのみなさんから寄贈していただいた書籍を活用しておりますと、名張市に乱歩が愛したミステリの専門図書館がありますと、名張のまちの古い民家を再生し、寄贈書籍も再生させて、老幼男女がミステリに親しめる場がありますと、ミステリ関連書籍の寄贈はいつでも受け付けておりますと、乱歩が生まれた名張市は乱歩が愛したミステリを大切にしておりますと、それでそのミステリ分室ではお子供衆が名探偵コナンを読んでたり妙齢のご婦人が DVD で天知茂主演の明智小五郎シリーズを見てたりしてもいいのであって、要はミステリ分室をいくらでも柔軟につかいまわせばそれでよろしく、そのためのアイデアなんてまだいくらでもあるのだけれど、とにかくそんなあたりからスタートすればよかったのよ。乱歩文学館がどうのこうのと中身のない大風呂敷ひろげるしか能のないみなさんにこんなこといってもしかたがないけど、身のたけや身のほどってものに応じてものごとを進めるならばこういったことからはじめなければうそである。

 それで名張市立図書館には江戸川乱歩リファレンスブックという財産があるのだから、それを核としてインターネットを活用すればかなりの展開が可能なわけ。乱歩のみならずミステリ関係のデータをミステリ分室のサイトに掲載すればそれはもう有用にして重宝なものになることは眼に見えておるのだし、たとえば毎年おひとかたプロアマ問わずミステリに造詣の深い方にミステリ分室の名誉室長をお願いして、年に一度だけでいいから名張においでいただいてちょっとした講演をやっていただいたりアドバイスをいただいたり、あるいはまた年に一度たとえば乱歩が生まれた10月21日の前後でいいと思うけど、名張のまちを舞台にしてミステリの古書市を開いて全国のミステリファンに参加を呼びかけることも可能である。このプランは実際にミステリファンサークルの方からご提案いただいていたもので、名張市立図書館のたしか前館長あたりまで話は届いていたと聞き及びますが、その後いったいどうなったのかしら。

 いまさら何いったってしかたありませんけど、名張市役所のみなさんは乱歩乱歩と口に出すのならもうちっと真面目に乱歩のことを考えてくれんかね。うわっつらの手柄や点数だけに眼の色を変えるのではなくて、地道にこつこつとやるべきことをやってくっつーことを考えてはくれんかね。それとも何か、きょうび地道であることは恥ずかしいことだとでもいうのかな。注目を集めたり脚光を浴びたりしなければ意味がないとでもいうのかな。

 いやまあそんなことはともかくとして、ていうか腹が立ってきてしかたないからきょうはこれくらいにしておいてやるけれど、乱歩文学館はつくりませんけど乱歩から手は引きませんというのであればあーこれこれ名張市役所のみなさんや、おまえらいったいどうする気? どうする気もこうする気もおよそなんにもないのであろうが、だったらやっぱ名張市は乱歩のことに税金をつかうべきなのかどうなのか、それを考えることからはじめなければならんだろう。

 おれはもうほんとに名張市というインチキ自治体には愛想もこそも尽きはてておるのだが、名張市が乱歩に関してこれから先なーにしでかすかわかったもんじゃない以上、住民監査請求が一段落したそのあとは、名張市は乱歩をいったいどうするのか、それを名張市自身が明確に打ち出すことのお役に立ちたいと考えておる。とりあえずアプローチするべきは、

 ──いいかこら教育次長だかなんだか知らんがろくに経緯や事情もわきまえぬ人間が横からしゃしゃり出てきて人に偉そうな説教かましてんじゃねーぞたこ。

 でおなじみの教育次長あたりかしら。いやいくらいったって無理だろうから、結論はやっぱこうなるしかないのか。

 ──名張市は乱歩から手を引け。

 とにかくもう少しまともになれよな名張市とかいうインチキ自治体。ほんと、しまいにゃ神罰がくだるぞ。くわばらくわばら。


 ■7月31日(火)
住民監査請求かましてまいりました 

 きのうの朝はインターネットに全然接続できなくて、参院選における自民党の惨敗を知った田中角栄の御霊が大喜びして哄笑しながら災いをなしているせいかとも思われたのですが、サイトの更新もできぬまま営業開始時間を待ってプロバイダに電話で問い合わせてみたところ、単なるモデムの不調であると知れました。モデムの電源をいったんオフにするだけですぐに修復。午後には名張市役所を訪れて住民監査請求の手続きを済ませてまいりました。予定していたとおり谷崎潤一郎の命日に決行した次第ですが、なんだかテロリストになったような気分です。詳細はまたあしたお知らせいたします。