2007年9月下旬
21日 『探偵作家追跡』のお知らせの予告
22日 若狭邦男さんの『探偵作家追跡』のお知らせ
27日 小松史生子さんの『名古屋と乱歩』のお知らせ二回目
29日 「探偵随想」最新号
 ■9月21日(金)
『探偵作家追跡』のお知らせの予告 

 「名張まちなかブログ」なんてものをつくってたときには思いもおよばなかったのですけれど、ウェブサイトとウェブログのふたまたにいったん手を染めてしまった場合、ブログにかかりきってるときはサイトの更新に手がまわらないという事実に気がつきました。あたりまえっちゃあたりまえの話なんですけど。

 この伝言板で紹介しなければならぬ書籍類もいろいろとあるのですが、とくに9月15日付伝言にタイトルだけ記した若狭邦男さんの新刊『探偵作家追跡』に関しましては、けさ届いていたメールで問い合わせを頂戴しており、ネット上にはあまり情報が見あたらないとのことですからさっそく詳細を、と話を進めたいところなのですが、くわしい内容はあしたお知らせすることにいたします。以上、お知らせの予告でした。


 ■9月22日(土)
若狭邦男さんの『探偵作家追跡』のお知らせ 

 それではきのうお約束したとおり、若狭邦男さんの新刊『探偵作家追跡』についてお知らせいたします。

 巻末の著者紹介にはこうあります。

 探偵小説研究家。雑誌及び小説を収集、雑誌「日本古書通信」に探偵作家について執筆。さらに、「八切止夫研究」の第一人者として、別名の「耶止説夫」の作品を発掘するとともに、雑誌「歴史民俗学(検証・八切止夫)」(批評社、平成十四年)を編集し、「八切止夫年譜」を発表、知られていない多数の作品を紹介した。

 探偵小説のマニア兼コレクター兼研究家としてその筋ではよく知られた方で(だと思います)、『江戸川乱歩著書目録』の調査ではずいぶんお世話になったものでした。その若狭さんがキャリアとコレクションにおおいにものをいわせ、マニアックなうえにもマニアックな「追跡」をくりひろげたのが『探偵作家追跡』。

 「日本古書通信」の二十一回にわたる連載を中心に編まれていますが、ひとことでいって眩暈がしそうな内容です。

 まずは作家篇の目次から。

第一章 探偵作家追跡
01 鮎川哲也「月魄」
02 江戸川乱歩「偉大なる夢」
03 小栗虫太郎『黒死館殺人事件』
04 大下宇陀児『天狗の面』
05 耶止説夫「南進兄弟」
06 覆面作家「幽霊を抱いていた男」
07 香山風太郎「悪魔の貞操帯」
08 魔子鬼一『女のミステリー』
09 大阪圭吉『ほがらか夫人』
10 吉良運平『遺書の誓ひ』
11 大月恒志『流れ流れて』
12 水上幻一郎「火山観測所殺人事件」
13 守友恒『幻想殺人事件』
14 九鬼澹「死はかくして美しい」
15 華村タマ子「渦紋」
16 矢留節夫「悲恋の情」
17 岡戸武平『全力投球』
18 「新探偵小説」の三人「暗黒の殺人」
19 狩久『不必要な犯罪』
20 薄風之介『黒いカーテン』
21 川口直樹『悪魔の乱舞』
22 角田喜久雄『高木家の惨劇』
23 赤沼三郎『悪魔の黙示録』
24 都筑道夫「殺した女が腫れ物になった話」
25 杉山清詩『爆弾娘』
26 土屋光司『世界名作探偵小説集』
27 妹尾アキ夫『決闘』

 この「追跡」に必要だった労力、時間、資金、その他もろもろを考えると、おおげさではなく気が遠くなってしまいそうになります。

 つづいては雑誌篇。

第二章 「探偵雑誌」閲覧室
01 雑誌「ロック」
02 雑誌「さんるうむ」
03 雑誌「宝石」
04 雑誌「ぷろふいる」「仮面」
05 雑誌「トップ」
06 雑誌「黒猫」
07 雑誌「真珠」
08 雑誌「妖奇」
09 雑誌「オール・ロマンス」
10 雑誌「ネオ・リベラル(新自由)」
11 雑誌「実話講談の泉」
12 雑誌「怪奇探偵クラブ」
13 雑誌「探偵実話」
14 雑誌「オール猟奇」「綺談」「ベーゼ」
15 雑誌「探偵趣味」

 B6判、291ページ、カバー装。2007年8月15日、日本古書通信社発行、本体2100円。

 しかしなるほどネット上にはあまり情報が見あたりません。なにしろ版元のオフィシャルサイトでも告知されていないようなのですが、bk1では販売されておりますのでこの『探偵作家追跡』、その筋のみなさんはぜひお買い求めくださいますよう。


 ■9月27日(木)
小松史生子さんの『名古屋と乱歩』のお知らせ二回目 

 すっかりご無沙汰してしまいました。ブログなんてものを開設して十日ほどが経過いたしましたが、ついついそちらに時間を取られてしまいがちで、本宅と妾宅をかけもちする明け暮れにいまだ慣れることあたわず。

 メールでお知らせくださった方がありましたので、とはいえそれも掲載当日、9月21日のことでしたから、いささか遅ればせではあるのですが、本日の「RAMPO Up-To-Date」。

関連文献
乱歩の幻想育てた名古屋 小松史生子
日本経済新聞
9月21日 日本経済新聞社
44面文化

 金城学院大学准教授、小松史生子さんのエッセイ。冒頭の一段落。

 推理作家の江戸川乱歩は三歳のとき、父の転職で名古屋市に引っ越し、十八歳まで暮らした。多感な少年期を過ごしたが、これまで名古屋とのかかわりについて語られる機会は少なかった。私は中高校生活を名古屋で送り、現在、当地の大学で教鞭をとっている縁から、名古屋という都市が乱歩に与えた影響について研究している。

 いきなりですが、結びの一段落。

 名古屋は東京と京都・大阪の中間に位置し、両方の文化を必要に応じて取捨選択してきた。革新性と保守性が交錯する独特な都市といえるだろう。その姿は様々な表情を持つ乱歩に重なる。

 どう重なっているのか。小松さんの著書『名古屋と乱歩』をお読みください。5月30日付伝言から版元サイトへのリンクつき書影を再掲。

 なんか、ブログに手を染めたせいで文体というものを見失ってしまったような気がする。


 ■9月29日(土)
「探偵随想」最新号 

 ブログに時間を取られるというよりも、これはもうはっきりとモチベーションの問題でしょう。それにしても名張市ってどうよ。無茶苦茶などというも愚か。なんかもうほんっとやだ。とか思って腹ばかり立ててるとサイトの更新もとどこおりがちになります。われながらじつに情けない話だと思います。

 とりあえず本日の「RAMPO Up-To-Date」。個人誌「探偵随想」の最新号が出ました。

関連文献
とりとめのない話 秋田稔
探偵随想 95号
9月25日 秋田稔
関連項目
幽霊椿事芸名令名同名異人壺中庵 メモ聯想試験浅草《余風》

 「芸名」から引用。

 小説「江川蘭子」は浅草レビュー界とは別にもう一人、SSK(松竹少女歌劇部)に江戸川蘭子というスターを生んだ。昭和七年である。水の江滝子とやったその踊りも歌も映画も、ぼくは見たことがない。ないが、乱歩小説関連記事として新聞の死亡欄を切り抜いている。平成二年晩秋、享年七十七。
 「夢声戦争日記」に彼女が何度か顔を出している。彼女に頼まれ、夢声が所得税の申告書を知ったか振りで適当に作ってやったというのがあった。

 乱歩にかかわりのあった女優ということで思い出し、8月19日に死去した南風洋子さんのことも「RAMPO Up-To-Date」に録しておきました。合掌。