2008年2月上旬
4日 須川毅さんの『夜の演出 鮎川哲也未収録推理小説集』
5日 北村薫さんの『北村薫のミステリびっくり箱』
6日 YouTube の乱歩、アニメの「赤い部屋」
7日 YouTube の乱歩、置き引きの思い出、漫画「赤い部屋」
8日 YouTube の乱歩、バラエティの「鏡地獄」
9日 YouTube の乱歩、人間椅子 vs 妖人ゴング
10日 YouTube の乱歩、「恐怖奇形人間」の予告篇
 ■2月4日(月)
須川毅さんの『夜の演出 鮎川哲也未収録推理小説集』 

 はやいもので、あたふたしているあいだに立春を迎えてしまいました。

 もう三、四年ほども前のことになるでしょうか、恥ずかしながら自己破産した年がめでたく暮れようとしていたころのこと、例年のごとく年賀状の用意をしようとして、私はちょっとした気がかりをおぼえてしまいました。自己破産した人間が新年をことほいでいいものかどうか。年賀状を送ったりするのは先様への礼を失した行為になるのではないか。

 それでその年、といいますかその年が明けた新年、それは酉年のお正月でしたが、そのお正月には年賀状を出さず、かわりに2月4日の立春を期して新年の挨拶状を発送いたしました。これはその後も習いとなって、先日もあるところでお会いした方から、そろそろ立春のはがきが届くころだな、と声をかけていただいたりしたのですが、きょうが立春だというのにまあ、なんか困ったことですけどまだできあがっておりません。印刷屋さんに発注した立春の挨拶状、立春だというのにまだ届いてまいりません。注文したのは2月1日のことですから、そんなに早く届くわけがありません。

 今年は春のおとずれが多少遅いのかな、みたいな感じになっております。

 挨拶状のかわりに届いたのがこれ、とかなり強引な展開でお知らせに突入いたしますが、『夜の演出』という少部数の出版物をお送りいただきました。「鮎川哲也未収録推理小説集」と銘打たれております。

 喜国雅彦さんの表紙画に飾られたこの一冊は、在野のミステリマニア(ミステリマニアに在野とかそんなのは関係ないと思いますけど)でいらっしゃる須川毅さんの編集発行による個人出版。「これまで鮎川哲也名義の刊行本になぜか収録されなかった可哀想な作品」(巻末の「編者贅言」から引用)を限定二百部、百六十ページの本に集成したものです。

 収録作品と初出を掲げておきましょう。

夜の演出 鮎川哲也未収録推理小説集
探偵絵物語
 最後の接吻 昭和31年 読切特撰集1
 退屈なエマ子 昭和31年 読切特撰集2
 アドバルーン殺人事件 昭和31年 読切特撰集3
 舞踏会の盗賊 昭和31年 読切特撰集4
 出獄第一歩 昭和31年 読切特撰集5
 處刑の広場 昭和31年 読切特撰集6
 激闘の島 昭和31年 読切特撰集7
 ヨットの野獣 昭和31年 読切特撰集8
 無人艇タラント号 昭和31年 読切特撰集9
 九時〇七分の恐怖 昭和31年 読切特撰集10
 湖泥のギャング 昭和31年 読切特撰集11
 エミの復讐 昭和31年 読切特撰集12
寒椿 昭和32年 読切特撰集4
黒い雄蕊 昭和33年 週刊ポスト11/11
ライバル 昭和35年 中部日本新聞2/7
結婚 昭和37年 宝石1
哀れな三塁手 昭和41年 週刊サンケイスポーツ特集号1
草が茂った頃に 昭和42年 女性自身7/10
殺し屋ジョオ 昭和44年 小説クラブ6
青いネッカチーフ 昭和44年 女性自身10/4
夜の演出 昭和45年 北国新聞8/30
お年玉を探しましょう 昭和34年1/1 ロート製薬スリラー劇場(ラジオ東京他3局放送)

 価格は千円(送料別)、2月1日に受付開始とのことで、詳細はこのアドレスへのメールで須川さんにお問い合わせください。

 それでは本日はこのへんで。


 ■2月5日(火)
北村薫さんの『北村薫のミステリびっくり箱』 

 めずらしく二日連続の更新となります。

 きのうお知らせいたしました『夜の演出』、須川毅さんの編集発行による鮎川哲也の未収録推理小説集の件ですが、なにしろ二百部の少部数出版、圧倒的な人気を集めてすでに残部は僅少だそうです。僅少も僅少、あと十部ほどしか残ってないみたいですから、購入ご希望の方は弾よりも速くこのアドレスへのメールでお申し込みください。

 次はウェブニュース。ニュースったって一か月ほど前のものですけど、新刊の紹介です。新刊ったって去年の11月に出た本ですけど、とにかく引用。

探偵作家クラブの企画追体験
「北村薫のミステリびっくり箱」

 江戸川乱歩や山田風太郎が出演したラジオ文士劇の「秘蔵音源」が聞けるCDを付録につけた『北村薫のミステリびっくり箱』=写真=(角川書店、税別2000円)が刊行された。

 昨年、創立60周年を迎えた日本推理作家協会の前身、探偵作家クラブの昭和20年代の会報を主な題材に、往年の推理作家が参加した手品や忍者の見学ツアーを、ホスト役の北村さんが現代の人気作家と追体験、対談形式で振り返っている。

 去年の11月に出た本ですが、なぜか当地の書店には回ってきませんでしたので、12月に足を運んだ京都の本屋さんで購入いたしました。で、「RAMPO Up-To-Date」に記載するのはきょうのこととなりました。遅ッ、遅すぎッ、とは思いますけどどうか大目に見てください。

関連書籍
北村薫のミステリびっくり箱 北村薫
11月12日 角川書店
著:北村薫
附録:CD-ROM 1枚(1:ラジオドラマ「びっくり箱殺人事件」、2:江戸川乱歩インタヴュー、3:江戸川乱歩歌唱「城ヶ島の雨」、4:甲賀三郎自作朗読「荒野」(抄))
初出:野性時代 2003年12月号(第1回)/2004年9月号(第2回)/2005年2月号(第3回)/8月号(第4回)/11月号(第5回)/2006年6月号(第6回)/2007年9月号(第7回)/3月号(第8回)
 北村薫
第一回 将棋
対決! 盤上の乱歩 北村薫、逢坂剛、高橋和
御手並拝見! 探偵作家の将棋 高柳敏夫(初出:将棋世界 昭和25年3月号)
二大探偵作家将棋頂上決戦 !!初出:将棋世界 昭和25年3月号)
対談を終えて 北村薫
第二回 忍者
忍者がネクタイ締めてやってきた! 北村薫、川上仁一、馳星周
コラム初出:読売新聞 昭和25年4月30日)
対談を終えて 北村薫
第三回 嘘発見器
うそつきは作家のはじまり!? 北村薫、北方謙三、今村義正、萩原伸咲
第四十八回土曜会記録初出:探偵作家クラブ会報 昭和25年7月号)
対談を終えて 北村薫
第四回 手品
生涯、トリックに魅せられて。 北村薫、綾辻行人、ヒロ・サカイ
角田喜久雄「奇蹟のボレロ」のトリック検証図初出:探偵作家クラブ会報 昭和23年4月号、5月号)
対談を終えて 北村薫
第五回 女探偵
女探偵のヴェールのむこう 北村薫、大徳直美、加納朋子
かくれた苦労 佐藤みどり(初出:探偵作家クラブ会報 昭和37年3月号)
対談を終えて 北村薫
第六回 声
「声」が伝える豊かな世界 北村薫、宮部みゆき、戸川安宣
探偵作家クラブ放送初出:探偵作家クラブ会報 昭和24年12月号)
対談を終えて 北村薫
第七回 映画
ミステリ映画・怒濤の11本勝負! 北村薫、山口雅也、小山正、濱中利信
「蝶々殺人事件」の映画化初出:土曜会通信 1号/昭和22年2月)
対談を終えて 北村薫
第八回 落語
落語は「人間」そのもの 北村薫、立川志の輔、逢坂剛
第十五回土曜会記録初出:探偵作家クラブ会報 昭和22年10月号)
初笑ひ新春座談会 桂文治、古今亭志ん生、神田伯龍、桂小文治、田辺南鶴、江戸川乱歩、城昌幸、岩谷社長、本紙記者(初出:天狗 昭和24年新春特大号)
対談を終えて 北村薫
CD 解説を中心とした、あとがき 北村薫

 厳密にいえば第二回だけは乱歩との関係が稀薄な内容となっているのですが、こまかいこといわないで一冊まるごと関連書籍として扱いました。嬉しいのはおまけのCD-ROM、乱歩の声や歌を聴くことができます。

 さて、きょうもきょうとてとある親戚筋から、立春の挨拶状がまだ到着せんのだがちゃんと投函したのであろうな、と確認の電話が一本。いやまだ印刷が、といいわけ並べた次第ではあったのですが、さっき印刷屋さんが超高速で仕上げて届けてくれましたので、そろそろ発送作業に入れるものと思います。しかしそれにしても、去年まで差出人のところに書いてあった犬の名前が消えているのがなんだかなあ。


 ■2月6日(水)
YouTube の乱歩、アニメの「赤い部屋」 

 きのうから北村薫さんつながり。2004年に出た『ミステリ十二か月』が中公文庫になりました。帯には「ミステリを読み始めた若い読者のための道案内」とあります。

関連書籍
ミステリ十二か月 北村薫
1月25日 中央公論新社 中公文庫
著:北村薫
旧版:『ミステリ十二か月』中央公論新社 2004年10月25日
関連箇所
I ミステリ十二か月
 
「少年探偵団」の不思議な別世界初出:読売新聞 2003年1月11日)
 
なぞ解きの面白さ初出:読売新聞 2003年2月15日)
 
独特の哀愁、乱歩も夢中に初出:読売新聞 2003年3月1日)
 
自分の“宝石”必ず見つかる初出:読売新聞 2003年3月8日)
 
ナゾだらけの仮面はぐ初出:読売新聞 2003年5月24日)
II 本棚から出てきた話
III 絵解き謎解き対談
 北村薫、大野隆司
IV 「全身本格」対談 北村薫、有栖川有栖

 単行本でご購入の読者諸兄姉も少なからずおいでだろうと拝察いたしますが、「『少年探偵団』の不思議な別世界」から一段落。

 ここでは、第一作の名をあげましたが、それぞれの作品に独自の持ち味があります。初期の「怪盗対名探偵」の知恵の戦いも見事です。しかし、次第に二十面相は、観客を意識した優れた、そして何とも不思議な演技者ぶりを見せ始めます。乱歩にしか書けない世界が広がるのです。『透明怪人』や『宇宙怪人』といった物語を、我々は、ひとつのパターンとして読みます。すでに「少年探偵団もの」を知っているからです。しかし、記憶を消し去った目で改めて見た時、それらがいかに個性的な創造であるかに気づきます。

 さてところで、一か月近くも更新をサボっておまえはいったい何をしていたのか、とお思いの方もおありかもしれません。からだでも壊したのではないかと電話やメールをくださった方もあり、まことにかたじけなく思う次第です。とくにたいしたこともしていなかったのですが、しいていうならあれでしょうか、自分さがしの旅ってやつでしょうか。いやいや実際に旅行をしたわけではありませんけど、まあ自分さがしの旅であったということにしておいて、ところが自分なんてものはそう簡単に見つかるものではないようです。

 つれづれなるままに YouTube を眺めてみても、自分なんてどこにも見つからなかったそのかわり、滝沢乃南ちゃんがなぜか、ほんとにこれはなぜかというしかないのですが、なぜか「残酷な天使のテーゼ」を歌っている動画を発見してしまい、自分は見つからなかったけどこれが見つかったんだからまあいいかと、できるだけ前向きに考えることにいたしました。

 動画はこれ。興味のない方はあっさりスルーでお願いします。

 きょうの本題は滝沢乃南ちゃんではむろんなく、YouTube に投稿されていたアニメ版「赤い部屋」です。たしかなことはもうひとつよくわからないのですが、1986年の4月から12月まで日本テレビで毎週金曜午後7時から7時30分まで放送されていた「青春アニメ全集」の一篇だと判断されます。ややくわしいことは Wikipedia の「青春アニメ全集」でどうぞ。

 さっそくごらんいただきましょう。三分割で掲載されております。ストーリーは原作にかなり忠実なのですが、さすがに按摩さんは登場せず、おしまいのあたりで妙に説教くさくなってきたなと思っているうち、おやおやそういうことかいなという結末を迎えます。



 この「青春アニメ全集」ではほかに「屋根裏の散歩者」と「心理試験」もアニメ化されていて、キャラクターデザインは三作品とも石ノ森章太郎が手がけたそうです。

 さて、そろそろ立春の挨拶状に宛名を書き込まねばならんところなのですが、まああしたからでいいとして、きょうのところはお酒を飲むことにしてしまいます。自分さがしの旅が始まる。


 ■2月7日(木)
YouTube の乱歩、置き引きの思い出、漫画「赤い部屋」 

 YouTube の乱歩、本日は2005年に公開された映画「乱歩地獄」の予告篇をどうぞ。

 そうだよなあ。2005年の10月1日、立教大学で「読売江戸川乱歩フォーラム2005」という催しがあって、この「乱歩地獄」も上映されたのであったけれど、それを観たあとお酒を飲んで、最終的には新宿ゴールデン街で夜明けを迎え、新宿駅から乗った山手線の始発で置き引きに遭ったんだよなあ。あのときはほんと、ばかみたいだったなあ。いまでもばかみたいだけどなあ。

 乱歩作品四篇をとりあげた「乱歩地獄」では実相寺昭雄監督の手で映画化されていた「鏡地獄」が、東元さんによって漫画化されました。

漫画
赤い部屋 鏡地獄 東元
ビジネスジャンプ増刊 ビージャンこん 39号(通巻633号)
3月1日 集英社
原作:赤い部屋、鏡地獄

 東元さんが「赤い部屋」というタイトルで手がけていらっしゃるシリーズの四作目。これまでに「百面相役者」「双生児」「人間椅子」が漫画化されていて、例の赤い部屋に集まった猟奇者が順に打ち明けてゆく物語があるときは「百面相役者」であったり、あるいは「双生児」であったりという趣向の連作です。どれも原作にひねりが加えられていて楽しめます。独特の懐かしさを感じさせる画風も私には心地よく、どんな描線か、これはあくまでも無断転載ではなく引用であると強弁したうえで、主要登場人物のスキャン画像を掲載してみましょう。

 上が主人公、下右が語り手、下左が主人公の小間使いでもあり恋人でもあった女の子、といちいち贅言をつらねる必要もないでしょうけれど、この女の子がとくに好ましい。「乱歩地獄」におけるカネコアツシ監督作品「蟲」の緒川たまきさんが連想されたりもいたします。


 ■2月8日(金)
YouTube の乱歩、バラエティの「鏡地獄」 

 YouTube の乱歩、本日はテレビのバラエティ番組でご機嫌をうかがいます。番組のなかではとくに乱歩作品と関連づけられてはいないのですが、球体の鏡のなかに入ったら何が見えるのか、というまるっきり「鏡地獄」な実験に挑んだ番組があったようです。検索して調べてみましたところ、2007年10月11日午後7時から8時54分まで日本テレビ系列で放送されたバラエティ特番「驚きの嵐!世紀の実験 学者も予測不可能 SP」の第三回がそれだったらしく、ややくわしいことは Wikipedia の「驚きの嵐!世紀の実験 学者も予測不可能 SP」でどうぞ。

 「球体の鏡の中に入ったら人はどう映るのか?」という設問に対して、三人の学者の先生が実験に先がけて結果を予測します。ひとりは「拡大されて超巨大な姿が映る」、もうひとりは「光が反射しあって真っ白になる」、残るひとりは「どこを見ても自分の目が映る」と三者三様の答えが提示されたあと、いよいよ嵐の櫻井翔君が球体の鏡に閉じ込められます。

 ところで、ついでに Wikipedia を検索して知ったのですが、櫻井翔君の翔という名前は、翔君のお母さんが柴田翔さんをお好きだったことから名づけられたとのことです。そうかそうか。翔君のお母さんはそういうお母さんだったのか。一度、三者懇談か何かでお目にかかりたいものである。とはいえ私は、少し前に文春文庫の『されどわれらが日々──』とか新潮文庫の『贈る言葉』とか、新装版が踵を接するようにして出てましたけど、なんか意地になって絶対に買ってやらなかったからなあ。

 お次はウェブニュース。鳥羽みなとまち文学館の話題です。

影絵で「昭和」を再現 鳥羽みなとまち文学館
 鳥羽市鳥羽2丁目の鳥羽みなとまち文学館に、昭和30年代の街並みなどをイメージした影絵が描かれた。ベーゴマやチャンバラごっこなどの遊びに興じる子どもたちの姿や、同館のテーマのひとつである江戸川乱歩の世界などを表現。同館では「絵を通して懐かしさを感じてもらえれば」と話している。

 影絵はテーマ別の6作品で黒色の特殊塗料を使用。同文学館を通り抜けることができる小道の壁面や通りに面した格子戸の中、同文学館周辺の民家の壁に描かれている。

 竹馬やまりで遊ぶ当時の子どもたちや、泥棒を追い掛ける警察官などのシルエットが、ほほ笑ましいタッチで表現されている。また、格子戸の中には江戸川乱歩作品の登場人物、怪人二十面相や明智小五郎、少年探偵団の小林少年らおなじみのキャラクターも描かれている。

 鳥羽の市街地もなんだか大変みたいで、乱歩とは関係のない記事ですけど、きのうの朝日新聞からコラムを引いておきましょう。

はなしょうぶ
 鳥羽市を訪れる観光客は、年間約500万人といわれる。1日平均1万3700人。市の人口は約2万3千人だから、観光客の割合が大きいのに驚く。

 ところが、市街地を歩いても、観光客に出会うことは少ない。「なぜ?」と考えて、観光客は海岸線近くにある観光施設、ホテル、港、駅などの間を移動するだけで、街に出ることはほとんどない、と気づいた。

 いやー、名張の市街地のほうがもっともっと大変だぞ。


 ■2月9日(土)
YouTube の乱歩、人間椅子 vs 妖人ゴング 

 YouTube の乱歩、本日はインディペンデント系といいますか、脱力系といいますか、素人衆がビデオで撮影した人間椅子 vs 妖人ゴングの一騎打ち、テレビの特撮ものふうにアレンジされた作品が投稿されております。なんともくだらなくって笑えます。気持ちが悪くなったりするような内容ではありませんから、どうぞ安んじてごらんください。

 無邪気に笑っていただきましたあとは、きょうもウェブニュースを一本。去年もお知らせしましたけれど、柳家喬太郎さんの新作落語の話題です。

<落語>『濃密な空間』味わって!! 柳家喬太郎が新作2題のCD
 落語家・柳家喬太郎がアルバム「柳家喬太郎落語集 アナザーサイドVol・1」(コロムビア、2千5百円)を完成させた。「国民ヤミ年金」など、時事ネタをテーマにした自作の新作落語と古典落語で高い評価を得ている実力派だが、今回は原作者のいる新作を収録している。

 収録演目は、平成十六年落語協会主催「新作台本大賞最優秀賞」を受賞した武藤直樹原作「東京タワー・ラヴストーリー」と、江戸川乱歩原作「赤いへや」の二作品にボーナストラックという構成。「これまで自作の新作落語を収録してきましたが、今回、別のシリーズができたということで感慨深い。まあ、次が出るかは、レコード会社次第ですがね(笑)」

 爆笑を誘いつつ、オチで「えっ?」と考えさせられる「東京タワー〜」。そして乱歩作品の中でもマニアックな殺意なき無差別殺人(プロバブリー殺人)を描いた「赤いへや」は独特な味わいを醸し出す。

 さて、遅ればせながら宛名を書き終え、何か記念切手をと思って名張郵便局に行ってみたのだけれどそれしかなかった通常切手もようやく貼り終えたというのに、昼過ぎからの本格的な雪に降り籠められて外出もままならぬまま夕暮れを迎えてしまいました。立春の挨拶状、投函はあしたということになります。今年はほんとに春の訪れが遅いようです。


 ■2月10日(日)
YouTube の乱歩、「恐怖奇形人間」の予告篇 

 YouTube の乱歩、三連休でも休まずまいります。本日はよくこんなのが見つかったなと思われる掘り出しもの。1969年公開の東映映画「江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間」の予告篇です。石井輝男監督をはじめとしたスタッフとキャストは日本映画データベースの「江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間」でご確認ください。

 ただしこの予告篇、人によっては気味がわるいとか気色がわるいとか、不快感や嫌悪感を感じる場合があるだろうと思われます。どうかご注意ください。また、吉田輝雄さん扮する人見広介が「私はきちがいじゃない」「俺はきちがいじゃない」と狂おしく連呼しておりますので、いわゆる差別用語に敏感な方も要注意かもしれません。

 つづきましては赤面ものといいますか、あるいは冷や汗ものといいますか、関係各位にお詫びを申しあげつつウェブニュース一本。1月5日からきょうまで、まさしくきょう2月10日まで徳島県立文学書道館で開かれていた「日本 SF の父・海野十三展」のニュースです。自分さがしの旅にかまけていたせいでこの企画展、お知らせするのをすっかり失念しておりました。いやもう赤面ものといいますか冷や汗ものといいますか。伊勢の名物赤福なみに平身低頭しております。

海野十三 現実・未来へのけい眼
 徳島県立文学書道館で、日本SFの父といわれる作家「海野十三(うんのじゅうざ)展」を開催している。

 生誕110年を迎えた徳島市出身の海野は、早大卒業後、逓信省電気試験所で無線の研究に従事しながら、1928年(昭和3年)に「電気風呂の怪死事件」でデビュー。猟奇的な出来事を扱った「三人の双生児」「東京要塞(ようさい)」などの探偵小説や、江戸川乱歩と共に夜の東京下町を散策して創作した、SF色の強い「深夜の市長」等で知られる。

 南方へ出征し、敗戦後の49年に51歳で病没したが、一時は乱歩と人気を二分するほどで、「少年倶楽部」に発表した「浮かぶ飛行島」「宇宙戦隊」などの冒険SF小説は、その鮮やかな表紙の印象と共に、手塚治虫ら後の創作者らに、強烈な影響を与えたことを納得させる展示内容だ。

 それでは本日はこのへんで。