2008年7月
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暑い日がつづきます。暑さにまぎれてこっそり帰還いたしました。乱歩の命日くらい何かしら伝言があるのではないかと、最近は開設者でさえ見向きもしていなかった名張人外境をご閲覧くださった諸兄姉にお礼を申しあげます。暑さのせいか、気の迷いか、人間豹が戻ってまいりました。 さっそくお知らせです。平井隆太郎先生の『乱歩の軌跡 父の貼雑帖から』が東京創元社から出版されました。奥付の発行日はきょう7月28日、すなわち乱歩の命日となっております。合掌。 版元のサイトの新刊紹介「乱歩の軌跡 父の貼雑帖から」には函の写真が掲載されておりますので、ここでは表紙をご覧いただきましょう。 長きにわたって更新をお休みしていたせいかして、画像をアップロードする手順の一部を忘れてしまっておりました。こんなことでいいのか、と思いつつ、きょうのところは軽くこれくらいで失礼いたします。 |
立教大学江戸川乱歩記念大衆文化研究センターから「大衆文化」創刊準備号が出ました。といっても今年春のことで、発行日は3月25日。お知らせするのが遅くなって、まことに遺憾に存じます。 誌名が示すとおり、小説、映画、演劇、雑誌など、広範な分野の大衆文化をカバーする評論と随筆が収められていますが、そこはそれ乱歩を記念した大衆文化研究センター、巻頭には口絵写真「乱歩/喧騒の車町時代(昭和八〜九年)」が配され、巻末には大正9年に執筆された「二銭銅貨」の草稿が写真入りで翻刻されていて、乱歩ファンなら見逃せない一冊となっております。 掲載された丹羽みさとさんの評論「雲を凌ぐ──『押絵と旅する男』と浅草十二階──」は、浅草という場にせめぎあった現実と魔力とを探る一篇。結びの段落をお読みいただきましょう。
気になるお値段は税込み五百円。ややくわしいことは、ググったらトップでひっかかってきたジュンク堂書店「大衆文化 創刊準備号 2008.3」でどうぞ。 |
なんか暑いですから、きょうは「RAMPO Up-To-Date」の更新だけにとどめ、伝言板はお休みにしようかと考えていたのですが、思い直して来月27日に開幕するベネチア国際映画祭の話題。 朝日新聞の昨日付ウェブニュース「北野・宮崎・押井作品 ベネチア映画祭のコンペ参加」によれば、コンペティション部門に「陰獣」を題材にしたフランス作品「INJU」が参加するそうです。 そういえば以前、この映画のスタッフの方から、大江春泥の名前入り原稿用紙をつくりたいのだが、との問い合わせをいただいたことがありました。実際にそんな原稿用紙がつくられ、映画のなかで使用されることになったのかどうか、その点はさっぱりわかりません。 |
どのようにでもなっておしまい、とばかり投げやりになってサイトの更新をほっぽらかしていたころには、乱歩がずいぶん遠い人になってしまったなという実感がありました。しかしえらいもので、こうやって毎日、とにもかくにも、なんであれかんであれ、みずからのサイトで乱歩の話題にふれていると、乱歩がふたたび近しい人になってくれつつあるような気がしてきます。近しい人というよりは、懐かしい人というべきでしょうか。 堀切直人さんの『迷子論』が、堀切直人コレクションの一冊『新編迷子論』としてよみがえりました。今年4月の発行で、版元は右文書院、本体二千二百円。収録作品は1981年刊行の『迷子論』から取捨選択されたほか、堀切さんが学生時代にタイプ印刷で自費出版したという『冥府もぐり』からも採られていて、そのあたりが「新編」のゆえんでしょう。ややくわしいことは版元のサイトの「堀切直人コレクション3『新編迷子論』」でどうぞ。 『冥府もぐり』から再録された「閉ざされたエロスの行方 江戸川乱歩と夢野久作」では、中学生あるいは高校生だったころの読書体験から乱歩と久作が語り始められており、読者個人の読書の記憶をも呼び醒まして、いささか後ろ暗いような懐かしさを覚えさせます。冒頭の二段落を引いておきましょう。
人は乱歩を語るとき、なぜかしらみずからの少年時代を懐かしく想起することから始めてしまうものらしいのですが、乱歩体験が少年期のひそかな事件であったというのであれば、それも当然のことかもしれません。 |