2008年12月中旬
11日 好評らしいポプラ文庫版少年探偵シリーズ
12日 「K-20」ばかりが映画じゃない
13日 遅ればせながらワセミスとフーダニット
14日 ってなこといっちゃうんだな座談会
15日 「昭和こども新聞」の紙面から
16日 積ん読フレンズからのお知らせ
18日 「K-20」ウェブ評判記
20日 続「K-20」ウェブ評判記その他
 ■12月11日(木)
好評らしいポプラ文庫版少年探偵シリーズ

 産経新聞の本日付ウェブニュース、ポプラ文庫版少年探偵シリーズが人気を集めていると報じられています。

江戸川乱歩「少年探偵シリーズ」鮮やかに復活 『怪人二十面相』など6冊
 江戸川乱歩の名作「少年探偵シリーズ」が復活して人気を集めている。映画「K−20怪人二十面相・伝」(20日公開)の製作を機に、昭和39年にポプラ社から出版された6冊を、当時のままに再現して刊行した。

 同シリーズは、これまでに児童向け26冊と、大人向けのものを書き直した20冊が出版され、これまでに計1300万冊が発行されたが、旧版は絶版となっていた。そのうち、今回出版されたのは『怪人二十面相』『少年探偵団』『妖怪博士』『大金塊』『青銅の魔人』『サーカスの怪人』の6冊。

 「少年探偵シリーズはわが社の財産」と語るポプラ社のポプラ文庫副編集長、吉川健二郎さん(34)は「昭和39年に出版された初版を忠実に再現した」という。

 先日は「この六点が売れたら出る、といったところなのかもしれませんが」と記しましたが、この記事によれば「来年以降に続編も刊行されるという」とのことです。となると「ある時期たしかに乱歩その人の作品として流通し、読者の心に忘れがたい印象を刻んでいたリライト作品」がどうなるのかが気になりますが、そのあたりのことはよくわかりません。


 ■12月12日(金)
「K-20」ばかりが映画じゃない

 いまでもときおり思い出したみたいに「少年少女乱歩手帳」の入手希望が寄せられていて、きょうもきょうとて発送作業に勤しみました。ご希望の方はお気軽にどうぞ。

 さて、きょうもきょうとてウェブニュースでお茶を濁します。ニュースというかインタビューですけど。

“僕も「少年探偵団」のようなものを作ったことがある”『悪夢探偵2』塚本晋也監督インタビュー
探偵映画に対してこだわりのようなものはありますか?

本当の探偵ものを作るほど僕は頭がロジカルにできてないので無理ですけど、自分だけの探偵を生み出したいという思いは強いですね。ある雑誌に「昭和の名探偵」というような特集が掲載されていて、それにはいろいろな探偵の名前や性格や活躍が書かれていたんです。それを見たとき、“うわー!この中に自分の探偵入れてくれないかなー”という思いがきっかけとなり、悪夢探偵が作られたというのもあります。
あと、僕自身あまりカッコ良すぎる探偵より、人間味のある探偵の方が好きなんですよ。子供の頃、少年探偵団みたいなのを作ったことがあるんですけど、乱歩の小説にでてくる少年探偵団の団員たちは普通の家庭の子供たちがやるので夕方5時くらいまでしか動けないんです。だから夜に動くチンピラ別働隊みたいなのがいるわけですけど、僕はどちらかと言うとそっちに憧れましたね(笑)。

 塚本晋也監督の「悪夢探偵2 Nightmare Detective 2」は12月20日公開で、CINEMA TOPICS ONLINEの紹介ページはこちら、オフィシャルサイトはこちらとなっております。


 ■12月13日(土)
遅ればせながらワセミスとフーダニット 

 わざわざコピーをお送りくださった方がありましたので、日本経済新聞の6月17日付文化面に掲載された記事をご紹介。三橋暁さんが「都の西北 推理談議50年」と題してワセダミステリクラブ(WMC)の草創を回顧していらっしゃいます。「ベレー帽の顧問」と小見出しが立てられたパートをどうぞ。

 ベレー帽の顧問
 発足は一九五七年十一月、昨年でちょうど五十周年を迎えた。これはミステリ系の大学サークルとしては、慶応の推理小説同好会に次ぐ長い歴史となるようだ。わたしが幹事長をつとめたのは三十年も前のことだが、先輩各氏や後輩諸君の話などを思い出しながら、WMCの半世紀を振り返ってみたい。
 創設のきっかけは、大学のOBでもある江戸川乱歩が「早稲田学報」に寄せた一文。「早稲田でも探偵小説愛好の教授や学生諸君に私たちも加わって、探偵趣味を語り合うクラブのようなものを作ると面白いですね」とあったという。
 これを読み、クラブ創設の熱い思いに駆られたのが大先輩の仁賀克雄さんだった。早稲田大学に合格するや、乱歩や千代有三のペンネームで探偵小説を書いていた当時文学部助教授の鈴木幸夫先生と連絡をとり、ご両人の賛同を得てたちまち発会の運びとなった。
 顧問の乱歩は、発足から数年間はちょくちょくクラブの会合に顔を出したという。トレードマークのベレー帽をかぶった乱歩が参加すると、会合場所の蕎麦屋・三朝庵の二階がいっぱいになる賑わいだったそうだ。

 ワセダミステリクラブの五十周年記念イベントは今年の2月23日、池袋のサンシャイン60で開かれたみたいです。

 パン屋のないベイカーストリートにて:ワセダミステリクラブ50周年のことなど(2月28日)

 私はワセダにはまったく、ミステリにはほとんど無縁な人間で、クラブとかそういうのも敬して遠ざけたい気分が強いのですが、「みなさんも、健康には充分気を付けてお過ごしください」というフレーズはしみじみと身にしみました。とか思っていたら同じブログに劇団フーダニットが「黒蜥蜴」を上演、という記事が。

 ▼パン屋のないベイカーストリートにて:劇団フーダニット公演「黒蜥蜴」(12月3日)

 ありゃりゃッ。公演はきょうとあしたではありませんか。知らなんだなあとか思いつつ遅ればせながらお知らせする次第なのですが、詳細は劇団のオフィシャルサイト「Whodunit」でご確認くださいとか思っていたらなんと劇団フーダニット、今年の4月20日に江戸川区船堀にある昭和モダン家というライブ居酒屋で朗読ライブをやったらしく、しかも作品は乱歩の「指」、それがまたYouTubeに掲載されていましたからありゃりゃッ、ありゃりゃッ、とか思いながらご紹介。

 ワセダミステリクラブの話題がどっかへ行ってしまいましたが、探してみたらまだネット上にありましたので読売新聞4月30日付の記事もあわせてどうぞ。

「ワセミス」濃さ薄らいでも不滅
 ミステリー好きでワセダミステリ・クラブの名を聞いたことがない人はあまりいないだろう。1957年、江戸川乱歩を顧問として早稲田大学に創設された推理小説同好会である。古くは大藪春彦、近年では北村薫、折原一、山口雅也、霞流一といった作家を輩出し、ほかにも数多くの評論家、翻訳家、編集者を出している名門サークルだ。

 実は記者も同大OBで、新入生の時にクラブの門をたたきかけたが、ラウンジにいた先輩たちの“濃さ”におそれをなして入会しなかった。28年前のことだ。

 そのワセミスの50周年を祝うパーティーが都内で開かれ、300人近くのOBや現役生らが集った。創設メンバーの翻訳家、仁賀(じんか)克雄さん(71)に聞くと、発足のきっかけは、「社会派推理に押されていた本格ミステリーのことを、思いきり語り合う仲間がほしかったから」だそうだ。1年先輩に大藪春彦がいたが、「彼のような作家志望者は、当時は珍しかった」とも。

 それでは劇団フーダニット「黒蜥蜴」公演の盛況を祈りつつ健康に気をつけてまたあしたお目にかかりたいと思います。


 ■12月14日(日)
ってなこといっちゃうんだな座談会 

 きのうお知らせいたしました劇団フーダニットの朗読ライブ、今年4月20日に江戸川区船堀の昭和モダン家で催されたイベントですが、乱歩の「指」のほかに城昌幸の「スタイリスト」もとりあげられておりました。YouTubeでご覧いただけます。

 つづいて創元推理文庫『中村雅楽探偵全集付録』について。付録といっても別冊付録で、むろん文庫サイズ、四十一ページ、10月10日発行、非売品、といった結構レアそうなアイテムです。「車引殺人事件」の原型になった同題作品と乱歩、花森安治、戸板康二による座談会「推理小説について」が収録されていて、後者は日下三蔵さんの解説「楽屋裏より」によれば戸板康二にとって「江戸川乱歩との初対面で、中村雅楽シリーズが生まれるきっかけともなった座談会」。東京創元社版世界推理小説全集の月報「推理」に掲載されたものです。一部を引いておきます。

 本社 一時推理小説なんか家庭で読むと悪い影響があるとか何とかいった説が出ましたが……。
 花森 あれは新聞がいけないんだ。少年が事件を起すと、すぐ探偵小説に読み耽ったためとか……。
 江戸川 僕なんか何回も槍玉に上って……(笑)。刑事がその家に行ってみると、僕の本が本箱に二冊あった。お前この本読んで影響うけたんだろうといわれると、そうです、ってなこといっちゃうんだな。内容なんか全然知らないのに、そうだといっちゃう。ところが逆に、探偵小説の夢は、そういう悪心の安全弁になっているんです。悪心が発散されちゃうということね、そういう害毒をこの本は発散させちゃう。われわれ作家だって書いているから大へん安全弁になっているんで、書かなかったらもっと悪いことしてるんじゃないか。読者でも同じだと思う。恋愛の進行中には、恋愛小説なんか読まないと思う。それと同じで悪事を犯そうという奴は探偵小説なんか読むのはまどろっこしいと思う。
 花森 必ず捕まるしね(笑)。

 こういう傾きはいまでもあって、たとえば千葉女児殺害事件の容疑者がたまたま「江戸川乱歩の本など怖い話が好きで」みたいなことを話していたとなると得たりやおうとばかりにマスメディアで報じられますから、「ってなこといっちゃうんだな」とか「内容なんか全然知らないのに」とか、おそらくは天国の乱歩をうんざりさせているにちがいありません。


 ■12月15日(月)
「昭和こども新聞」の紙面から 

 この手の出版物はいいだけ出回っているのであろうと推測されますが、たまたま眼についたのが『新版 ぼくらの昭和30年代新聞』。版元の紹介ページはこちら。見開き二ページを「昭和こども新聞」の紙面一号分に仕立て、プロレス、ゴジラ、鉄人28号、チロリン村とくるみの木、西鉄ライオンズ、赤胴鈴之助、スーパージャイアンツ、長嶋茂雄、月光仮面、などといった見出しが縦横に躍りまくるクロニクルです。眺めているだけで懐かしさに泣けてきそう。

 むろん乱歩の記事も収録されているのですが(詳細はこちら)、ここには乱歩とは直接関係のない昭和37年の記事を引用しておきます。

「少年クラブ」「少女クラブ」廃刊
雑誌の一時代が終わる

 講談社の「少年クラブ」「少女クラブ」といえば、子ども向け雑誌の老舗中の老舗。1914年に創刊された「少年クラブ」は48年、1923年に創刊された「少女クラブ」は39年と、それぞれ長い歴史を誇っている。
 その両誌が今年の12月号を最後に終刊することになった。「少年クラブ」は「週刊少年マガジン」に、「少女クラブ」は新雑誌「週刊少女フレンド」に吸収される形である。少年少女雑誌の王者も、週刊誌ブームには勝てなかったということか。最近は、他の月刊誌に比べると魅力的な連載が少なく、地味な印象がぬぐえなかったのも事実だが……。

 この本によれば「少年マガジン」は昭和34年3月、「少年サンデー」は同年4月の創刊で、私は親にねだって定期購読することにしたのですがさすがに二誌は無理、どちらかを選ばなければいけなかったので「少年サンデー」に軍配をあげました。創刊当初はマガジンよりもサンデーの連載陣のほうが魅力的な感じでしたし、両者のフキダシ、つまり科白を表現する風船状の囲みのことですが、あのフキダシを比較するとサンデーはちゃんと句読点が使用されているのにマガジンは句読点なしであるといった違いが気になりましたので、要するに私は幼少のころから句読点など約物のたぐいも含め日本語の表現や形式というものに敏感な人間だったということなのでしょうが、とにかくサンデーの愛読者になりました。

 ちなみに昭和34年の「昭和こども新聞」に掲載されている「気になる主な執筆陣は?」はこんな具合です。

少年マガジン
伊藤章夫『もん吉くん』
遠藤政治『冒険船長』
忍一兵『左近右近』
高野よしてる『13号発進せよ』
水島順『新吾十番勝負』
矢野ひろし『天兵童子』
山田えいじ『疾風十字星』

少年サンデー
手塚治虫『スリル博士』
寺田ヒロオ『スポーツマン金太郎』
藤子不二雄『海の王子』
益子かつみ『南蛮小天狗』
山田常夫『ローレンジャー』
横山隆一『宇宙少年トンダー』

 「ローレンジャー」とあるのは「ローンレンジャー」の誤りだと思いますが、サンデーの掲載作品はそこはかとなく記憶にとどまっていますから幼少時の記憶というのはたいしたものです。益子かつみの漫画が好きだったなあ、とか思い返すとほんとにもう泣けてきそうで泣けてきそうで。


 ■12月16日(火)
積ん読フレンズからのお知らせ 

 けものみち計画が発行するけものみち文庫の第二弾『山からお宝 本を積まずにはいられない人のために』がもうすぐ世に出ます。著者は南陀楼綾繁&積ん読フレンズ。初売りは12月30日とのことで、以後ぼちぼちと東京、仙台、名古屋、京都、大阪、倉敷、出雲、福岡などの書店に出回るようですが、いわゆる地方在住者は通販という手をつかったほうがいいみたいです。

 詳細は南陀楼綾繁さんのブログでどうぞ。

 ナンダロウアヤシゲな日々:けものみち文庫2発行のお知らせ(12月14日)

 本日はこれだけ。


 ■12月18日(木)
「K-20」ウェブ評判記 

 公開を20日に控えて映画「K-20 怪人二十面相・伝」のパブリシティがおおにぎわい、ウェブニュースを追っかけるのも大変です。

 とりあえず大阪の話題。

 Sponichi Annex:通天閣に「K-20」巨大看板!ビリケンさんが映画PR(12月18日)

 レビューいろいろ。

 nikkei TRENDYnet:『K-20 怪人二十面相・伝』 懐かしきヒーロー・怪人二十面相は大人もこどもも楽しめる冒険活劇(12月11日)
 eiga.com:「K-20/怪人二十面相・伝」に潜む、過去の名作のエッセンス(12月15日)
 スポーツ報知:愉快!痛快!アクションヒーロー誕生だ…「K-20怪人二十面相・伝」(12月16日)
 47NEWS:文句なしの面白さ 「K-20 怪人二十面相・伝」(12月16日)

 お正月映画あれこれ。

 YOMIURI ONLINE:正月映画 粒ぞろい(12月12日)
 HOLLYWOOD CHANNEL:[映画ウラ事情]第24回:もうすぐ2009年! 年末年始公開映画の傾向と注目作は?(12月15日)

 監督インタビュー。

 HOLLYWOOD CHANNEL:「K-20 怪人二十面相・伝」佐藤嗣麻子監督(12月17日)

 出演者インタビュー。

 YOMIURI ONLINE:海外での映画作りに達成感(12月10日)
 YOMIURI ONLINE:「K-20 怪人二十面相・伝」ヒーロー役の金城武(12月12日)

 ついでにこんなのも。

 4Gamer.net:あの国民的小説が推理アドベンチャーに、「江戸川乱歩の怪人二十面相DS」が12月18日に発売(12月16日)

 私が住まいします名張市には映画館とてないのですがお隣の伊賀市にはジストシネマ伊賀上野というのがあって、「K-20 怪人二十面相・伝」の上映スケジュールは12月20日から26日まで。しかし年末進行の時期ですからとても落ち着いて観ることなどできぬのではないでしょうか。


 ■12月20日(土)
続「K-20」ウェブ評判記その他 

 映画「K-20 怪人二十面相・伝」は本日公開なわけですが、おとといと同じようなことをきょうもまた。

 レビューいろいろ。

 どらく:K-20 怪人二十面相・伝(12月17日)
 cinemacafe.net:日本を代表するヒーロー映画の誕生! 金城武主演『K-20 怪人二十面相・伝』(12月18日)
 ZAKZAK:【シネナビ】「K-20 怪人二十面相・伝」(12月19日)
 毎日新聞:シネマの週末・トピックス:K-20怪人二十面相・伝(12月19日)
 読売新聞:「K-20 怪人二十面相・伝」 (日本テレビ、ロボットほか)(12月19日)

 お正月映画あれこれ。

 VARIETY JAPAN:正月興行のカギは『地球が静止する日』『K-20』(12月19日)

 出演者インタビュー。

 毎日新聞:ここちインタビュー 第19回 松たか子さん(女優)(12月19日)

 ついでにこんなのも。

 4Gamer.net:本日発売、「江戸川乱歩の怪人二十面相DS」のプロモーションムービーを4GamerにUp(12月18日)

 さらについでにもうひとつ、乱歩作品を原作とした漫画のアンソロジー『江戸川乱歩〜黒蜥蜴』が発行されました。詳細はこちら