編輯局から
新青年 大正12年3月号 4巻4号 1923年3月1日
■次号は創作探偵小説号とした。但し一般青年諸君の為に有益にして興味深き記事を精選し掲載するは勿論であるが、高級なる海外探偵小説の紹介を以て任ずる本誌としては、我が読書界に純然たる探偵小説を提供するも亦当然の責なりと信じ、この新しき試みに出でたのである。
■創作号に載する江戸川氏の「二銭銅貨」は予告にも述べたる如く、海外作家の作品と伍して何等の遜色なき傑作である。記者は、もし斯くの如き作品が続々としてわが文壇に現るゝならば、海外の作品を飜訳し紹介するの必要はないと敢て言ふ。尚ほこれが発表についてはこの作を激賞推挙されたる小酒井博士の批評を仰ぎ併せ掲げることゝした。耳ならず、同号には既に探偵小説の作家として文壇に打つて出でた二三氏も執筆せらるゝ筈である。幸ひに探偵小説愛読者諸氏の期待を満すを得んか。
底本 「新青年」復刻版 大正12年(第4巻)合本2 本の友社 2000年3月10日
註記 奥付のページに掲載(240頁)。全五段落のうち第三、四段落。執筆は「新青年」編集人の森下雨村か。