一、土蔵
「ばんばんテンポあげて行きましょか」
「いきなりなんですねん」
「いやこの『四季どんぶらこ』は三か月に一回の発行なんですけど」
「季刊の雑誌ですからね」
「三か月のあいだにネタが次々たまってきてしゃあないわけです」
「最近またとくに世の中の動きが早いですから」
「せやから余計なくすぐり挟まんとばんばん行かんとネタが消化できません」
「くすぐり挟むのは君やないですか」
「とにかくきょうはばんばん行こかと」
「名張市民のみなさんにお知らせせなあかんこともあるでしょうし」
「名張市の上層部を叱り飛ばしたらなあかんこともありますからね」
「君またそうゆうこといいますけど」
「しかしみなさんには先日来いろいろとご心配をおかけしましたけど」
「急にあらたまってなんの話ですねん」
「東京にある乱歩邸の土蔵がなんとかなりそうなんです」
「このあいだ君がゆうてた土蔵の危機の話、保存のめどがついたんですか」
「立教大学が乗り出してくれるそうで」
「乱歩は立教の出身ですか」
「出身は早稲田なんですけど池袋の乱歩邸ゆうのが立教のすぐ横にありまして」
「お隣さんですか」
「ご近所のよしみゆうやつですわ。へえ土蔵でっか、ほなまあなんとかさしてもらいまっさてなもんでしょうね」
「なんや留守するときに宅急便の受け取り頼むみたいな話ですけど」
「くわしいことはまだ判りませんけどとにかく現状で保存されるみたいです」
「けど君そうなるとですよ」
「こらまあじつにおめでたいこっちゃがなとかゆうたりもしまして」
「おめでたいこっちゃがなやないがな」
「君、舌を噛まんようにしなさいね」
「とかゆうたりもしましてやないがな」
「君がそうゆうふうにいちいちツッコミを入れてくるから結果としてこの漫才の情報量が少ななってしまうんです」
「名張市はいったいどないしますねん」
「何が何やら私には」
「名張市の乱歩記念館建設構想は結局どないなるねんと聞いとるねん」
「でも実際の話、この期に及んで咎め立てしてみてもしゃあないですからね」
「咎め立てをするとかそうゆう問題やないやろ」
「よっしゃ判った。判りました。ばんばんテンポあげて次の話題行きましょ」
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