二〇〇三年を回顧する
「二〇〇四年も三月を迎えまして」
「早いもんですな実際」
「曙がボブ・サップに負けたのはまだつい最近のことみたいですけど」
「去年の大晦日のことですからつい最近といえばつい最近ですがな」
「年明け以降にも自衛隊がイラクへ行ったり牛丼が姿を消したり」
「いろんなことがありましたね」
「イラクでもどこでも行ってしまえ」
「どないしました」
「そろそろ牛丼みたいに消えたらどや」
「いったい何がいいたいんですか」
「多くの人からそんなふうに思われてる人間に限っていつまでも図々しくのさばってますから困ったもんですけど」
「そんな人間もいてますね。というか君がそうゆう人間なんとちゃいますか」
「人のことはどうでもええんですけどとにかく二〇〇四年が始まりました」
「二〇〇四年といいますと」
「もちろんあれしかありません」
「官民合同の『生誕三六〇年芭蕉さんがゆく伊賀の蔵びらき』事業ですか」
「じゃーん」
「え」
「しょうもないことに税金つかうのはやめましょうキャンペーン」
「君もええだけしつこいですな」
「このキャンペーンに関して読者の方にひとことお断りをしたいんですけど」
「やっぱりお断りが必要でしょうね」
「過去二回にわたってこの『四季どんぶらこ』でキャンペーンを展開しまして」
「君が無茶苦茶ゆうてただけですがな」
「それでもキャンペーンはいっこうに終わる気配を見せませんでした」
「君が喋りすぎるからやないですか」
「実際のところ毎回わずか六ページではいつまでたっても埒があきません」
「そうゆう割り当てなんですから」
「そこで『伊賀百筆』にお願いして」
「『伊賀百筆』ゆうのは上野市で発行されてる地域雑誌なんですけど」
「今度出る号で原稿用紙二百枚分の大々的なキャンペーンを実施いたしまして」
「問題は掲載されるかどうかやがな」
「なにしろ『伊賀百筆』の誌面七十七ページを独占する漫才ですからね」
「非常識な話ですがな実際」
「でもぜひ掲載していただきたいなと」
「『伊賀百筆』と『四季どんぶらこ』はどちらも三月下旬発行の予定ですから」
「あわせてお買い求めいただければ裏のちょんべさんも大喜び」
「裏のちょんべさんて誰やねん」
「とにかくそうゆうわけで『生誕三六〇年芭蕉さんがゆく秘蔵のくに伊賀の蔵びらき』の話題はひとまず終了しまして」
「次は何また要らんこと喋りますねん」
「いやその前にきょうは読者の方にもうひとつだけお知らせがあるんです」
「なんですねん」
「じゃーん」
「え」 「名張市立図書館の江戸川乱歩リファレンスブック3『江戸川乱歩著書目録』がついに完成いたしました」
「その話はもう『伊賀百筆』でもやらしてもらいましたがな」
「この際ですから『四季どんぶらこ』でも宣伝さしてもらいます。すでに乱歩研究の基本資料として高い評価をいただいている『乱歩文献データブック』『江戸川乱歩執筆年譜』につづく第三弾として乱歩の著書千四百二十四点のデータをまとめたのが『江戸川乱歩著書目録』です。申し込み方法などの詳細は徳島県の小西昌幸さんによる次の記事でどうぞ」
2003年の大偉業、名張市立図書館/『江戸川乱歩著書目録』ついに完成
「創世ホール通信/文化ジャーナル」2002年9月号で三重県の名張市立図書館の乱歩資料集刊行事業についてご紹介した。そこでも予告されていた資料集『江戸川乱歩著書目録 江戸川乱歩リファレンスブック3』が11月下旬ついに完成し、同館では12月9日から通信販売の注文を受け付けている。北島町立図書館にも寄贈いただいたが、非常に美しい造本と緻密な内容で渾身の力作というべき立派な資料集として仕上がっている。それはひとえに編集担当である同館嘱託・中相作氏の功績である。巻頭には「ふるさと発見五十年」という中氏の長文の論考が収録されているが、これも名張市と乱歩の関わりを実に手際よくまとめた屈指の名文といってよいと思う。
中氏が我が国トップ・クラスの乱歩研究ホーム・ページ「名張人外境」を主宰されていることなどは、「創世ホール通信」当該号をお読みいただきたいが、同サイトで中氏は、この本を独特のシニカルな文体で次のように自己紹介しておられる。
一●江戸川乱歩の生誕地にして深刻な財政硬直化に直面する三重県名張市が乱歩を愛するすべての人のために血税を注ぎ込みました。
二●前二巻にひきつづいて平井隆太郎先生のご監修と全面的なご協力をたまわり、巻頭には新保博久さんの書き下ろしエッセイ「池袋十二年」を頂戴いたしました。
三●同じく前二巻にひきつづき、戸田勝久さんの美麗な装幀で書籍本体、函、扉、見返しを飾っていただきました。
四●『心理試験』が探偵小説ファンを瞠目させた1925年から『貼雑年譜』完全復刻版が乱歩ファンを驚喜させた2001年まで、七十七年のあいだに刊行された乱歩の著書千四百二十四点のデータを一巻にまとめました。
五●(略)巻末には狂気と妄執が凝り固まったかのごとき索引を附してリファレンスの便に供しました。
『江戸川乱歩著書目録 江戸川乱歩リファレンスブック3』、A5判、310頁、ハードカバー、トンネル函。本体価格3000円+税150円。
郵送注文方法は氏名と住所を明記の上、現金書留か郵便為替で名張市立図書館宛てに代金3150円+送料340円合計3490円を送ること。《名張市立図書館 518−0712 三重県名張市桜ケ丘3088−156 電話0595・63・3260 FAX0595・64・1689》
すばらしい人材に恵まれた乱歩と名張市の幸福をしみじみと思う。
──北島町立図書館・創世ホール発行「創世ホール通信/文化ジャーナル」二〇〇三年十二月号(一〇七号)から転載
「この記事かて『伊賀百筆』にそのまま載せさしてもらいましたがな」
「この際ですから『四季どんぶらこ』の読者のみなさんにもお読みいただいてご購入いただけたらありがたいなと」
「名張市立図書館で通信販売も受け付けてるそうですからね」
「名張市民の血税約四百万円を注ぎ込んだ事業ですからできるだけ有効に活用してもらいたいものだと思っております」
「でも今度の本もあちこちでご好評をいただいてるみたいやないですか」
「地元メディアでは清水信先生に中日新聞で紹介していただきまして」
同じく、〈本と人〉という形で、強い愛着を示した研究書が続刊されていて、それは次の通りである。
三重県名張市立図書館刊行の『江戸川乱歩著書目録』が一つ。処女作から没後に至る乱歩の全著作の詳細にわたる記録で、資料としても完璧と言ってもよく、編集・中相作、監修・平井隆太郎、協力六十数氏というスタッフに拍手を送りたい。──中日新聞一月二十七日付「中部の文芸」
「君も拍手送ってもろてますやないか」
「それから藤田明先生には朝日新聞でお世話になりました」
名張市立図書館刊『江戸川乱歩著書目録』は乱歩シリーズの3冊目。乱歩の著書900点、その作品の収録522点の書誌データである。中相作(名張)はじめ関係者の協力の賜物、県内から全国発信の好例と言えよう。──朝日新聞二月四日付三重版「展望 三重の文芸」
「じつにありがたいお言葉ですね」
「おかげさまで二〇〇二年には名張市主催の探偵講談東京公演も含めた江戸川乱歩ふるさと発見五十年記念事業『乱歩再臨』を開催することができましたし」
「乱歩の生誕地として名張市はなかなかようやったゆう評判でしたけど」
「二〇〇三年には『江戸川乱歩著書目録』を無事に刊行することもできまして」
「君もう何も思い残すことないみたいですけどまだ何かやることあるんですか」
「あとはまあ一度でええからイラクへ行って牛丼を食べてみたいなと」
「あるかいなそんなもん」
「ほな国がイラクだけにイクラ丼でも」
「ないっちゅうねん」
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