第一部 迷走篇
あれほどゆうてやったというのに
「ぱんぱかぱーん。ぱぱぱ。ぱんぱかぱーん」
「なんですねんいきなり大きな声で」
「今週のハイライトぉッ」
「ほんまにやかましい男やな君は」
「さきごろ逝去なさいました横山ノック師匠を心から追悼いたしまして」
「そうゆうたら五月三日でしたか。残念なことにお亡くなりになりました」
「五月の十五日にははな寛太師匠まで」
「まだ六十一歳という若さでね」
「相方のいま寛大師匠が『ちょっと待ってね』ゆうても寛太師匠よう待たんと逝ってしまいはったわけなんです」
「いくら漫才でもそんな不謹慎なことゆうとったらあかんがな」
「それで今回はノック師匠をしのんで漫画トリオふうの漫才で行きたいなと」
「漫画トリオゆうたかて若い人はご存じないでしょうけど」
「パターンとしてはごく単純なんです」
「かなりテンポの速い漫才でしたね」
「僕が『ぱんぱかぱーん』ゆうたら君が『今週のハイライト』と受けます」
「そのあと時事的な問題をとりあげたニュース漫才になるのがパターンでした」
「しかし僕らの漫才もひさしぶりです」
「ずいぶんブランクがありました」
「二年四か月ぶりですからね」
「そないなりますか」
「最後の漫才は二〇〇五年三月でした」
「題材はどんなことでしたかいな」
「ぱんぱかぱーん。ぱぱぱ。ぱんぱかぱーん」
「今週のハイライト」
「名張まちなか再生プランの素案がまとめられました」
「いったいどんなプランですか」
「あの死に絶えたような名張旧町地区を再生させるのがプランの目的です」
「どないして再生させますねん」
「プランの目玉は新町の細川邸を改修して歴史資料館をつくることです」
「結構なことですがな」
「しかし問題がひとつありまして」
「問題といいますと」
「歴史資料館をつくっても展示する歴史資料がどこにもないんです」
「そんなあほな」
「みたいな感じで時事ネタにオチをつけていくのが漫画トリオの漫才でした」
「それで君はその素案に対して漫才形式のパブリックコメントを提出したわけですけどあれ結局どうなったんですか」
「さっぱりわやですわ」
「どうゆうことですねん」
「ぱんぱかぱーん。ぱぱぱ。ぱんぱかぱーん」
「今週のハイライト」
「名張まちなか再生プランは素案のとおり正式に決定されました」
「それやったらパブリックコメントを出した意味がありませんがな」
「僕が指摘した問題は完全に無視されてしまいましてね」
「なんでですねん」
「名張市に僕のゆうことを理解できる職員が存在してなかったからでしょうね」
「そんなことないでしょうけど」
「僕の指摘はプランの不備をついたとても重要なものやったんですけど」
「たしかにあのプランには見すごしにできない問題があるみたいでした」
「展示品もないのに細川邸をリフォームして歴史資料館つくれゆうんですから」
「話としてはかなり無理があります」
「致命的な不備ですね。当時流行していたリフォーム詐欺みたいな話でした」
「詐欺ゆうてしもたらあきませんけど」
「しかも問題はもうひとつありまして」
「なんでしたかいな」
「桝田医院第二病棟」
「そうそうそうでした。江戸川乱歩の生誕地碑が建ってるとこですね」
「名張市があそこの土地建物を所有者の方からご寄贈いただきまして」
「乱歩のことで活用してくださいと」
「ところがプランではそのことにいっさいふれられていませんでした」
「あれはけったいな話でしたね」
「寄贈があったのは二〇〇四年十一月のことやったんですけど」
「プランを策定してる最中でした」
「にもかかわらず桝田医院第二病棟のことがプランにはまったく出てこない」
「なんでそうゆうことになりますねん」
「プランを策定した連中があほばっかりやったからでしょうね」
「君すぐに人のことあほゆうけどね」
「歴史資料もないのに歴史資料館つくれゆうような人間はあほに決まってます」
「いきなり決めつけたらあかんがな」
「そのうえ桝田医院第二病棟がむこうから飛び込んできてくれたゆうのにから」
「プランの目玉になる素材でしょうね」
「それをプランに活かせへんゆうのやったらそんなもんあほに決まっとるわい」
「決まっとるかどうかは別にしてそのプランいったい誰がつくったんですか」
「名張地区既成市街地再生計画策定委員会のみなさんです」
「どんな委員会ですねん」
「そこらの関係機関団体からメンバー適当に寄せ集めてきただけの委員会です」
「関係機関団体といいますと」
「名張地区まちづくり推進協議会。名張青年会議所。名張市老人クラブ連合会。名張文化協会。川の会・名張。名張商工会議所。名張市社会福祉協議会。国土交通省近畿地方整備局木津川上流河川事務所。三重県伊賀県民局。名張市PTA連合会。名張市区長会」
「なんやもうオンパレードですな」
「三重大学の先生と名張市議会議員の先生にも加わっていただきまして」
「なんとも豪華な顔ぶれですけど」
「しかも委員会はまだ出てくるんです」
「といいますと」
「ぱんぱかぱーん。ぱぱぱ。ぱんぱかぱーん」
「今週のハイライト」
「二〇〇五年六月に名張まちなか再生委員会が発足いたしました」
「今度は何をする委員会ですねん」
「名張まちなか再生プランを具体化するための委員会です」
「プランをつくった策定委員会はどうしたんですか」
「あっさり絶滅してしまいました」
「君そんな恐竜やないんですから」
「けど絶滅と表現するしかないんです」
「どうゆうことですねん」
「ぱんぱかぱーん。ぱぱぱ。ぱんぱかぱーん」
「今週のハイライト」
「名張まちなか再生委員会が歴史資料館構想を白紙に戻してしまいました」
「いったい何をやってますねん」
「委員会の議事録によりますと二〇〇五年の七月に《細川邸は歴史資料館ではなく“(仮称)初瀬街道からくり館”を基本テーマとする》と決定されました」
「それやったら名張まちなか再生委員会の結成直後のことですがな」
「僕の指摘した致命的な不備がいきなり表面化してきたわけです」
「歴史資料館はやっぱり無理でしたか」
「しかしこれはおかしなことなんです」
「おかしなことといいますと」
「プランをええように変更する権限がまちなか再生委員会にあるのかどうか」
「なるほど」
「名張まちなか再生プランは市議会のチェックとか市民のパブリックコメントとかそうゆうハードルをひととおりクリアして決定されてるわけなんです」
「あくまでも細川邸を歴史資料館にするというプランにOKが出たわけですね」
「ところが細川邸を“初瀬街道からくり館”にいたしますという話はそうしたハードルを全然クリアしてないんです」
「ちょっとまずいかもしれません」
「ほかにもまずいことがあるんです」
「どこにありますねん」
「桝田医院第二病棟」
「あそこがなんぞしたんですか」
「あそこは何もしませんけど名張まちなか再生委員会がまた勝手な真似をね」
「何をしました」
「名張まちなか再生プランにはひとことも記されていない桝田医院第二病棟の整備について協議を始めたんです」
「いつのことですねん」
「委員会の議事録によりますと二〇〇五年の七月に《桝田医院別館第2病棟の利活用にあたっては江戸川乱歩をテーマとする必要がある》みたいなことがしゃあしゃあと検討されてましてね」
「それこそ詐欺みたいな話ですがな」
「僕がパブリックコメントで桝田医院第二病棟のことをプランに盛り込めと指摘したのを無視したあげくこのざまです」
「たしかに指摘しましたからね」
「指摘したのに無視する。無視したのに協議検討の対象にする。こんなもんインチキとしかいいようがありません」
「なんでこんなことになったんですか」
「名張市に僕のゆうことを理解できる職員が存在してなかったからでしょうね」
「いやそれはもうええねん」
「ぱんぱかぱーん。ぱぱぱ。ぱんぱかぱーん」
「今週のハイライト」
「名張まちなか再生委員会の事務局から連絡がありませんでした」
「連絡がありませんでしたてそれいったいどんなニュースですか」
「僕は委員会の事務局へ行ってこんなインチキあかんやないかと迫りました」
「君も好きですねそうゆうことが」
「好きでもないんですけどあのプランは策定委員会がみずからの主体性と責任に立脚して決定したものですから」
「内容はともかくとして形のうえではそうですね」
「ところが再生委員会はその決定に重きを置こうとしないんです」
「プランの内容を自分らだけの判断で好き勝手に変更してるわけですから」
「しかも関係者の誰ひとりとしてそのことに疑問を抱かないんです」
「なんでですねん」
「なあなあ体質といいましょうか。ずぶずぶ構造といいましょうか」
「なあなあずぶずぶで話が進むんやったら委員会つくる意味がありませんがな」
「主体性とか責任とかゆう言葉は名張市には存在してないのかもしれませんね」
「どないしたらよろしねん」
「まずは策定委員会を再招集してプランを練り直すことが必要でしょう」
「それやったらすっきりしますけど」
「そこで僕は事務局に対して策定委員会を再招集するように提案しました」
「いつごろのことですか」
「二〇〇五年の十月でした」
「どないなりました」
「ですから事務局からは連絡がありませんでしたとお伝えしております」
「それがさっきのぱんぱかぱんですか」
「いつまで待っても策定委員会を再招集する話が前に進みません」
「あきらめたらどないですか」
「そこで一計を案じまして」
「なんぞ手がありましたか」
「まちなか再生委員会の委員長さんにお会いしたいと事務局に申し出ました」
「委員長さんにお願いするわけですか」
「再生委員会の委員長さんに策定委員会の再招集のことでお会いしたいと再生委員会の事務局にお願いしたわけですね」
「またややこしい話ですな」
「委員長さんにお目にかかることができたのは二〇〇六年一月のことでした」
「委員長さんどないゆうてはりました」
「策定委員会の再招集を早急に検討するよう事務局に指示してはりました」
「一歩前進しましたがな」
「ぱんぱかぱーん。ぱぱぱ。ぱんぱかぱーん」
「今週のハイライト」
「名張地区既成市街地再生計画策定委員会は再招集されないことになりました」
「いっこも前進してませんがな」
「再招集はできませんゆう結論が二〇〇六年の五月に伝えられてきまして」
「その結論が出るまでに半年以上もかかってる計算になりますけどね」
「再招集できないゆうんですから名張地区既成市街地再生計画策定委員会は絶滅してしもたと見るしかないでしょうね」
「せやから恐竜やないゆうのに」
さっぱりわけがわからんやないか
「とにかくもう名張まちなか再生プランゆうのはインチキずくめなわけでして」
「ずくめゆうこともないでしょうけど」
「市民の目が届かない密室のなかで細川邸と桝田医院第二病棟のことが勝手に協議検討されてたわけですから」
「たしかに市民は何も知りません」
「僕は名張まちなか再生委員会の協議内容を名張市のホームページで情報公開するように提案もしてみたんですけど」
「あきませんでしたか」
「ぱんぱかぱーん。ぱぱぱ。ぱんぱかぱーん」
「今週のハイライト」
「『検証──名張のまちなか再生は進んでいるのか?』」
「なんですねんそれ」
「『広報なばり』の二〇〇六年七月四週号にそんな記事が掲載されました」
「ようやく情報開示ですか。いったい何が書いてありました」
「《旧細川邸を改修して「(仮称)初瀬ものがたり交流館」を整備します》」
「え。細川邸は“初瀬街道からくり館”になるのとちがうんですか」
「あの委員会の場合いったん決定されたことでも平気でひっくり返りますから」
「なんでですねん」
「決定そのものが単なる思いつきの産物ですしそのうえなあなあのずぶずぶで」
「そしたら桝田医院第二病棟は」
「《江戸川乱歩生誕地碑のある桝田医院第2病棟跡と「(仮称)初瀬ものがたり交流館」とを有効活用することにより歴史文化の薫る空間づくりを行います》」
「君がいくらインチキやと指摘しても名張市の広報に載ってしまいましたがな」
「つまり名張市が名張まちなか再生委員会のインチキを追認したわけです」
「そうゆうことになりますか」
「二〇〇六年六月に開かれた名張まちなか再生委員会の総会で強引にそうゆうことにしてしもたんです」
「インチキにお墨付きを与えましたか」
「名張市もとうとう共同正犯ゆうことになってしまいました」
「いや何も犯罪者やないんですから」
「けどいくらインチキを追認してもあかんものはあかんわけです」
「何があきませんねん」
「話が前に進みません」
「どうゆうことですか」
「たとえば細川邸の実施設計ひとつとってみても先送りにつぐ先送りでした」
「いろいろ事情はあるんでしょうけど」
「ぱんぱかぱーん。ぱぱぱ。ぱんぱかぱーん」
「今週のハイライト」
「二〇〇五年十月になっても細川邸整備の実施設計は行われませんでした」
「どうして二〇〇五年十月なんですか」
「名張まちなか再生委員会の結成総会で実施設計の期限が決められてたんです」
「二〇〇五年の十月までに実施設計が行われることになってたわけですか」
「ぱんぱかぱーん。ぱぱぱ。ぱんぱかぱーん」
「今週のハイライト」
「二〇〇六年三月になっても細川邸整備の実施設計は行われませんでした」
「二〇〇五年度中には無理でしたか」
「ぱんぱかぱーん。ぱぱぱ。ぱんぱかぱーん」
「今週のハイライト」
「二〇〇六年十二月になっても細川邸整備の実施設計は行われませんでした」
「それいつまでかかりますねんな」
「ぱんぱかぱーん」
「やかましいわ。さっきから聞いとったらぱんぱかぱんぱかとあほみたいに」
「どうかお喜びください」
「なんですねん急に」
「二〇〇七年三月になってようやく細川邸の実施設計が終了いたしました」
「やっと終わりましたか」
「関係者一同大喜びしております」
「しかしこれでとうとう細川邸が“初瀬ものがたり交流館”ゆうことになってしまうわけなんですね」
「それが君じつにややこしい話でして」
「ややこしいのには慣れましたけど」
「“初瀬街道からくり館”とか“初瀬ものがたり交流館”とかしょうもない思いつきがいろいろあったんですけど」
「まだなんぞもめてるんですか」
「ぱんぱかぱーん。ぱぱぱ。ぱんぱかぱーん」
「今週のハイライト」
「整備が済んだ細川邸は“やなせ宿”という名称になることが決まりました」
「どうゆうことですねんそれ」
「僕に尋ねられても困るんですけどつい最近そんなふうに決まったみたいです。産経新聞の伊賀版に出てたんですけど」
「その“やなせ宿”ゆうのは何をする施設なんですか」
「それがまだようわからんわけでして。新聞にも載ってませんでしたし」
「“やなせ宿”ゆう名前まで決まってるのになんでわかりませんねん」
「イベントの会場に使用するとか飲食物を提供するとか聞きおよびますけど」
「せやからどうゆう施設ですねん」
「要するに細川邸をどう活用するのかがいまだに決まってないんでしょうね」
「実施設計も終わったいまごろになってそんなことゆうてたらあかんがな」
「けどあかんのは最初からなんです」
「最初からといいますと」
「ぱんぱかぱーん。ぱぱぱ。ぱんぱかぱーん」
「今週のハイライト」
「名張地区既成市街地再生計画策定委員会が発足いたしました」
「またその委員会かいな」
「発足は二〇〇四年六月のことやったんですけどそもそもこれがあかんかった」
「どこがあかんかったんですか」
「ゆうても名張まちなかの再生に挑戦する委員会なんですからねこれは」
「それがどないしました」
「名張市の中心として長く栄えた商業地域がいまやシャッターストリートになってさびれきってるわけなんです」
「名張だけやのうて全国いたるところでそうゆう事態が深刻化してますけど」
「衰退した中心市街地をふたたび活性化させる特効薬なんか何もないんです」
「そんなもんが見つかってたら誰も苦労はしませんからね」
「それを承知であえて困難な道に踏み出そうというのがこの委員会なんです」
「ある意味いばらの道でしょうね」
「その委員会を結成するにあたってそこらのまちづくり推進協議会とか青年会議所とか老人クラブとかPTAとかから適当にメンバー集めてきてどないする」
「それはまあそうですけど」
「みんなで集まってご町内親睦カラオケ大会団体の部でもやるんですか」
「けど行政が委員会つくる場合はそうゆう人選が妥当なとこなんでしょうね」
「まったく妥当ではなかったということは委員会の策定した名張まちなか再生プランが雄弁に物語ってるわけですけど」
「そらプランには問題がありますけど」
「かりに百歩譲ってああゆう人選しかできなかったとしても道はあるんです」
「道といいますと」
「ちゃんとしたプランをつくる道です」
「どないしますねん」
「歴史資料館をつくるのであればその道の専門家に助言をお願いするべきです」
「それは必要でしょうね」
「そうしたら歴史資料館なんかつくれないゆうことがすぐにわかったはずです」
「それをしてなかったんですか」
「してなかったから歴史資料館つくれとか無茶苦茶なプランになったわけです」
「けどいちおう三重大学の先生にも加わっていただいてたわけですから」
「でも工学部の先生ですから」
「そうなんですか」
「これはパブリックコメントでも指摘したことなんですけど結局この話は最初に細川邸ありきゆう筋書きなんです」
「それで町屋改修の専門知識がある工学部の先生に委員になっていただいたと」
「委員ゆうか委員長をお願いしまして」
「それやったら改修そのものにかんしては大船に乗ったようなもんですけど」
「改修よりもまず細川邸をどんな方向で活用するのか。それが重要問題です」
「それを考えることができなかったと」
「細川邸は歴史資料館にでもしときましょかみたいな月並みきわまりない思いつきだけで話が終わってしまいました」
「それもまたすぐに変更されましたし」
「しかも問題があったのは再生計画策定委員会の人選だけではないんです」
「といいますと」
「ぱんぱかぱーん。ぱぱぱ。ぱんぱかぱーん」
「今週のハイライト」
「名張まちなか再生委員会が発足いたしました」
「そっちの委員会もあきませんのか」
「名張市にある委員会と名のついた組織はおそらくみんなペケでしょうね」
「再生委員会のどこがペケですねん」
「僕まちなか再生委員会ができたとき名張市役所にある再生委員会の事務局に行って話を聞いてきたんですけど」
「なんでそんなことしますねん」
「そらやっぱり名張まちなか再生プランには細川邸を歴史資料館にして《江戸時代の名張城下絵図や江戸川乱歩など名張地区に関係の深い資料を常設展示する》とか書かれてありましたから」
「なるほど乱歩の線ですか」
「それで再生委員会のメンバー表も見せてもろたんです」
「どないでした」
「ぷっ」
「なんですねん」
「思わずぷっと吹き出してしまうほどペケなみなさんのお名前がずらずらと」
「君またそうゆう問題発言を」
「けど乱歩のこともまちなかの歴史もご存じないようなみなさんばかりでして」
「それで君どうしたんですか」
「この委員のみなさんに乱歩にかんする最低限の知識を教えてさしあげたいのでそうゆう場を設けてくれませんかと」
「またそんな偉そうなことを」
「でも乱歩についてなんにも知らんかったら協議もへったくれもないですから」
「それはそのとおりですけど」
「策定委員会にも再生委員会にも大きく欠落していたものが何かわかりますか」
「なんですねん」
「まず名張旧町地区の歴史と現状を深く理解することです」
「それが欠落してたんですか」
「そしてその理解に立脚した名張まちなかへの愛着。それが必要やったんです」
「理解も愛着もありませんでしたか」
「乱歩のこともおんなじなんです」
「理解と愛着が必要であると」
「ぱんぱかぱーん。ぱぱぱ。ぱんぱかぱーん」
「今週のハイライト」
「名張まちなか再生委員会の事務局から委員会側の意向が伝えられてきました」
「どんな意向でした」
「現段階では乱歩にかんして外部の人間の話を聞く考えはない」
「えーッ」
「あほなんですね要するに」
「けど外部の人間の話を聞く考えはないてそんなこと普通はいいませんやろ」
「せやから普通やないんです」
「普通やなかったらなんですねん」
「あほですねん」
「いやあほあほゆうたらあきませんけどさすがにこれはひどすぎますがな」
「連中は自分たちが委員として何をするべきなのかさえ理解できてないんです」
「策定委員会も再生委員会も外部の人間から教えを乞うのが嫌いなんですかね」
「自分たちはただのあほであるという事実に向き合うのが怖いんでしょうね」
「しかし困った話ですがな」
「ぱんぱかぱーん。ぱぱぱ。ぱんぱかぱーん」
「今週のハイライト」
「名張市は多くの課題を抱えています」
「重要課題が山積してます」
「たとえばこの日中国交回復問題」
「それが名張市に関係あるんですか」
「ほかにも日中国交回復問題とか」
「だいたいいつの時代の話ですねん」
「そうかと思うと日中国交回復問題」
「そればっかりですがな」
「大切なのは日中国交回復問題でして」
「君いったいなんのつもりやねん」
「寛太寛大師匠の十八番を再現して寛太師匠のご冥福をお祈りした次第です」
「それはそれで結構ですけど名張まちなか再生プランはどないなりますねん」
「それについては僕に考えが」
「その考えを聞かせてもらいましょか」
「ちょっと待ってね」
「それも寛大師匠のパクリやがな」
「ジャストモーメントプリーズ」
「ええかげんにせえ」
(住民監査請求をめざす名張市民)
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