第十五話
一寸法師【七巻】

 マキノプロダクション東京派作品

大阪/東京/朝日新聞所載 

 原作  江戸川乱歩
 脚色  直木三十五
 監督  志波西果
 技師  酒井健三

   ──配  役──
 明智小五郎  石井 漠
 一寸法師   栗山茶迷
 北島春雄   保瀬 薫
 山野夫人   白川珠子
 蕗谷運転手  谷 隼人
 山野三千子  鈴木芳子

   ──梗  概──
 不具に生れた不幸の世を呪ふ一寸法師は山野家の主人大五郎が誤つて娘を殺したと信じたのを好機にその美しい夫人を脅迫して己の物にせんとし種々の手段を講じて迫つてくる。貞淑な夫人はそれを悩みつゝも健闘してゐるのを名探偵明智小五郎は明快なその頭脳にて女中小松を令嬢の変装と看破してお雪を利用して苦心の結果指紋による犯人の解釈をなし人形店より端緒を引立してキユーピー人形の中より死体を発見するといふ江戸川氏の傑作

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 北島春雄が早朝浅草公園で、奇怪な一寸法師が、生々しい女の片腕を持つてうろついてゐるのを見た。

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 明智は山野夫人から頼まれて家宅捜索をすると、ピアノの中から、カンザシを見つけた。

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 明智は更に、家の者全部集めて訊問したが、何うしても、たしかな手がかりは得なかつた。

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 明智の探偵は、そのころ方針が定まつた様子である。

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 山野夫人のなやみは、いよいよ深くそれからそれとつづいた。

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 一寸法師が、安川といふ人形師の手先となつて盗みを働いてゐた。

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 北島は恋人小松を失つて、やはり探索してゐた。

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 一寸法師は頼まれてその小松の死体を墓地に埋葬することになつたが、彼は美しい女の姿をみると………。

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 それを知つた明智は、人形師安川の家を訪れた。三千子はある嫉妬から小松を殺して、小松に自ら変装してゐるのであつた。

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 すべてが明かになつた。泣き悲しむ三千子を、夫はかき抱いた。

【番犬追記】

 誌面のコピーは藤原正明さんから頂戴いたしました。誌面は7段組みで、見開き2ページの最上段と最下段、あわせて4段をつかって「一寸法師」の映画紹介が掲載されています。いかにも怪しいスチール写真全10点、画質は良くありませんがお楽しみいただければと存じます。映画「一寸法師」はこの年3月25日に公開されましたが、それにしても、探偵映画の紹介でここまでネタを割ってしまっては……。

掲載1999年12月16日
初出・底本昭和2年(1927)/「週刊朝日」4月3日号(11巻16号)/p.8−9