佐野洋 |
平成15・2003年−平成20・2008年 |
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ミステリーとの半世紀 | |||
乱歩さんとのこと(三) こんなこともあった。『週刊明星』が、江戸川乱歩監修の「推理教室」なるものを企画したことがあった。 若手の推理作家に、小説形式のクイズを書いてもらおうという企画だった。 最後に原稿料の話になって、乱歩さんが、 「クイズは普通の小説より難しいのだから、原稿料はその分、はずんでくれなければ困る。わたしの場合は、累進課税でほとんどを税金に取られてしまうのだから、その分を書き手の諸君に回すとして、みんな一律、一枚三千円ということでどうだろう」 私は驚いて乱歩さんの顔を見た。『宝石』の原稿料は、やっと三百円になったばかりである。その十倍とは、ふっかけ過ぎではないのか。 ところが、編集長は、即座に、 「わかりました。そうさせていただきます」 と、頭を下げた。 学生時代の雑誌仲間で、中央公論社に勤めていた金子(のちに作家・神山圭介)に会ったとき、その話をすると、 「まあ、週刊誌は月刊誌より、稿料が高いけれど、それでも一枚三千円というのは、三島由紀夫並みだぜ」 と、驚いていた。 |
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■初出:本の窓 平成15・2003年5月号−平成20・2008年6月号 ■底本:佐野洋『ミステリーとの半世紀』小学館 平成21・2009年2月25日 ■掲載:2009/03/12 |
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