昭和6・1931年
37歳

1月
1月1日 木曜日
「朝日」新年号(第三巻第一号)の発行日。「盲獣」第一回が掲載された。連載は翌年三月まで。
「新青年」新春特大号(第十二巻第一号)の発行日。「打てば響く 一九三一年問答録」にアンケート回答が掲載された。
1月15日 木曜日
博文館から出版された『猟奇の果』の発行日。
1月
同居していた旧友の二山久と口論し、二山が去った。探偵小説四十年「昭和六年度の主な出来事」]

2月
2月1日 日曜日
「朝日」二月号(第三巻第二号)、「キング」二月号(第七巻第二号)、「講談倶楽部」二月号(第二十一巻第二号)の発行日。いずれも連載を休載した。

3月
3月12日 木曜日
「報知新聞」夕刊に「吸血鬼」第百三十八回が掲載され、完結。
3月28日 土曜日
博文館から出版された『吸血鬼』の発行日。

4月
4月1日 水曜日
「富士」四月号(第四巻第四号)の発行日。「白髪鬼」第一回が掲載された。連載は翌年四月まで。
4月5日 日曜日
「文芸倶楽部」探偵小説と滑稽小説号(第三十七巻第五号)の発行日。「目羅博士の不思議な犯罪」が掲載された。
4月28日 火曜日
「全集の編輯について」を脱稿。初出末尾]

5月
5月3日 日曜日
愛知県立第五中学校の創立二十五周年記念事業として、名古屋市公会堂で講演を行った。貼雑年譜「名古屋公会堂デ講演」]
5月5日 火曜日
平凡社から江戸川乱歩全集の第一回配本があった。発行部数は三万三千部だった。探偵小説四十年「宣伝お祭り騒ぎ」]
一月か二月、平凡社から全集出版の話を受けた。乗り気ではなかったが、社長である下中彌三郎の人格を信頼し、承諾した。平凡社にしばしば足を運び、下中と相談した。全集の内容や宣伝の方法など、自分の考えをかなり通すことができた。探偵小説四十年「江戸川乱歩全集」]
全集の附録雑誌「探偵趣味」の編集者に井上勝喜を推薦し、井上は平凡社から月給を得た。探偵小説四十年「昭和六年度の主な出来事」]
5月8日 金曜日
江戸川乱歩全集の最初の新聞広告が掲載された。広告の図案も考えた。東京、大阪の大新聞と地方の主要な新聞に、紙面の三分の一の大きさで掲載した。以後、予約の締切だった五月三十一日まで、新聞広告を集中的に掲載した。探偵小説四十年「宣伝お祭り騒ぎ」]
5月10日 日曜日
『江戸川乱歩全集第八巻』の発行日。完結は翌年五月。全十二巻の予定だったが、十三巻になった。
「探偵趣味」第一号の発行日。「地獄風景」第一回が掲載された。連載は翌年三月まで。
5月12日 火曜日
博文館から出版された『江川蘭子』の発行日。
5月28日 木曜日
川田功が死去した。
5月29日 金曜日
ハルピンで発行されている新聞「ХАРБИНСКОЕ ВРЕМЯ(ハルピンスコエ・ヴレーミア)に「魔術師」のロシア語訳「АРОДЪИ」第一回が掲載された。連載は五十回。春、日本の銀行のハルピン支店に勤務する人から手紙が届き、翻訳連載の承諾を求められた。原作料の要求もせず、承諾を与えた。探偵小説四十年「「魔術師」露字新聞に連載」]
5月31日 日曜日
江戸川乱歩全集の「序」を脱稿。初出末尾]
5月
妹の玉子が肋膜炎に罹り、きくとともに別宅に住んで療養を始めた。探偵小説四十年「昭和六年度の主な出来事」]
大阪に住んでいた弟の通が脊髄カリエスに罹り、昭和八年に全快するまで療養生活を送ることになった。探偵小説四十年「昭和六年度の主な出来事」]
井上勝喜が結婚し、式の費用などいっさいの面倒を見た。探偵小説四十年「身辺多事の年」]

6月
6月1日 月曜日
「講談倶楽部」六月号(第二十一巻第六号)の発行日。「恐怖王」第一回が掲載された。連載は翌年五月まで。
6月10日 水曜日
『江戸川乱歩全集第一巻』の発行日。
6月15日 月曜日
平林初之輔がパリで客死した。早稲田大学の留学生として渡仏し、パリで開かれた第一回国際文芸家協会大会に日本代表として出席していたが、出血性膵臓炎で死去。探偵小説四十年「平林初之輔」]

7月
7月1日 水曜日
新潮社から出版された文芸家協会編『大衆文学集第四集』の発行日。「目羅博士の不思議な犯罪」が収録された。
7月2日 木曜日
「「黄金仮面」エスペラント訳出版に際して」を脱稿。初出末尾]
7月10日 金曜日
『江戸川乱歩全集第五巻』の発行日。
7月26日 日曜日
市川小太夫の新興座が帝国劇場で第一回公演を行い、上演四作品のひとつに「黒手組」をとりあげた。公演は二十八日まで。これ以降、大阪、京都、神戸、名古屋、博多などでも上演された。貼雑年譜「「黒手組」市川小太夫ニヨリ脚色サレ、同座ニテ各地ニ演ゼラル」]
7月29日 水曜日
「探偵趣味」に掲載する「黒手組」の写真を撮るため、芝の紅葉館に市川小太夫、下中彌三郎、井上勝喜らと集まり、昼食のあと写真と十六ミリフィルムを撮影した。下中の招待だった。探偵小説四十年「小太夫一座の「黒手組」劇」]

8月
8月1日 土曜日
「朝日」八月号(第三巻第八号)、「キング」八月号(第七巻第八号)、「講談倶楽部」八月号(第二十一巻第八号)、「富士」八月号(第四巻第八号)の発行日。いずれも連載を休載した。
8月10日 月曜日
『江戸川乱歩全集第四巻』の発行日。
「探偵趣味」第四号の発行日。連載を休載した。
8月15日 土曜日
日本エスペラント会から出版された「黄金仮面」のエスペラント語訳『Ora Masko Volumo 1』発行日。
春陽堂から出版された明治大正昭和文学全集第五十六巻『江戸川乱歩・小酒井不木・甲賀三郎・大下宇陀児』の発行日。

9月
9月10日 木曜日
『江戸川乱歩全集第十巻』の発行日。
9月17日 木曜日
平林初之輔の告別式が小石川の伝通院で営まれた。新青年「戸崎町風土記」Fragment
告別式のあと、伝通院前のレストランで、吉江喬松、森下雨村、宮島新三郎、木村毅らと平林の遺稿出版について相談した。乱歩全集が出版されていた関係で、平凡社から出版することに決まった。探偵小説四十年「平林初之輔」]

10月
10月1日 木曜日
「キング」十月号(第七巻第十号)の発行日。「黄金仮面」第十二回が掲載され、完結。
10月10日 土曜日
『江戸川乱歩全集第二巻』の発行日。

11月
11月1日 日曜日
「キング」十一月号(第七巻第十一号)の発行日。「鬼」第一回が掲載された。連載は翌年二月まで。
「朝日」十一月号(第三巻第十一号)、「講談倶楽部」十一月号(第二十一巻第十一号)、「富士」十一月号(第四巻第十一号)の発行日。いずれも連載を休載した。
11月8日 日曜日
『江戸川乱歩全集第六巻』の発行日。
11月29日 日曜日
津市で繁男の七回忌法要を営み、親戚や父の知人を聴潮館でもてなした。貼雑年譜「父ノ七回忌」]
11月下旬
緑館で下宿学生の争議のようなものが起きたため、隆と相談して下宿屋を廃業した。探偵小説四十年「下宿争議」]

12月
12月1日 火曜日
「朝日」十二月号(第三巻第十二号)、「キング」十二月号(第七巻第十二号)、「講談倶楽部」十二月号(第二十一巻第十二号)、「富士」十二月号(第四巻第十二号)の発行日。いずれも連載を休載した。
12月8日 火曜日
『江戸川乱歩全集第七巻』の発行日。
12月13日 日曜日
「トリックを超越して」を脱稿。初出末尾]

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