Another Entry 2009
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2009年6月14日(日)

書籍
梶山季之の文学空間 ソウル、広島、ハワイ、そして人びと 天瀬裕康
4月1日 渓水社
B6判 281ページ カバー 本体2700円
著:天瀬裕康
まえがき
第一章 作家以前──梶山季之をめぐる人びと
第1節 ソウルから広島へ
第2節 高師時代と異色の恩師たち
第3節 文壇と同人雑誌──中央と広島
第4節 縁の下の力持ちと先人のこと
第5節 背水の陣を布いて
第二章 朝鮮半島についての作品──良心の問題
第1節 三つの「族譜」を中心に
第2節 「霓のなか」と「李朝残影」
第3節 朝鮮半島と日本で
第4節 エッセイ・研究・パフォーマンス
第5節 創氏改名と「族譜」の諸批判
第6節 事実と真実、良心の問題
第三章 被爆後の広島と原爆文学
第1節 日本ペンクラブと『広島文学』批判
第2節 同人雑誌と周辺
第3節 梶山の初期原爆小説
第4節 後期の原爆小説
第5節 創作以外の作品と仕事
第6節 社会小説・政治小説
第四章 ハワイと移民──社会小説、経済小説
第1節 名声確立と流行作家
第2節 ハワイ移民と作業唄
第3節 太平洋という舞台
第4節 アメリカ合衆国
第5節 中南米を行く
第6節 移民・出張・流行作家
第五章 月刊『噂』と夢の《積乱雲》
第1節 月刊『噂』と周辺
第2節 ユダヤ関連事項
第3節 第五期と梶山ユダヤ小説
第4節 『噂』の中の本音
第5節 夢の《積乱雲》
あとがき
資料編

 
 『新青年』研究会の天瀬裕康さんによる梶山季之論。天瀬さんがお住まいの広島県は梶山季之の父親の郷里であり、朝鮮の京城に生まれた梶山が戦後の引き揚げでたどりついた土地でもあった、と浅からぬ縁があることから一昨年、広島の地で梶山季之の没後三十三年記念事業が催されました。その企画に携わった天瀬さんが「多くの人の多様な意見を反映させながら自分の梶山論を書いてみたい、と思って纏めたのが本書である」(まえがき)とのことなのですが、よく考えてみたら『せどり男爵数奇譚』(河出文庫)くらいしか梶山作品をまともに読んだことがなかった私は、本書を一読してまったく新しい作家像に触れることを得ました。

 梶山季之と乱歩との関係ということになると、まったくといっていいほど何も思い浮かばないのですが、しいていえば乱歩没後の1972年、梶山が勧進元となって創刊された月刊誌「噂」に特集「知られざる江戸川乱歩」が掲載されたことがあげられるでしょうか。

 
 渓水社:「梶山季之の文学空間」ソウル、広島、ハワイ、そして人びと