Another Entry 2009
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2009年9月13日(日)

書籍
野村胡堂伝奇幻想小説集成 野村胡堂
6月30日第一刷 作品社
A5判 507ページ カバー 本体6800円
著:野村胡堂 編:末國善己
奇談クラブ
第四の場合[初出:宝石 昭和21年11月号]
左京の恋[初出:月刊読売 昭和22年1月号]
[初出:月刊読売 昭和22年2月号]
枕の妖異[初出:月刊読売 昭和22年3月号]
代作恋文[初出:月刊読売 昭和22年4月号]
夢幻の恋[初出:旅と読物 昭和22年4月号]
観音様の頬[初出:月刊読売 昭和22年5月号]
音盤の詭計[初出:月刊読売 昭和22年6月号]
大名の倅[初出:月刊読売 昭和22年7月号]
暴君の死[初出:サロン 昭和22年7月号]
運命の釦[初出:月刊読売 昭和22年8月号]
乞食志願[初出:月刊読売 昭和22年9月号]
食魔[初出:月刊読売 昭和22年10月号]
第四次元の恋[初出:サンデー毎日 昭和22年10月1日号]
お竹大日如来[初出:月刊読売 昭和22年11月号]
結婚ラプソディ[初出:月刊読売 昭和22年12月号]
白髪の恋[初出:サロン 特選小説集別冊1輯 昭和23年3月]
伝奇小説
禁断の死針[初出:講談倶楽部 昭和4年9月号]
百唇の譜[初出:文芸倶楽部 昭和6年9月号]
裸身の女仙[初出:朝日 昭和7年9月号]
黄金を浴びる女[初出:オール読物 昭和8年4月号]
礫心中[初出:富士 昭和10年12月号]
芳年写生帖[初出:オール読物 昭和13年3月号]
大江戸黄金狂[初出:新青年 昭和14年11月号−12月号]
天保の飛行術[初出:不詳]
江戸の火術[初出:不詳]
十字架観音[初出:不詳]
猟色の果[初出:娯楽世界 昭和24年2月号]
幻術天魔太郎[初出:不詳]
編者解説 末國善己

 
 百物語形式による一話完結のシリーズ「奇談クラブ」のうち、戦後に発表された全作品が集成されました。新たに発掘された単行本未収録作品もあります。「編者解説」から引用。
 
編者解説

末國善己  

 『奇談クラブ』と『新奇談クラブ』には、スーパーナチュラルな題材を取り上げたホラーから、都市伝説や巷説、風聞を紹介する作品、奇怪な謎が合理的に解明される探偵小説、落とし話的なユーモア譚、変態性欲や異常心理を題材にした作品までバラエティ豊かな作品が集められていたが、戦後版の『奇談クラブ』では、奇怪な謎に合理的なオチを付けるミステリー色の強い作品が増えている。日本では、第二次大戦中に探偵小説の執筆が難しくなっていたこともあって、戦争が終わると、探偵小説専門誌が続々と創刊され、本格探偵小説の名作も数多く発表されている。胡堂は中学生時代に、コナン・ドイルのシャーロック・ホームズシリーズを原書で読むほどの探偵小説マニアだったので、時代の空気を敏感に感じ取り、謎解きを重視する作品に挑戦したのかもしれない。
 また戦後版『奇談クラブ』は、中盤では不可思議で奇怪な展開が描かれるのに、ラストは、勧善懲悪めいたオチになっていたり、モラリスティックな教訓が付けられたりすることも多い。胡堂もそのことを気にしてか、「私には大した教訓的なことを申上げる積りはなかったのです」(「運命の釦」)といったエクスキューズを、登場人物に語らせることもあるほどなのだ。これは胡堂が老成したためと思われるが、スリリングな中盤と常識的な結末のギャップは、読者によっては評価がわかれるかもしれない。

 
 「伝奇小説」には伝奇的色彩の強い時代小説の短篇と少年少女向け時代伝奇小説の中篇を取り揃え、伝奇作家としての野村胡堂を紹介する一巻となっております。
 
 作品社:野村胡堂伝奇幻想小説集成