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2010年2月2日(火)

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毎日jp
1月31日 毎日新聞社
1月31日付三重版掲載
みんな夢中:設立準備が進む、鳥羽郷土史会 /三重 林一茂
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みんな夢中:設立準備が進む、鳥羽郷土史会 /三重

設立準備に励む(左から)中村和徳さん、浜口巌さん、浦口久子さん

 ◇忘れ去られる前に記録を

 「今、記録にとどめないと、永久に忘れ去られてしまう」。こう言って鳥羽市老人クラブ連合会長の中村和徳さん(74)と、観光客に名所案内を続ける鳥羽ガイドボランティアの会長の浜口巌さん(75)が顔をくもらせた。埋もれ忘れられゆく鳥羽の歴史、文化、人物……。そこに光を当て掘り起こそうと、「鳥羽郷土史会」設立準備が進んでいる。【林一茂】

 中村さんは力説する。鳥羽を含む志摩地方は、「万葉集」に「御食国(みけつくに)志摩」と歌われるなど、古代から天皇に御食料物を貢進する国として知られた。戦国時代末には戦国武将の九鬼嘉隆が鳥羽城を築き、その後、江戸や上方に向かう交易船が風待ちのために立ち寄る港町として栄えた、と。

 近現代では、真珠王の御木本幸吉、保険事業を生み出した門野幾之進、風俗研究家の岩田準一、それに探偵推理小説の先駆け、江戸川乱歩も忘れてはいけない、と強調するのは浜口さん。「小さな港町だけど、優れた人物を数多く輩出した文化の町でもある」と話す。

 志摩地方では、200人の会員を有した「志摩郷土会」が郷土史の研究、調査活動を活発に展開。鳥羽在住者も加わっていたが、二十数年前に自然消滅した。以後、郷土史に関心を持つ人たちの集まりや研究発表の場は途絶えてしまった。

 郷土史会発足の機運が高まったのは、鳥羽元気再生事業推進協議会(吉田謙一会長)が国の補助事業「海の国再生事業」で、九鬼嘉隆にスポットを当てたイベントを開催したことから。中村さんは「嘉隆は戦国の世、答志島で果てた。島には首塚、胴塚が立てられているが、詳しい嘉隆の足跡は分かっていない。市内に残る嘉隆ゆかりの品や言い伝えを、一本の糸につなげたい」と意欲を見せる。

 浜口さんも、漁村などで連綿と続いてきた祭りや風習、言い伝えなどが、過疎と高齢化のため消え去ろうとする現実に心を痛める。「若かりしころ、あちこちで見聞きした祭事の半分は無くなった。次の世代に伝えていくのは私たちの使命」と訴える。

 市自治連合会副会長の世古安秀さん、市文化財調査委員の上野潤さん、鳥羽商議所職員の浦口久子さんたちも加わる予定だ。

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 ◇メモ

 設立は3月7日を予定。2カ月に1回、例会を開き、初回は「九鬼嘉隆と九鬼水軍」をテーマに、会員が研究成果を発表する。会誌は年3回程度発行。事務局は当面、鳥羽市歴史文化ガイドセンター内に置く。

〔三重版〕

毎日新聞 2010年1月31日 地方版

 
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