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2010年3月6日(土)

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毎日jp
3月6日 毎日新聞社
3月6日付東京夕刊掲載
深よみエンタ:寺島しのぶに銀熊賞 不在でも受賞、感激の涙=佐藤雅昭 佐藤雅昭
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深よみエンタ:寺島しのぶに銀熊賞 不在でも受賞、感激の涙=佐藤雅昭

 ようやくトロフィーを握りしめた。先月27日の夜。場所は蜷川幸雄氏(74)演出の舞台「血は立ったまま眠っている」が上演中の大阪市内の劇場。映画「キャタピラー」の演技で第60回ベルリン国際映画祭の最優秀女優賞(銀熊賞)に選ばれた寺島しのぶ(37)に、代理で受け取ってきた若松孝二監督(73)と共演の大西信満(しま)(34)が直接手渡した。

 終演後のにわかセレモニー。蜷川氏の演出でベートーベンの交響曲第9番の「歓喜の歌」が流される中、観客もスタンディングオベーションで栄誉をたたえた。感激の涙で言葉を詰まらせながら寺島は「わがままでどうしようもない私を100%支えてくれた(夫の)ローラン、世界の監督若松さんと蜷川さん、つらい夫婦役をやってくれた大西君や、皆さんに感謝したい」と話し、トロフィーを掲げてキスをした。

 64年の左幸子さん、75年の田中絹代さん(いずれも故人)に続く日本人3人目の快挙。その瞬間をベルリン市内の会場内で堪能した。審査員を務めたソマリアの作家ヌルディン・ファラー氏が「シノブ・テラシマ」と名前を読み上げると、約1600人の観客から大きな拍手がわき上がった。

 寺島は舞台出演のため審査結果の発表を待たずに帰国したが、あの晴れの場には立ち会わせてあげたかった。それだけが残念だが、まだまだ若い。次もあろう。さて、どの映画祭になるか。

 国内の映画賞には表彰式への「出席」を絶対条件とするものがあると聞く。いや、現在は改まっているかもしれないから「あった」といった方がより正確か。いずれにしても仕事や所用でやむなく欠席となれば、その時点で賞の対象から外されたという。本末転倒もはなはだしいが、その点、さすがは世界3大映画祭のベルリン。懐の深さに感服した。

 映画は江戸川乱歩の短編「芋虫」が原作。太平洋戦争中の農村を舞台に、中国戦線で両手足を失って復員した軍人の夫(大西)と、その世話に追われる妻(寺島)との関係を通して、戦争の愚かさを訴えた作品。代理でステージに上がった若松監督が「いつの日か、すべての戦争がなくなることを祈ります。殺し合うことでは何も解決しないということを、この映画を見てくれた人に伝わればいい」という寺島からのメールを紹介すると万雷の拍手が会場を包んだ。4日には都内で仲間たちが祝福の宴を開催。寺島は感激を新たにした。映画は8月14日封切りが決定。寺島にとって“凱旋(がいせん)”公開となる。

 冬を熱くしたバンクーバー冬季五輪は閉幕。日本選手団の獲得したメダル数は銀3、銅2の計5個。金6個を含む14個の韓国、金5個を含む11個の中国に大きく水をあけられたのは残念。ソチ大会(ロシア)での挽回(ばんかい)を切に願うばかりだ。

 女子フィギュアの浅田真央(19)は頑張った。「金メダル」を望む国民の期待が、あの細い体に集中。そのプレッシャーたるや想像することすら困難だが、堂々の銀メダル獲得だ。韓国の金妍児(キムヨナ)(19)に敗れた理由について「コーチの差」などといった声も聞かれるが、いやはや金が強すぎた。

 ショートプログラムで使ったハチャトゥリアン作曲の「仮面舞踏会」が音楽チャートをにぎわせている。先月25日発表の着うたデイリーチャートでは首位を獲得。ちなみに金の「ジェームズ・ボンド」は5位。着うたでは見事に勝利。こんな比較でもして慰めなければ、悔しさは癒えない……。<スポーツニッポン編集委員・佐藤雅昭>

毎日新聞 2010年3月6日 東京夕刊

 
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