雑誌
創 7月号
6月7日 創出版 第40巻第6号(通巻446号)
A5判 152ページ 本体571円
映画界の徹底研究
特集 p38-96
「キャタピラー」 正義の戦争はないということを伝えたい 若松孝二
特集記事 インタビュー p84-87

 

「キャタピラー」 正義の戦争はないということを伝えたい

若松孝二   

──主役が寺島しのぶさんと大西信満さんというキャストは初めから考えていたんですか。
若松 そうですね。日本であの芝居ができるのは寺島さんしかいないですよ。あの映画の画面に耐えられる役者は、今は寺島さん以外に考えられないですね。冗談半分でよく言うんですが、「もんぺが似合う女優さん」は、今や樹木希林と寺島しのぶしかいない(笑)。やはり生きている人間の顔をしていますよね。泥をぬりたくっても髪の毛をワンカットごとに整えるような女優とは全然違います。芝居している皮膚感覚が違うんですよね。
 あの映画は、江戸川乱歩の『芋虫』に反戦のメッセージを重ねたんですが、寺島さんには脚本の第一稿を直したときからお願いしました。脚本もはじめは若い女性に書かせたんだけども、何回書かせても、どうしても江戸川乱歩の『芋虫』になっちゃうんですよ。だから、そうじゃないと言って鉛筆で描き直して、普通はちゃんと印刷し直したものを出すけれども、鉛筆で直したままの脚本を寺島さんに渡したんです。そしたら逆に寺島さんはそれに感動したらしいですね。

 

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掲載 2010年7月26日 (月)