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平成22・2010年7月1日 毎日新聞社
ポストカード:乱歩小説の挿絵を 岩田準一作品、孫の準子さんが自費発行 /三重 林一茂
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ポストカード:乱歩小説の挿絵を 岩田準一作品、孫の準子さんが自費発行 /三重

 ◇「パノラマ島奇譚」の4枚 鳥羽出身の岩田準一作品

 鳥羽市出身の画家で風俗研究家の岩田準一(1900~45)が描いた、江戸川乱歩(1894~1965)の小説「パノラマ島奇譚(きたん)(後に奇談と改題)」の挿絵4枚を、岩田の孫で「鳥羽みなとまち文学館長」の岩田準子さんがポストカードセットとして自費発行した。日本探偵小説の父とされる乱歩の小説の挿絵がポストカードになるのは初めてという。

 準一は1918年、鳥羽の造船所に勤務した乱歩と出会った。乱歩はわずか1年で鳥羽を去るが、準一とは深い交流を重ねた。乱歩は鳥羽での体験を基に相島(おじま)(現在のミキモト真珠島)をモデルにした「パノラマ島奇譚」を執筆した。「現代大衆文学全集」(平凡社)に収録されたのを機会に、準一が挿絵を描いた。

 乱歩は後に「岩田準一君の挿絵」と題した一文で「僕の小説の挿絵としてはとてもすてきなんです。グロテスクな興味がシックリ合っているものだから小説の味を僕の文章なんかよりは数段巧みに、妖怪に、血みどろに描き出している」と評した。

 準一は画才に優れ、屏風(びょうぶ)や掛け軸、短冊などに絵筆を執っていた。また、大正ロマンの叙情画家、竹久夢二(1884~1934)と15歳の時に知り合い、夢二から「日本一の夢二通」と称賛された。乱歩の挿絵4枚は、準一が得意とした夢二風の筆致から一転、「フランスあたりの新傾向版画と江戸版画の凄味(すごみ)や艶(つや)を取り入れて、同君(準一)の工夫になるもの」(岩田準一君の挿絵)と乱歩は記している。

 ポストカードセットの販売について準子さんは「鳥羽が乱歩ゆかりの地でありながら、乱歩グッズが無かったので前々から計画していた。準一の孫としてぜひとも自分の手で発行したかった」と話している。ポストカードセットは500セット限定販売。1セット600円(税込み)。希望者は鳥羽みなとまち文学館(0599・26・3745)。通信販売も行っている。【林一茂】

〔三重版〕

毎日新聞 2010年7月1日 地方版

 
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掲載 2010年8月5日 (木)