大塚英志

1958年生

キャラクター小説の作り方
 かつて自分たちのジャンルの小説は写生文的なリアリズムに基づかないと言い切ったのは日本の探偵小説の祖ともいえる江戸川乱歩ですが、探偵小説には「名探偵」という現実には成立し得ない職業(現実の「探偵」が行うのは浮気調査であって、殺人事件の解決ではありません)が成立していますし、殺人犯もわざわざその謎が解ければ自分が犯人だと判るトリックを仕掛けます。
書名■キャラクター小説の作り方
著■大塚英志
〔第三講──キャラクターとはパターンの組み合わせである〕
2003年2月20日 講談社 講談社現代新書 p. 80 − 81
採録■2003年4月26日 目撃者■大江十二階
奥泉光

1956年生

浪漫的な行軍の記録
 思えば、入営前、私は希望なんてものはこれっぽっちも持っていなかった。と力んでいうほどのこともないので、要するに、希望などという大層な言葉でもってするような思考を欠いていたんです。それでも、あえて探して見るならば、希望と呼んでさしつかえないものがひとつだけあった。すなわち、乱歩先生もあっと驚くような、後世に残る傑作探偵小説をものして出版したいという願いがそれだ。
書名■浪漫的な行軍の記録
著■奥泉光
2002年11月30日 講談社 p. 37
初出■「群像」2002年8月号
採録■2003年4月13日
掲載●2004年9月14日 最終更新●2003年 9月 14日 (日)