大峰北山川 深瀬谷
 白川又の塩ノ谷なら涼しいだろうと、前夜岩屋又の出合あたりをウロウロしていると、地元の建設会社の人に、私有地なのでこのあたりにクルマを停めないでくれ、と追い出される。仕方なく白川バス停の広場で宴会をしていると、4台のパトカーが来て、思わぬ職務質問されることになった。このあたりの事情は同行ヨッシさんの日記を参照してください。怪しい風体のオジサンが夜中に林道を徘徊してたら、それは誰だって警戒するよなー。おまけに駐在さんに聞けば、白川又川の林道は茗荷谷出合あたりで通行止めになっているらしい。塩ノ谷はダメである。近くで行ったことのない谷というと...。K仙人の一言で、誰も知らない深瀬谷に転進する。ヒルの保証はないけど、国道からすぐに入れるのが面倒くさくなくていい。

 本来目的は塩ノ谷だったので、ロープは30mが2本しかない。シュリンゲ各自3本くらいにハーネスだけ、という心もとない装備。ま、地図にある滝が大きかったら捲くしかないな。
メンバーは大阪からK仙人、三重からヨッシさん、膝脱臼のNさん、病院勤めのYさん、それに指骨折の私の総勢5人。体は動かないオッサンも5人揃えば、にぎやかなものだ。

谷へ入るとすぐにF2。樹林を透かして深瀬滝が見える
 深瀬トンネルを抜けるとすぐに深瀬谷が滝をかけている。左側には鉄の作業用階段がつけてある。おかげで、一つ目の滝をこえるのに、国道端で大騒ぎしなくてもよい。階段の上で右手へブッシュを横切るとF2 5mの下に出た。なんだか、F2の上に大きな滝が透けて見える。みんなまん中を登ったり、右手を捲いたり三々五々通過。ゴーロを登ると、入り口からは想像もできない大きな滝が現れた。これが深瀬滝かあ、地図に載るはずだな。
高度差にして60m前後。滝身は緩急の変化があるスラブ状で、直登するとなると50mロープで3ピッチくらいか。

 さっそく、装備とにらめっこしながら通過の方策を練る。直登は、右手から取付いて左手寄りへ、不可能ではなさそうだが、いかんせん道具が全くない。左岸は木が生えているが、急な岩稜になっていて、これも上で詰まりそうだ。右岸は樹林が濃いので、一見逃げ場がありそうだ。ここに活路を求めることにして、右岸基部のルンゼからK仙人を先頭にぞろぞろ登りはじめる。5人もいれば、最後までK仙人がトップだな。
泥のルンゼ状を30m。つぎに土のバンド状を右手、滝心の方へ20m横断。ここでロープをつなぐ。滝横の急なブッシュの生えた壁を直上25mでピッチを切る。右下には滝から枝ルンゼが上がって来ているので、いったんルンゼ内へ横断する。ここで再度ビレイを取り、堅いルンゼを10mほど登ると傾斜が強まり、右手の草付壁へ追いこまれる。ここでK仙人手持ちのカラビナがなくなり、あとはノープロテクションとなるが、巧みにブッシュを縫いつつ、草付を騙しながら越える。この部分は体重がある私がトップなら行けないね。左手へ逃げます。草の根っこにつま先をねじ込むと、草を剥がしながらどんどんズリ落ちて行くので、「落チルー」と言いながら次の草を掴むしかないのだ。この先は立ち木を掴みながら右斜上するとポンと滝落ち口へ出た。冷やしソーメンで昼メシ。

 ここからも数個の小滝をかけているが快適に直登できる。その先であたりが植林帯となり、急に谷は平凡になる。右岸には仕事道もあるので、これを下ることにする。大滝右岸の尾根は急で仕事道も明瞭ではなかったが、見当をつけて最初の鉄の階段へ戻る。(7月11日)

F2を越えると深瀬滝が全容を見せる
深瀬滝の上は小滝が続き、涼しくていい