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医療コラム

皮膚がん 1996年(平成8年)春季号

大阪回生病院皮膚科部長
庄司 昭伸

  「がんは痛くない、 だから皮膚がんも痛くない」 と思っている人々は意外に多いものです。  顔は日光の刺激を受け易く、 手のひらや足の裏は物理的な刺激を受け易いのだから、 このようなところは皮膚がんに要注意。 ほとんどの場合、 皮膚がんは、 皆さんが思っておられるように、 痛くも痒くもありません。

 ところが、 時々痛いものもあるのです。 しかも、 この痛みは普通の痛さではありません。 たとえば痛みに耐えかねて、 医者ぎらいな人でも病院へやってくるほどなのです。 時には、“おでき”と間違える医師さえある皮膚がん。 一方、 患者さんも間違えられると“ほっ”とするらしい。 どうやら切られなくてよかったと思っているからでしょう。

 でも一週間後必ず来院することになります。 それほど痛みが激しいからなのです。 そして今度は、 「切り取った方が良い」 という医師の指示通り、 局所麻酔下で手術をすることになります。 がんを切り取ると、“痛み”はうそのように消失します。 とにかく普通の皮膚がんは痛くないことが多いのです。

 時には、 「皮膚がんかどうか簡単に区別する方法について教えてほしい」 という質問を受けることがあります。 そんな時、 (1)顔、 頸、 四肢の日光にさらされている部位を指先でなでてみて、 表面がザラザラで、 サンドペーパーのような“いぼ”の場合(2)突然、 顔にツノのようなモノがでてくる場合(3)ホクロのようなもので、 ちょっとしたことで出血するような場合|は皮膚がんが発症する直前の状態であることが多いので皮膚科専門医へぜひ、 と答えています。 また、 手のひら、 足の裏の“ほくろ”も要注意です。

 そのほか内蔵にがんがある場合、 皮膚に症状のでることが稀にあります。 これらの中には、 褐色ないしは黒色のいぼが二、 三カ月の間に急に数が増える場合▽ゆっくり増加し、 痒みがでてくる場合▽上眼瞼 (まぶた) がカブレたように赤くはれ上った場合▽全身に急に大きな水ぶくれができた場合|も要注意、 と皮膚科の教科書は教えています。

 でも、 御心配なく。 内科、 放射線科で精密検査して 「あった!」 と医師が心で叫ぶほどのがんは大変少ないことを告白しておきます。



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