創刊0号に掲載
磯ップ物語−1
残酷な食事
地球流民

ふたりのラッコが、テレビでアマゾンの特集を見ていました。

たくさんのピラニアが、川を流れてきた動物の死体に群がっています。みるみるうちに動物は白骨化してしまいました。
「うわー!残酷な食べ方ね。私たち、アマゾンに住んでいなくてよかったわね。」女の子のラッコが言いました。

次に紹介されたのは、ヘビがカワウソを食べるシーンでした。アマゾンにいるヘビはみんな毒蛇ですから、狙われたカワウソは咬まれたらひとたまりもありません。
ヘビに体をぐるぐる巻きに絞められ、毒牙でとどめをさされて、カワウソはぴくぴくと息絶えます。ヘビはそれを頭から丸飲みするのでした。

「ひゃー!こっちの方が残酷だよ。ぼくらの仲間が、ヘビなんかに丸飲みにされるなんて見ちゃいられない。なんて残酷な食事なんだ」
男の子のラッコが両手で目を覆って叫びました。

番組が終わったので、ラッコたちは食事の時間にすることにしました。
今日は美味しそうなカニが捕れたようです。
「私はね、カニに鼻を挟まれるのが嫌だから、まずハサミをもいじゃうのよ。」
「ぼくはね、お腹の上から逃げだそうとするから、まず足をもいじゃうよ」

ラッコたちのお腹の上で、ハサミをもがれたカニと、足をもがれたカニは、まだ生きたまま、食べられるのを待っています。
「さっきのテレビ、残酷だったね」
「うん、ピラニアもヘビも大嫌いよ。」
ラッコたちは、残酷な食事の話しに夢中になりながら、哀れなカニに食らいつきました。


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(C) 1996 Hajime Nakamura.