磯ップ物語−4
ヒトになったイソギンチャク 地球流民
イソギンチャクの磯太郎は、そのあたりに浮いているエサに触手を伸ばしながら、いつものように愚痴っていた。
磯太郎は結局、そこから動くことなく、採りすぎて腐りかけたエサを無理矢理口に押し込みながら、朽ち果てていった。「ああ、ボクはなんでイソギンチャクなんかに生まれたんだろう。どこにも行けずに、毎日漂ってくるエサを食べては寝るだけだ。」 そこで磯太郎は、近くを通りかかった神様にお願いした。「神様、どうか私を歩き回れる体にして下さい」 神様が、「ほいほい」 と磯太郎をひっくり返して呪文を唱えると、磯太郎はあっという間に、立派なヒトデになっていた。 ![]() ヒトデになった磯太郎は、さっそく5本の足を動かして、岩を登り、砂を這い、自由に歩き回って美味しそうな貝を探した。でもそこで気付いたのだ。 手がない!ヒトデには手がなかった。しようがないので、磯太郎は足で貝をこじ開けて、足で食事をした。 次の日、磯太郎はまた神様にお願いした。 「神様今度は、手もあって足もある体にして下さい」 神様はちょっと悲しそうな顔をしたが、すぐに望みをかなえてくれた。 ヒトデだった体はみるみる大きくなり、5本の足の1本は頭に、残りの4本が手と足になり、立派なヒトが現れた。 ヒトになった磯太郎は、喜び勇んで陸に上がり、足で歩き回っては、手でエサを採りはじめた。 エサは食べきれないほど採っても手で持ち運べたから、面白いようにたくさん食べて、たくさん集められた。 でもそのうち両手でも持ちきれなくなった。そして気が付くと、すっかりエサのなくなった荒野だけが広がっていたのだ。 |