7号に掲載
磯ップ物語−8
だれが立派?
地球流民

 神様は、このところ地球で勝手なことばかりしているヒトを呼んで、小言を言いました。ヒトはふてくされて答えました。
「おそれながら神様、地球上にヒトより頭が良く立派な動物はおりません。私たちでなければ、誰が頂点に立つことができましょうか」

 神様は笑いながら言いました。
「ヒトが立派などとだれが決めたのじゃ?もしそれほどに立派というのなら、ほれ、あのクラゲとでも比べてみるがよい」
神様は、クラゲとエサ獲り競争をしてみろというのです。

 ヒトのすごいところは、考えることと道具を使えることです。
 ヒトは釣りをすることにしました。竹を切ってきて竿にし、草から糸をつむぎ、魚の骨で針をつくりました。そしてさらに頭をめいっぱい働かせて、潮目を読み、魚のいそうなところを探し、夕方には釣り糸を海に垂れ、暗くなる頃にはついに3匹の魚を釣り上げていました。
「ご覧ください神様、私は何もないところから釣り道具をつくり、さまざまな条件を考えて、たった一日で魚を3匹も獲ることができました。明日には網を作って・・・」
 そうヒトが言いかけると、神様はだまって、海を指さしました。

 そこには、クラゲがふわふわと浮いてつぶやいています。
「ふわ〜、お腹いっぱいだあ。 今日も朝から食べすぎたし。もう寝ようっと」
 ヒトは慌ててクラゲに聞きました。いったいどうやってエサを獲っていたのだと。

 クラゲは眠そうに答えました。
「何も考えてないし何もしなかったよ。ただ浮いていたらお腹がいっぱいになったんだ」そして哀れみの目を向けて続けたのでした。「それより君は、なにかしないとエサが食べられないの?それはとてもかわいそうなことだね」と。


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(C) 1996 Hajime Nakamura.