エリートの条件 地球流民 平和なアシカ村に、男の子のアシカが3頭いたよ。 名前はゴンとロンとクー。 ゴンはガキ大将だ。 体も大きいし勇気もあって、アオアオ鳴きながらいつも友達の先頭を歩いていたよ。 もう大人と同じ深さまで潜って魚を獲ってこれるから、女の子にモテモテさ。 大人になったら、たくさんのお嫁さんと子供をいっぱいつくるって言ってたよ。 友達のロンは頭がいい。目をクリクリ回して毎日猛勉強。 いろんなことを知っているから、大人にだって一目置かれていたよ。 ロンは将来、アシカ村の村長さんになりたいんだ。 もう一頭の子アシカはクー。この子は弱虫で臆病者。 なにをするのだっていつもビリで、クークー鳴いているばかり。 海が恐くてまだ岸から離れて泳げないから、一人で魚を獲るのも、もうちょっと後。これじゃいつまでたっても大きくなれないよね。 そんなわけで、大人のアシカたちも、女の子のアシカたちも、ゴンとロンに期待していた。 アシカ村はゴンとロンみたいなエリートがいれば安泰だってね。 ![]() ところが平和なアシカ村に、腹ぺこのシャチがやってきたんだ。 シャチは柔らかくて一飲みにできる子供のアシカが大好物。 ガキ大将のゴンも頭のいいロンも、海の中じゃシャチにはかなわない。大勢の大人のアシカたちと一緒に食べられてしまったよ。 アシカ村はもう全滅?いやいや、そんなことはないさ。弱虫のクーが生き残っているもの。 それから十年たった今、クーがアシカ村の村長だ。 シャチはまだやってくるけど、弱虫クーの子供たちはひどく臆病だから簡単には食べられないよ。 今じゃアシカ村では、弱虫がエリートの条件なんだって。 どんな性格が一番優秀かなんて、誰にも分からないものなんだね。 |