13号に掲載
磯ップ物語−14
毒の正しい使い方

地球流民

 南米に住むその小さなカエルたちは、神様がくれた箱をワクワクしながら開けました。
 箱には「毒ガエル進化セット」と書いてあります。
 先日ここを通 りかかった神様が、ジャングルのみんなに食べられて絶滅しかかっていた彼らを哀れに思って、ヤドクガエルに進化させてくれることになったのです。

 箱の中には、強力な毒が身に付く薬と、黄、黒、青、赤といった鮮やかな色の絵の具が入っていました。
 注意書きにはこう書いてあります
 「薬を飲んだら、身体を派手な模様に塗ること。 この模様は警戒色といって毒を持っているサインである。 必ず守るべし。 神様」

 カエルたちはまず薬を飲んで、次に思い思いのボディーペインティングをしました。 さあこれで、ヤドクガエルに進化したのです。
 ところが、一匹のカエルだけは、薬は飲んだのに絵の具を塗ろうとしません。
 「警戒色になったら襲われないだろ。 そしたら憎い敵を殺せないじゃないか。 ボクは神様からもらった毒をもっと有効に使いたいんだ」
 彼は他のカエルにそう言いました。

 そこに、いつものヘビが腹ぺこになって現れました。
 ヘビはビックリです。 みんな見るからに毒々しい色のヤドクガエルになっていたのですから。
 でも、おや?見慣れたカエルもいます。 しめた!ガブッ!

 呑み込まれたのはあの警戒色を塗らなかったヤドクガエルです。
 神様の毒はよく効いてヘビはあっけなく死んでしまいました。
 「やったぞ!ついに憎いヘビを殺したんだ。毒はこうして使うのさ。 この調子で敵をもっとやっつけてやるぞ」
 ヘビのお腹の中からカエルの嬉しそうな声が聞こえてきます。

 でも、彼がヘビのお腹から出てくることは二度とありませんでした。
 だから今、ヤドクガエルはみんな派手な色をしているのです。



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(C) 1996 Hajime Nakamura.