14号に掲載
磯ップ物語−15
愛すべき動物保護令

地球流民

 動物が大好きなメリーさんが、世界連邦の大統領に選ばれました。
 メリー大統領はお気に入りのペットの猫ちゃんを抱きながら、世界中の人々に「愛すべき動物保護令」を宣言します。

 「頭のいいイルカを捕るなんて、野蛮人のすることです。これからイルカを捕った人は、野蛮とみなして死刑!」
 人々は死刑になるのが恐くて、イルカを食べるのを止めました。

 「可愛いアザラシを殺すなんて、未開人のすることです。これからはアザラシを殺した人は奴隷にします!」
 人々は奴隷にされるのが嫌で、アザラシを捕るのを止めました。

 メリー大統領は心優しい人々の支持を受け、保護する動物をどんどん多くしていきました。
 「美しくて立派なマグロを食べるなんて、デリカシーのない人のすることです。マグロを捕るのも禁止!」
 お寿司屋さんからは赤身とトロが無くなり、可愛くも頭がよくもないウニやタコ、チビでみっともないアジやイワシだけがメニューに残りました。

 ところがそれから少ししたら、メリー大統領がかわいがっている猫ちゃんのキャットフードが届かなくなったのです。
 猫ちゃんが大好きなキャットフードの缶詰は、シーチキンから作られていたので、マグロが捕れないと生産できなくなったからでした。

 その話を側近から聞いたメリー大統領の決断はとても素早くて、世界中の心優しい人々にはとてもわかりやすいものでした。
 メリー世界連邦大統領がおごそかに宣言します。
「全ての愛すべき動物たちは、ヒトの野蛮な行為から守られねばなりません。でも、猫ちゃんとマグロを比べたら、猫ちゃんの方が可愛いし頭もいいのです。だから猫ちゃんのエサになるマグロは捕ってもよろしい。」 



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(C) 1996 Hajime Nakamura.