コバンザメは、毎日がいい気分でした。彼は、このあたりで最も大きなサメのお腹にくっついていたからです。
主人のサメが魚を仕留めるたびに、そのおこぼれに預かることができるので、彼は丸々太っています。それにサメの巨体を見かけると、誰もが道を空けてくれるので、なんだか自分まで偉くなったような気がします。 だから、コバンザメは、群れで暮らしているみじめなイワシのことや、のろまなウミガメのお腹にくっついている仲間のコバンザメのことをいつも小馬鹿にしていました。 「バカだなあ。オレみたいに立派な主人に頼っていたら、未来が開けるのにさ」 ところがある日、大事変が起こりました。巨大なシャチが現れたのです。 みんな慌てて逃げ出しましたが、実際は小魚の群は相手にされないし、ウミガメは固い甲羅があるので平気です。シャチは、大きくて食べ応えのあるサメだけを狙っていたのです。 襲われたサメは、シャチの攻撃をかわそうと猛スピードで右へ左へと逃げます。コバンザメは振り落とされまいと、必死につかまっていました。でもついにシャチの歯はサメの体を捕らえます。サメは痛くて暴れまわりますが、それでもコバンザメたちは振り落とされまいと、必死でつかまっていました。 やがてサメはぐったりとなって、シャチに飲み込まれてしまいました。 そうして、シャチのお腹の中で目の前が真っ暗になったとき、コバンザメはやっと、自分の未来がサメと一緒に溶けていくのを知ったのです。 シャチが去って行った後に残ったのは、小魚の群れと、ノロマなウミガメだけでした。 (おしまい) |
国や企業など、私たちが今まで頼ってきたものが、不動のものでは無くなってきました。社会システムや価値観そのものが、大きく変わろうとしている変革の時代なのです。
そんな時に、今までの気分のままで、お上や社会システムに頼っていては、サメが釣り上げられるときに一緒に釣り上げられる、コバンザメと同じ運命をたどるでしょう。 私たちはコバンザメではなく、それぞれの命のために群れを作る魚のように、一人一人の未来のために社会を創っているヒトなのです。新しい社会を、自分たちの創意と責任で創り上げることのできる力があるのです。 各地での出前NPOセミナーの会場で、地域の皆さんにお会いするたびに、新しい社会と未来を創り上げる力を感じるこの頃です。 |