伊勢志摩PO-NPO-N通信
中村 元の、ぽんぽん道楽

episode11 「名前を付けられた木



 その小さな木の芽は、ポン港の入り口の地図にも名前のない小島の崖に生えていました。 小島は岩ばかりで傾斜のきつい吹きっさらしです。
 小島に先に生えていた草や低い灌木たちは、この木の種がどんな木になるの知らなかったけれど、せっかく出た芽が海に落ちないようにと、根を支え風を遮ってあげることにしました。

 小島の前を通る人々は、そんなことは知りません。 それどころか船の往来に邪魔だからと、小島を砕くことを話し合っていました。 木が少し大きくなった頃にも、このまま育ったら、そのうち崖から落っこちてしまうだろうと噂していました。

 でもその木は元気に育っていきました。草たちが作ってくれたわずかな土壌に根をいっぱいに張り、頑丈な幹をくねらせてバランスを取り、太陽の光を体中に受けるように枝ぶりを広げ、30年もたつ頃には、低くて形は悪いけれど立派な巨木に成長していました。
 そして今ではその木が風をさえぎり、落ち葉で土壌を作り、鳥たちに巣を与えるようになったのです。

 巨木の姿は、かつてその岩を砕こうと言っていた人々にも目に付くようになっていました。 人々はその木を、港の目印や船を係留して休む場所に使い、木の落ち葉が漁場を豊かにしていることも知るようになりました。 今や木と小島は人々にとってなくてはならないものなのです。
 いつしか人々は、その木をポンの松と呼ぶようになりました。そして小島にもポン岩と名前が付き、海図に名前が載せられました。 もう、誰もポン岩を無用のものだとは思っていません。
 (おしまい) 

  伊勢志摩NPOネットワークの会は、みんなで育ててきた木です。 崖から落ちないように形こそ整っていませんが、多くの人たちから信頼され、市民活動を育てることができる木に育ちました。
 そして、その信頼と活動をすべての市民セクターの力とするために、公式なものとして地図に掲載することになったのです。 それが今回のNPO法人の取得です。
 この木はまだまだ育ちます。 そしてこの木の役割も、形が整っていない分、さらに多くなることでしょう。 特別非営利法人伊勢志摩NPOネットワークの会とは、頼りになる会という意味です。  ホントだよ!

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(C) 2000 Hajime Nakamura.