1999 ●平成11年

1999年12月

乱歩ファンの方へ 「少年探偵団」の公演があります。ときは12月7・8両日、ところは乱歩のお膝元、池袋にある東京芸術劇場小ホール1(池袋駅西口から徒歩3分)。演劇倶楽部「座」の第2回公演ですが、これはただのお芝居や朗読劇にあらず、第11回池袋演劇祭で審査会特別賞を受賞した「高野聖」につづく「詠み芝居」の試みです。「ゲストの生演奏によるオリジナル音楽と言葉と動きのコラボレーション」で、あの懐かしくも恐ろしい乱歩の世界を表現します。演出・脚色は壌晴彦さん(元劇団四季)、キャストその他は上のチラシでご覧ください(ほとんど読めないと思います。申し訳ございません)。開演は7日(火)が19時、8日(水)は14時・18時30分、料金は3000円(14時の回は2500円)。詳細のお問い合わせ、チケットのお申し込みはこのメールでどうぞ。このメールでチケットを予約すると、ソワレ公演(18時30分・19時の回)を2700円にしてくださるそうです。「よッ、鹿嶋さん、太っ腹」と主人が申しております。画像[11月27日]

探偵小説ファンの方へ 「朱夏」13号が出ました。同誌は1991年に創刊され、最近は「満洲(満州)・朝鮮・台湾・南方など日本の旧植民地や、在外日本人(日系移民・日系人)の文化研究」に力を入れる「文化探究誌」。13号の特集は「探偵小説のアジア体験」です。藤田知浩さん入魂の責任編集で、渡辺啓助、小栗虫太郎、夢野久作における「アジア」が論じられ、「『新青年』アジア関連探偵小説紹介」「特集関連入手可能本紹介」といったガイドも充実。作家紹介「探偵作家たちとアジア」には、乱歩も登場いたします。ちなみに表紙イラスト(左の写真をご覧ください)には、「新青年」に掲載された竹中英太郎「十三号室の殺人」(作=大庭武年)の原画が使用され、特集の「挿絵画家紹介」には竹中英太郎が、「再録小説」には大庭武年の「小盗児市場の殺人」(1933年)が配されております。まったく新しい視点から「探偵小説」にアプローチした怒濤の特集100ページ、ぜひご購読ください。せらび書房発行、税込み1450円。購入方法や内容の詳細、『朱夏』編集部による特集序説「『新青年』の国際性とアジア─移民・植民地・徴用作家─」全文は、せらび書房ホームページの「朱夏・13号」でご覧いただけます。画像[11月18日]

絵画ファンの方へ 『物語の表現展』のお知らせです。会期は11月17日(水)から30日(火)まで、会場は大阪市北区西天満4−2−4、美術ビル2階、ギャラリー「ベルンアート」(地下鉄・京阪「淀屋橋」1番出口北へ10分、電話06・6361・5507)。江戸川乱歩リファレンスブックの装幀でおなじみの戸田勝久さんをはじめ、市川伸彦さん、永野恵理さんのお三方によるグループ展です。絵画の物語性という古くて新しいテーマに、「物語る画家」3人が挑みます。正午から午後7時まで、日曜・祝日は休廊。画像[11月12日]

彬光ファンの方へ 『神津恭介読本』が完成しました。神津恭介ファンクラブが創立10周年を記念して世に送る一冊。日本屈指の名探偵、神津恭介の世界を詳説した読本です。全250ページと、読み応えも十分。ご希望の方は定額小為替(無記名)1600円分を下記までお送り下さい。[11月10日/2000年3月3日、申し込み先を削除]

乱歩ファンの方へ 『少女領域』が出ました。気鋭の批評家、高原英理さんの処女評論集です。野溝七生子「山梔」(1924年)から大原まり子「ハイブリッド・チャイルド」(1990年)まで十篇をとりあげ、日本文学史に「少女型意識」の水脈を探る斬新な意欲作。1900年代最後の年を飾るにふさわしい一冊です。国書刊行会刊、本体2800円。ところで乱歩の話ですが、この本に乱歩はほとんど出てきません。「蜘蛛男」の被害者の容貌と龍膽寺雄描くところの「魔子」のそれとの不思議な一致、といった断片的指摘が散見される程度なのですが、にもかかわらずこうして乱歩ファンにお薦めいたしますのは、乱歩その人をも主人公の一人としていつの日か書かれるであろう『少年領域』の予告篇として、という意味合いもないではありませんが、それより何より高原英理さんといえば1996年、乱歩と三島を論じた「語りの事故現場」で第39回群像新人文学賞評論部門優秀賞を受賞された方であり、しかもこの受賞作をなんとか「乱歩百物語」に掲載させていただけそうだという予告篇の意味合いがございます。掲載時期に関しましては、まあ、青葉して若衆が細うなるころに、とでも申しあげておきましょうか。画像[11月9日]

1999年10月

鬼平ファンの方へ 「中一弥鬼平犯科帳さし絵原画展」が10月1日から11月15日(月)まで、群馬県は伊香保町の徳冨蘆花記念文学館(電話0279・72・2237)で開かれています。13日には中一弥さん、逢坂剛さん、出久根達郎さんの特別対談も。なお、同文学館では来年秋に「江戸川乱歩展」を催す企画が進行中です。乱歩ファンの方、ご期待ください。同館学芸員の鵜殿昭様からお知らせいただきましたので、お礼のしるしにご紹介させていただきます。なお、文春文庫の池波正太郎『鬼平犯科帳(一)』に収録された植草甚一「解説」には、乱歩が「ヒッチコック得意の毒気あるユーモア」に「やられた」エピソードが紹介されております。乱歩ファンの方、立ち読みをどうぞ。[10月25日]

絵画ファンの方へ 戸田勝久さんの画集『旅の空』が出ました。江戸川乱歩リファレンスブックを美麗な装幀で飾ってくださっている戸田さんが、10月の個展にあわせて刊行された初の画集です。紙型24.5×26cm、84ページ、カラー図版96点、本文特殊中性紙、著者自装、丸背コーナー本麻布装、表紙平および見返しも著者の意匠により、上製紙貼差込箱入り、6500円(税込)。手に取るだけで美的至福が全身を走ります。お申し込みは、かとう美術(大阪市北区芝田1−6−2、電話06・6373・1250)へどうぞ。画像[10月21日]

乱歩ファンの方へ 『江戸川乱歩執筆年譜』が残部わずかとなりました。『乱歩文献データブック』につづく名張市立図書館の江戸川乱歩リファレンスブック2ですが、1同様に古書価格高騰は必至。いまのうちにお買い求めください。詳細は名張市のホームページでご覧いただけます。[10月21日]

乱歩ファンの方へ 『贋作館事件』は往年の名探偵を蘇らせた贋作9篇の書き下ろしアンソロジーですが、編者の芦辺拓さんによる「黄昏の怪人たち」は二十面相もののパスティーシュ。原書房刊、本体1900円。版元からご恵投たまわりましたので、お礼のしるしにご紹介させていただきます。[10月21日]

乱歩ファンの方へ 『乱歩の幻影』が出ました。日下三蔵さんの編による、「乱歩にまつわる小説」のオリジナル・アンソロジーです。島田荘司さんの表題作をはじめ全10篇を収録。ちくま文庫、本体1000円。内容の詳細は「RAMPO Up-To-Date」でご覧ください。版元からご恵投たまわりましたので、お礼のしるしにご紹介させていただきます。[10月21日]

ミステリーファンの方へ 『八月のマルクス』が刊行されました。新野剛志さんの第45回江戸川乱歩賞受賞作。「現代の放浪作家が人生をかけた渾身のサスペンス」です。講談社刊、本体1600円。日本推理作家協会からご恵投たまわりましたので、お礼のしるしにご紹介させていただきます。なお、新野剛志さんから頂戴しました色紙とサイン入り『八月のマルクス』が、名張市立図書館の乱歩コーナーに展示されております。[10月21日]

古代史ファンならびにSFファンの方へ 豊田有恒さんの講演会が11月13日(土)午後2時から名張市美旗市民センター(名張市美旗町南西原229−3番地、電話0595・65・3007、近鉄大阪線美旗駅下車徒歩15分)で催されます。名張市が日本推理作家協会のご協力をいただいて催す「ミステリー歴史フォーラムinなばり」、テーマは「壬申の乱と天武天皇」です。入場無料。申し込み方法などの詳細は名張市役所(電話0595・63・2111)地域振興課国際交流係へお問い合わせを。豊田さんのプロフィル(記=「ヘテロ読誌」の大熊宏俊様)は次のとおりです。
 豊田有恒〔とよた・ありつね〕1938年、群馬県前橋市に生まれる。慶應義塾大学医学部を中退し、1963年に武蔵大学経済学部を卒業。在学中に「火星で最後の……」でSFマガジンコンテストに入選。虫プロダクション嘱託を経て、1965年から作家生活に入る。当初は和製ポール・アンダースンと謳われ、時間SFに真価を発揮、代表作はインカ帝国に材を求めた「パチャカマに落ちる陽」、元寇の神風にSF的解釈を施した「退魔戦記」、ジンギス汗テーマの「モンゴルの残光」など。1971年、騎馬民族征服説をSF的手法で見事に造型した「倭王の末裔」で独自の分野を確立、古代史小説ブームのはしりとなる。古代史SFとしては、他に「倭の女王・卑弥呼」「親魏倭王・卑弥呼」、小説・古代王朝と副題された傑作短編集「持統四年の諜者」、純国産ヒロイック・ファンタジーの試み「火の国のヤマトタケル」シリーズ、聖徳太子が探偵役の「崇峻天皇暗殺事件」などがある。異色作品として7000万年前の恐竜時代を舞台に、あり得たかも知れない恐竜人と恐竜絶滅の謎を取り上げた「ダイノサウルス作戦」がある。軽妙洒脱なショートショートにも捨てがたい魅力がある。古代史SFとの関連から韓国語をマスター、コリア・ウオッチャーとしても知られ、その方面では「韓国の挑戦」「いい加減にしろ韓国」がベストセラーになる。最新作は近未来シミュレーション小説「自爆半島―金正日・最期の賭け」。[10月21日]

写真ファンの方へ 「番犬展非公開」を11月6日(土)から8日(月)まで画廊ギャラリー30(三重県阿山郡阿山町槇山グリーンタウン3440−1660、電話0595・42・1260)で開きます。名張人外境の開設を記念した写真展、サブタイトルは「君たちは屋根裏の散歩者か」。撮影者は人外境主人、被撮影者は人外境番犬。タイトルどおり非公開といたしますので、足をお運びいただいても会場にはお入りになれません。ご了承ください。写真は出展作品の1点、タイトルは「世界人類が平和でありますように」です。画像[10月21日]

古代史ファンの方へ 隠駅家が解明されました。西暦672年6月24日、吉野から名張に至った大海人皇子、のちの天武天皇一行によって焼かれた隠駅家〔なばりのうまや〕の所在地が、名張市瀬古口地内の発掘調査によって浮かびあがりました。調査に携わった名張市教育委員会の門田了三さんによる講演「壬申の乱と隠駅家」が、10月24日(日)午後1時30分から名張市総合福祉センターふれあいホール(名張市丸之内79番地、電話0595・63・1111、近鉄大阪線名張駅下車徒歩5分)で催されます。入場無料。お問い合わせは主催の名張文化協会(電話0595・64・2162)へ。[10月21日]