2001年12月
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●12月9日(日)番犬敬白
幻の探偵雑誌
「とッ、とうとうこんなものまでッ」
と主人が絶句しております。光文社文庫「幻の探偵雑誌」シリーズのご紹介でございます。最新刊はシリーズ8『「探偵クラブ」傑作選』。探偵小説全集の附録雑誌にスポットをあてた一冊で、平凡社版江戸川乱歩全集の「探偵趣味」からはなんと読者投稿の掌篇と乱歩による掌篇評まで網羅。主人は、
「応募掌篇の一作「剥製の刺青(黄金仮面えぴそうど)」はいわゆる乱歩小説なのであるが『乱歩文献データブック』をつくったときにはこんな素人の作品まで拾うことはないだろうと黙殺した。こんなもの二度と人目に触れることはないんだからなと踏んでおったのだがいまごろ陽の目を見てしまうとは。天網恢々疎にして洩らさずとはこのことか。恐るべしミステリー文学資料館」
と申しております。
昨年3月の『「ぷろふいる」傑作選』以来順調に刊行がつづいており、次回配本は『「探偵」傑作選』。この九巻で一応の完結かと思われますが、内容はもとより丸尾靖子さんのモダニズムめくカバー画が嬉しく巻末の書誌データはまことにありがたく、乱歩ファンなら全巻揃えたいシリーズとなっております。
構成■1 「ぷろふいる」傑作選 (2000年3月20日発行)
2 「探偵趣味」傑作選 (2000年4月20日発行)
3 「シュピオ」傑作選 (2000年5月20日発行)
4 「探偵春秋」傑作選 (2001年1月20日発行)
5 「探偵文藝」傑作選 (2001年2月20日発行)
6 「猟奇」傑作選 (2001年3月20日発行)
7 「新趣味」傑作選 (2001年11月20日発行)
8 「探偵クラブ」傑作選 (2001年12月20日発行)
9 「探偵」傑作選 (未刊)
発行■光文社 光文社文庫
編■ミステリー文学資料館
定価■本体六六七円+税(1、2、5)、本体七二四円+税(3、4、6、8)、本体六一九円+税(7)
2001年11月
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●11月11日(日)番犬敬白
戸田勝久展─森へ行く日─
名張市立図書館「江戸川乱歩リファレンスブック」の装幀でおなじみの神戸市在住の画家、戸田勝久さんの個展が11月21日、大阪の大丸心斎橋店で開幕いたします。
会場■大丸心斎橋店南館8階美術画廊
大阪市中央区心斎橋筋1-7-1
会期■2001年11月21日(水)−27日(火)
午前10時−午後7時30分 最終日は午後5時閉場
作者からのメッセージ■静かな森の記憶の中に入って行くと 風の祭りや樹々の歌に出会います。 懐かしさだけではない ふとした想いが心の中に生まれ来る ささやかな森からの便りです。 ぜひ、ご高覧ください。
『とむらい機関車』と『銀座幽霊』
創元推理文庫新刊のご案内でございます。大阪圭吉の作品集が二冊同時に発売されました。どちらもカバーには乱歩の文章が引用されておりまして、それを見た主人が「これはひとごとではない」と申しますので、とりいそぎご紹介申しあげる次第でございます。
『とむらい機関車』
版元■東京創元社
発行日■2001年10月26日
収録作品■とむらい機関車/デパートの絞刑吏/カンカン虫殺人事件/白鮫号の殺人事件/気狂い機関車/石塀幽霊/あやつり裁判/雪解/坑鬼/随想鈔録
カバーの紹介文■従来日本のどの作家が、かくまでも純粋に、かくまでも根強く、正統短篇探偵小説への愛情と理解とを示し得たであろうか。どの作家が、これ程深く理智探偵小説の骨法を体得し得たであろうか。大阪君の作風は一見地味であり、常套でさえあるかも知れないけれど、その興味と情熱の純粋性に於ては、探偵文壇に比類なしと云っても過言ではないであろう。(江戸川乱歩『死の快走船』序より)
価格■本体六六〇円+税
『銀座幽霊』
版元■東京創元社
発行日■2001年10月26日
収録作品■三狂人/銀座幽霊/寒の夜晴れ/燈台鬼/動かぬ鯨群/花束の虫/闖入者/白妖/大百貨注文者/人間燈台/幽霊妻
カバーの紹介文■……一作一作が粒選りである。最初の着想が、作者自身一応満足する程度にまで醗酵させられている。一作毎に、その着想と題材の範囲で、作者の全力が尽され、神経が隅々にまで行き渡っている。気持の上のごまかしが殆どないと云っていい。この真摯な態度は、理智探偵小説に傾けられた作者のひたむきな情熱と共に、読者を快く撃たないではいない。(江戸川乱歩『死の快走船』序より)
価格■本体六六〇円+税
2001年9月
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●9月20日(木)番犬敬白
馳星周のミステリトーク ならびに 杉浦康平講演会
10月21日に迫りました名張人外境開設二周年記念大企画関連イベントのお知らせでございます。と申しましてもそれぞれの主催団体からご了承をいただいているわけではなく、主人が勝手に「関連イベントじゃ」と位置づけているだけの話でございます。申し訳次第もございません。
馳星周のミステリトーク「現代ミステリと世相の関連」
名張市が日本推理作家協会とミステリチャンネルのご協賛を頂戴して催しますミステリ講演会、十周年の今年から「なぞがたりなばり」のイベント名で催されることになりました。
日時■2001年10月13日(土)午後1時30分開場 2時開演
会場■名張市総合福祉センターふれあい
講師■馳星周(はせ・せいしゅう)1965年、北海道生まれ。本名、坂東齢人。横浜市立大学文理学部卒業。新宿歌舞伎町を舞台にしたロマン・ノワールの旗手。代表作に「不夜城」(吉川英治文学新人賞、日本冒険小説協会大賞)、「鎮魂歌(レクイエム)」(日本推理作家協会賞)、「漂流街」(大藪春彦賞)など。ホームページ、http://www.hase-seisyu.com。
出演■座☆名張少女(ざ・なばりおとめ)1988年、清水邦夫「楽屋」で旗揚げ。劇団名は田山花袋の小説「名張少女」にちなむ。劇団構成員は二十代から四十代の男性三人、女性二人。2001年度公演には北村想「虎☆ハリマオ」をとりあげた。講演への導入劇「アーク」を上演。
杉浦康平講演会「ブックデザインの宇宙 本の森羅万象」
毎度おなじみ徳島県板野郡北島町立図書館・創世ホールのイベントでございます。
日時■2001年10月20日(土)午後6時開場 6時30分開演
会場■北島町立図書館・創世ホール3階多目的ホール
講師■杉浦康平(すぎうら・こうへい)1932年、東京生まれ。グラフィックデザイナー、ブックデザイナー、アジア図像研究家。東京芸術大学建築科卒業。雑誌では「季刊銀花」など、書籍では講談社現代新書や世界幻想文学大系などのデザインで知られる。
いずれも入場無料。詳細は下記のページでご覧ください。名張市のミステリトークは入場整理券が必要ですが、名張市オフィシャルサイトからお申し込みいただけます。北島町オフィシャルサイトでは、杉浦さんがこの講演会のためにデザインされたチラシの画像をご覧いただけます。
●9月6日(木)番犬敬白
『探偵作家江戸川乱歩の事件簿 ミイラと旅する男』
またしても本格的“乱歩小説”のご案内でございます。昭和3年の帝都を舞台に、江戸川乱歩と横溝正史が博物館から消えたミイラの謎と猟奇殺人の真相を追います。楠木誠一郎さんの書き下ろし作品。
発行所■実業之日本社 ジョイ・ノベルス
発行日■2001年9月5日
体裁■新書判 二二九頁
定価■本体八三八円
帯の惹句■帝室博物館に展示されていたミイラが首なし全裸死体に!? すり替えられた首なし死体、マネキンの首と入れ替えられた美女の生首… 江戸川乱歩と横溝正史が猟奇殺人事件の真相に迫る!!
カバー折り返しのストーリー紹介■全裸「美女」首なし死体事件に挑む江戸川乱歩と横溝正史 昭和三年、帝室博物館でメキシコから寄贈されたミイラが展示されることになったが、公開されてみると全裸の若い女性の死体と入れ替わっていた。しかも、その死体には首がなかった!! この猟奇的事件に興味を持った雑誌『新青年』の編集長・横溝正史は、江戸川乱歩を訪ね独自の推理を依頼する。しぶしぶながら横溝と現場に出かけた乱歩だが、そこで今度はマネキンの頭とすり替えられた女性の首に遭遇、いや応なく事件に巻き込まれてしまうことになった……。
カバーの著者紹介■楠木誠一郎 くすのきせいいちろう 1960年、福岡県生まれ。1982年日本大学法学部卒業後、出版社に勤務。歴史雑誌編集者のかたわら、1996年『十二階の柩』(講談社)で小説デビュー。1999年から専業作家に。同じ文豪ミステリーに『名探偵夏目漱石の事件簿』(廣済堂出版 第8回日本文芸家クラブ大賞)、「潔癖症探偵 泉鏡花」三部作(中央公論新社)。ほかに『帝国の霊柩』(講談社)、『帝都奇譚 紅蓮の密偵』『真説・伊藤博文暗殺』(ともに祥伝社)、『満洲探偵 大連の柩』(徳間書店)など著書多数。
2001年8月
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●8月7日(火)番犬敬白
『二青年図──乱歩と岩田準一』
またしても瞬く間に月日がたってしまいました。発売から二か月あまりを経過いたしましたが、書き下ろし“乱歩小説”のご紹介でございます。乱歩の友人であり、同性愛研究の同志でもあった岩田準一(1900−1945)の孫にあたる岩田準子さんが、乱歩と準一の交流を題材にした『二青年図──乱歩と岩田準一』を上梓なさいました。
発行所■新潮社
体裁■ B6 判 ハードカバー 二六五頁
定価■本体一七〇〇円
帯の惹句■君なくして、江戸川乱歩はなかった。君の裸の心と躯が、そう教えてくれた……。
さらに帯の惹句■秘するほかなかった愛のかたちを孫娘が描き出した血涙の長篇小説。
もっと帯の惹句■心と躯は騙せない。愛し合うことが罪となる背徳の世界であっても。
まだつづく帯の惹句■竹久夢二に画才と美貌を寵愛されていた岩田準一は十八歳の夏、ある男に出会う。男の名は平井太郎、後の江戸川乱歩だった。二人は許されぬ悦楽の世界に淫して『パノラマ島奇談』、『孤島の鬼』、少年探偵団シリーズなどを創造し、そして二人の愛を結晶させようと誓い合った……。
これでおしまい帯の惹句■乱歩、エロ、グロの相貌を塗り替える長篇小説。
カバー折り返しの著者紹介■岩田準子 一九六七年、三重県鳥羽市生まれ。江戸川乱歩、竹久夢二らと深い親交のあった挿絵画家・民俗学者、岩田準一の孫。日本推理作家協会会員。本書は著者初の長編である。
2001年5月
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●5月29日(火)番犬敬白
乱歩原作映画オールナイト上映
月日のたつのは早いもの、番犬情報、一か月のご無沙汰でございました。
東京・池袋の新文芸坐で6月、乱歩原作映画のオールナイト上映が行われます。石井輝男監督の「恐怖奇形人間」をはじめ、乱歩映画が目白押しの二夜となります。
江戸川乱歩(1)カルト大全■6月2日(土)午後11時から
上映作品■江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間
江戸川乱歩猟奇館 屋根裏の散歩者
江戸川乱歩の陰獣
人間椅子
江戸川乱歩(2)明智小五郎アラカルト■6月9日(土)午後11時から
上映作品■黒蜥蜴
屋根裏の散歩者
D坂の殺人事件
蜘蛛男
詳細は新文芸坐ホームページの「上映スケジュール(オールナイト)」でご覧ください。乱歩につづいて横溝正史、夢野久作の映画もオールナイト上映されるとのことでございます。
●4月29日(日)番犬敬白
週刊マニアタック(続)
4月21日にご紹介いたしました Bs-i の「週刊マニアタック」は、放送日が二週間くりあがることになりました。同番組スタッフの方からお知らせをいただきましたので、再度ご案内申しあげます。
放送局■BS-i
番組名■週刊マニアタック
テーマ■江戸川乱歩マニア─乱歩先生に魅了された人々─
放送日時■5月10日(木)25:00−25:30
番組内容には変更はございません。なお、名張市立図書館は番組の放送終了後、Bs-i からビデオテープをご寄贈いただくことになっております。ビデオの貸し出しはいたしかねますが、館内ビデオコーナーで自由に視聴していただけますので、ご覧になりたい方はお気軽においでください。
●4月21日(土)番犬敬白
週刊マニアタック
ミステリ系サイト「宮澤の探偵小説頁」を開設していらっしゃる宮澤善永さんが、BS 放送の「週刊マニアタック」なる番組にご出演なさいます。番組名が示すとおり、全国津々浦々の江戸川乱歩マニアを代表してのご出陣。乱歩邸の土蔵で収録した映像もたっぷり放送されるとのことでございますので、視聴可能な方はぜひともご覧いただきたく存じます。
放送局■BS-i
番組名■週刊マニアタック(#25)
テーマ■江戸川乱歩マニア─乱歩先生に魅了された人々─
放送日時■5月24日(木)25:00−25:30
番組内容■東京都在住の会社員・宮澤善永さんは「江戸川乱歩の世界」に魅了されたという愛読者の一人。すべての作品を読破したが、それでもまだ飽き足りず、「乱歩先生との時間の共有」を求めて、小説の舞台を訪ね歩くようになったという。今回は、「押絵と旅する男」に登場した凌雲閣を見るために都内の博物館へ向かい、その後、ファンにとってユートピア的存在という池袋の乱歩邸に招待してくれる。
「週刊マニアタック」のご依頼により、名張市立図書館から江戸川乱歩生誕碑の写真などをお送りいたしました。番組のなかでちらっと紹介されるかもしれません。
●4月18日(水)番犬敬白
海野十三忌講演会
徳島県を拠点に活動する「海野十三の会」(山下博之会長)の手で5月、海野十三忌講演会が開かれます。海野十三の業績顕彰を目的とした恒例の催しで、今年は『新青年』研究会メンバーでもいらっしゃる研究者の天瀬裕康さんが、「海野十三と雑誌『新青年』の周辺」をテーマにお話をなさいます。会場では『海野十三メモリアル・ブック』などの販売も行われるそうでございます。
日時■5月12日(土)午後2時開演
会場■徳島県郷土文化会館 5階会議室7
徳島市藍場町2−14/徳島駅から徒歩5分
phone:088・622・8121
入場料■無料
主催■海野十三の会
演題■海野十三と雑誌『新青年』の周辺
主催者メッセージ■徳島が生んだ偉大な作家・海野十三は、日本 SF の父と呼ばれる。彼が文壇デビュー作を発表し、多数の作品を寄稿した雑誌が『新青年』だった。海野を語るとき『新青年』は避けて通れない。『新青年』とはどんな雑誌だったのか。横溝正史、水谷準など歴代編集長や、乱歩、久作、虫太郎など同誌に寄稿した作家たちのこと……。今年の海野十三忌講演会は、『新青年』と海野との関わりにスポットを当て、広島での新発見資料などにも言及していただきます。ご期待下さい。
講師■天瀬裕康(あませ・ひろやす)本名・渡辺晋。広島県大竹市在住。SF 大衆文学研究家。『新青年』研究会会員。『ぎんのすず』研究会会員。『宇宙塵』同人。広島ペンクラブ幹事。医学博士。1931年11月、広島県呉市生まれ。著書に『誰が…と問うでなく』(近代文芸社、1999)、監修書に『叢書・新青年 小酒井不木』(博文館新社、1994)がある。(講演会リーフレットから引用)
海野十三は、昭和24年(1949)5月17日、51歳で死去しております。
『新青年』研究会オフィシャルサイトでも、講演会の情報をご覧いただけます。
●4月8日(日)番犬敬白
「怪盗ルパン─満州・奇岩城篇─」
少年探偵団 vs 史上最大の敵──。高取英さん率いる月蝕歌劇団のお芝居「怪盗ルパン─満州・奇岩城篇─」が5月下旬、東京で上演されます。怪盗ルパン、ガニマール警部、少年探偵イジドール・ボートルレといったルブラン作品のキャラクターはもとより、乱歩作品からは明智探偵と少年探偵団、実在の人物では男装の麗人・川島芳子あたりも登場して、亜細亜を舞台に略奪と追跡の物語をくりひろげます。
月蝕歌劇団公演■怪盗ルパン─満州・奇岩城篇─
原作■モーリス・ルブラン
脚本・演出■高取英
音楽■J・A・シーザー
出演■長崎萠、一ノ瀬めぐみ、野口員代、麻田真夕、保鳴美凛、小沢里沙、吉田恭子、三坂知絵子、川上史津子、美里流李、ほか
会場■大塚・萬(よろず)スタジオ/JR 山手線大塚駅北口下車5分
日程■5月24日−28日
ストーリー■1930年代の上海で、フランスの少女コレットは何者かに襲われた。現場に落ちていた名刺はアルセーヌ・ルパン! だが、賊の目的物は小林少年と少年探偵団の手によって守られた。賊が狙ったものは、オルコンの弓。これとあと二つのものを手に入れると、蒙古の秘宝が手に入るといわれている。これをめぐって、川島芳子たち、さらにジャガーたちの暗闘が始まる。そして怪盗ルパンと明智が、この闘いに絡む。
脚本と演出を手がける高取英さんは、乱歩ファンとしても知られております。中島河太郎先生編『江戸川乱歩ワンダーランド』(1989年、沖積舎)に収録されたアンケートから、好きな乱歩作品とその理由、という設問に対する高取さんのお答えをご紹介しておきましょう。
「怪人二十面相」シリーズ
『少年』の愛読者だったので、付録の『少年探偵団手帳』を楽しみにしていたし、BDバッジも購入した。当時「電人M」など連載していた。『たのしい二年生』でも読み、ポケット小僧が楽しかった。怪人二十面相が好きで、後に戯曲の3作品にも登場させた。「鏡地獄」──不思議な気がした。「パノラマ島奇談」──変わったユートピア趣味。しかし怪人二十面相が一番魅力である。
公演の詳細は月蝕歌劇団のオフィシャルサイトでご覧ください。
2001年3月
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●3月23日(金)番犬敬白
『日課・一日3枚以上』
江戸川乱歩とはどこにも接点のなさそうな SF 作家、眉村卓さんのショートショート集『日課・一日3枚以上』につきましては、すでに大熊宏俊様の「ヘテロ読誌」で懇篤な紹介がなされておりますが、第六巻が上梓されましたのを機に番犬情報でもご案内を申しあげたいと存じます。
陸続として刊行されるこのシリーズに収録されておりますのは、1997年6月、悪性腫瘍の手術を受けられた奥様のために執筆された作品群。著者の言を引けば、
手術そのものの経過は順調で、二十日余りで退院し、以後は注意して普通の生活をつづけながらの通院ということになったのだ。
病気が病気であり、こちらとしてはどうしようもない。出来るのは、事実を知っている妻に身体的・精神的苦労をさせないように努めること位である。
だが、気持ちが明るくなれば体に良いとの話も聞いた。
で……そういうことならせめて、毎日妻のために面白いショーショートを書くのはどうだろうと考え、七月十六日から始めたのだ。
必ずその日のうちに、四百字詰め原稿用紙で三枚以上の話を書き、妻に読んでもらう。
といった次第で、一日三枚以上を日課として書き継がれたショートショートが執筆順にまとめられております。一巻百編を収め、執筆点数はゆうに千を突破。SF 的発想に基づく万華鏡のごとき現代版千一夜譚であるとともに、当節のいわゆるウェブ日記の活字版といった趣をも見せる異色のシリーズとなっております。
発行日■第一巻=2000年8月8日/第二巻=9月18日/第三巻=10月20日/第四巻=11月23日/第五巻=2001年1月14日/第六巻=3月18日
体裁■ B6 判、429−497ページ
付録■卓通信(8ページ)
頒価■一冊二五〇〇円(送料込み)
発行・印刷所■真生印刷株式会社
〒559-8585 大阪市住之江区浜口西1-13-3
問い合わせ先■真生印刷株式会社堺工場
TEL:0722・27・8911 FAX:0722・28・5395
なお、第六巻の挟み込み付録「卓通信」第六号には、大熊宏俊様も稿を寄せていらっしゃいます。未見の方はこの機会にとりあえず第六巻をご購入いただき、眉村卓さんが織りなす大河ショートショートの世界にお遊びいただければまことに幸甚に存じます。
「アゲイン──怪人二十面相の優しい夜」
近藤正臣さんが老残の二十面相を演じて話題を呼んだ劇団扉座のお芝居、「アゲイン──怪人二十面相の優しい夜」が再演されることになりました。1999年秋の初演以来一年半ぶりに、4月から5月にかけて、東京、徳島、岡山、厚木で公演されるそうでございます。
劇団扉座第23回公演■アゲイン──怪人二十面相の優しい夜
作・演出■横内謙介
美術■朝倉摂
出演■近藤正臣、六角精児、茅野イサム、杉山良一、有馬自由、石坂史朗、山中たかシ、犬飼淳治、伴美奈子、中原三千代、鈴木真弓、高橋麻理、吉良咲子、佐藤累央、木下篤史、鈴木利典、村内貞介、仲尾あづさ、三村晃弘、ほか
東京公演■4月26日−5月3日/紀伊國屋サザンシアター
徳島公演■5月5日−6日/徳島県郷土文化会館大ホール
岡山公演■5月10日/岡山市立市民文化ホール
厚木公演■5月18日−20日/厚木市文化会館
劇団メッセージ■ちょっと時代錯誤の年老いた大泥棒と、かつての少年探偵団員たち。このハイテクの時代に堂々と展開される超ローテクで、レトロなバトル! 怪人二十面相に近藤正臣を迎え、扉座がロマンなき時代に贈る涙と笑いの、友情ルネサンス物語です。
ストーリー■『もう一度少年探偵団と闘いたい』 怪人二十面相の日記にそう書かれているのを発見したねこ夫人は、すっかり年老いた怪人二十面相を大泥棒として復活させるには、もう一度少年探偵団を結成するのが一番だと考える。しかし、本を読まない現代の子供たちは、怪人二十面相の存在を知らないのだ。今の子供たちでは少年探偵団を結成できないと悟ったねこ夫人たちは、かつての少年探偵団員たちにターゲットを絞り、誘拐する。それで連れてこられたのが、もと少年探偵団員の篠崎、野呂、木下だ。しかし、かつての紅顔の美少年たちも、今はやつれ果てたオッサンである。あるものは翌日ゴルフだといい、あるものはサラ金のお世話になっているという。姿も心も、少年のころとは大違いだ。少年と呼ぶに相応しい少年が現代にいないと嘆く怪人二十面相。そして、いま明らかになる怪人二十面相の滅びの美学!
詳細は扉座ホームページの「公演インフォメーションセンター」でご覧ください。
●3月4日(日)番犬敬白
『貼雑年譜』完全復刻版(続)
東京創元社の『貼雑年譜』完全復刻版がいよいよ完成いたしました。内容その他については1月1日の番犬情報をご覧いただくことにして、ここには添附冊子から戸川安宣さんによる解説の一部を引用させていただき、1989年に江戸川乱歩推理文庫の特別補巻として講談社から刊行された『貼雑年譜』との違いをご紹介申しあげたいと存じます。
さて、本書はその「貼雑年譜」のうち、戦前の分二冊を、できる限り原本に忠実に復刻したものである。
この企画は八年前にも一度試み、成就しなかったのだが、手作りに近い作業を必要とするから、確かな技術を持った職人のいる間に、と考え、今回、実現に踏み切った次第である。
この復刻作業は「江戸川乱歩推理文庫」の刊行にあわせ、講談社によって企画されたことがある。そして、カラーによる撮影までなされたという。しかしこの試みは断念され、モノクロにより撮影がし直され、それが同文庫の特別補巻として一九八九年七月に刊行されている。因みにこのときの定価(税込み)は三〇〇〇円だった。
講談社版は、やはり二巻目までを一冊に纏めたものだが、全ページを復刻したものではない。それは現物を前に検討してみるとやむを得なかったことがよくわかる。講談社版で割愛されているページは、台紙に貼り切れない大きさの新聞などは半分に折り、冊子物は最終ページを台紙にぺたりと貼ってページを繰って読めるようにしてあり、葉書などは天を貼って、表書きも裏の本文も読めるようにしてあり……といった具合の、貼り込みがあるページなのだ。これを完全に復元するためには、原本どおり別紙に印刷した物を貼り込まなければならない。製版印刷も大変だが、なにより製本が問題なのである。これは機械ではできない。一冊一冊作っていく手作業でなければならない。その部分を省略したのが、講談社版だったのである。
すなわち、講談社版は一部割愛されたモノクロームでの二次元的復元、東京創元社版は省略なしのフルカラーによる三次元的復元、と対比することができましょうか。いずれにいたしましても今回の『貼雑年譜』完全復刻版は、その内容が今後の乱歩研究にもたらすであろう裨益もさることながら、刊行自体が日本出版文化史に記録されるべきひとつの事件であり、21世紀初頭におけるわが国の製版印刷製本技術の一到達点を示す資料としても貴重なものと申せましょう。本体三〇万円という眼を剥くほどの価格設定は、むろん考えようによってはきわめて廉価なものと見ることもできますものの、それでもやはり世の乱歩ファンに幾度も幾度も頭を抱えさせるものではございますが。
主人は、「なんだか勿体なくてこの復刻版をばさばさひっくり返しながらデータを取る気にはとてもなれぬ。保存用にもう一セット購入する余裕は見事にない。となると東京創元社には限定二百部完売後に単行本を文庫化するがごとき按配でモノクロ二次元簡易製本の廉価版『貼雑年譜』刊行が望まれるところであろう。講談社版『貼雑年譜』程度の造本にすれば結構廉くあがるのではないか。いまひとたびの英断を俟ちたい」と貧乏性なことを偉そうに申しております。
2001年2月
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●2月25日(日)番犬敬白
長谷邦夫講演会
江戸川乱歩 → 海野十三 → 海野十三の会 → 徳島県板野郡北島町立図書館・創世ホール、という驚異の、しかも事情をご存じない方にはどんな関連があるのかさっぱり不明なつながりをたどって、漫画家・長谷邦夫さんの講演会をご案内申しあげます。
日時■3月4日(日)午後2時30分開演
会場■北島町立図書館・創世ホール 3階多目的ホール
〒771-0207 徳島県板野郡北島町新喜来字南古田91
phone:088・698・1100 fax:088・698・1180
入場料■無料
主催■北島町立図書館・創世ホール
演題■漫画風雲録・トキワ荘物語
主催者メッセージ■1952年、東京都豊島区椎名町に木造モルタル2階建てのアパートが建てられた。そのアパートには、1953年から61年にかけて十数人の漫画家が住んだ■アパートの名はトキワ荘。手塚治虫、石ノ森章太郎、赤塚不二夫、藤子不二雄、寺田ヒロオ、水野英子、鈴木伸一など、わが国の漫画界を背負うそうそうたる漫画家がここから巣立った■みな貧乏だったが、血のにじむような努力を怠ることはなかった■長谷邦夫氏はつのだじろうと共にトキワ荘通勤組の1人である。氏は漫画専門誌『COM(コム)』のパロディ漫画で一世を風靡し、赤塚不二夫の片腕として活躍した■講演では無名時代のつげ義春のこと、貸本時代の苦労などにも触れていただきます。日本漫画史の貴重な証言を聞く好機です。皆さん、万難を排して多数ご参集下さい■図書館では講演会にあわせ関連貴重資料の特別展示も予定■当講演は、各方面のご協力を得て県内マスコミはじめ「デイリースポーツ」四国瀬戸版、『SF マガジン』、『彷書月刊』等で多面的な広報宣伝を展開中です。圧倒的なご支援を!(「創世ホール通信」73号から引用)
といった次第で、名張人外境も遅ればせながら多面的な広報宣伝の一翼を担わせていただきました。乱歩邸 → トキワ荘、という豊島区つながりもございますことですし。
●2月8日(木)番犬敬白
「ダ・ヴィンチ」3月号
本とコミックの情報誌「ダ・ヴィンチ」(メディアファクトリー発行)に有栖川有栖さんがご連載中の「有栖川有栖ミステリー・ツアー」、3月号掲載の第十四回で「三重県・名張市」をおとりあげいただきました。
このミステリーツアー連載五回目に池袋の江戸川乱歩邸(平井邸)を探訪したが、〈わが国の探偵小説の父〉がらみで赴かなくてはならない場所がもう一ヶ所ある。乱歩生誕の地である名張だ。連載当初から、いつか行く、と決めていたカードをようやく切る。
とのことで、名張市立図書館や江戸川乱歩生誕地碑、乱歩ゆかりの料亭清風亭、さらには鮎川哲也先生が名張を舞台に執筆なさいました『戌神はなにを見たか』に登場する太郎生という山間の何もない土地、ついでのことに名張市立図書館の『江戸川乱歩執筆年譜』までなんと写真入りで、じつにご丁寧にご紹介をいただいておりまして、ありがたき幸せに存じます。定価は四五〇円。ご購読をお願い申しあげる次第でございます。
●2月3日(土)番犬敬白
「渡辺啓助100」
めでたく満百歳をお迎えになった渡辺啓助さんに、その名も「渡辺啓助100」という一冊が捧げられました。『新青年』研究会が発行する「『新青年』趣味」の別冊でございます。渡辺さんの小説百点、エッセイ三点、詩集二点を研究会メンバーが丹念に発掘紹介し、未発表小説「真夜中の二時」や写真集「渡辺啓助アルバム」も収録。おなじみの村上裕徳さんは「渡辺啓助の一〇〇年」の執筆も手がけられ、索引類がまたじつに重宝。同研究会渾身の一冊、さらには作家と研究者の幸福な関係を示す一冊と申せましょう。
体裁■B5判、77ページ
頒価■一三〇〇円(送料とも)
『新青年』趣味編集委員会のメッセージ■啓助先生一〇〇年の歩みを一〇〇作品で語った、この一冊を読むことによって、啓助作品の魅力を十二分に知っていただけるきっかけとなれば、望外の幸せを感じます。(編集後記から引用)
問い合わせ・申し込み先■『新青年』研究会事務取扱部 末永昭二様
e-mail:ssuenaga@tt.rim.or.jp
詳細は『新青年』研究会のホームページ「Pub Antiquarian」でご覧ください。
●2月1日(木)番犬敬白
BDバッジ復刻版
東京創元社の『貼雑年譜』完全復刻版は比較的ささやかながら新聞広告も打たれまして、いまや遅しと完成を待ちかねていらっしゃる乱歩ファンもおいでのことと存じます。昨日、主人のもとにも同社からおたよりと郵便振替用紙が届けられ、それを見た主人は心持ち青ざめたようでございました。
それはさておき、江戸川乱歩にちなんだもうひとつの復刻版をご紹介申しあげましょう。少年探偵団御用達、BDバッジの復刻版でございます。光文社版少年探偵団全集の景品として世に送られたあのバッジが、燦然たる輝きとともに復活してまいりました。
古典冒険小説研究会のプロデュースでよみがえりましたBDバッジ復刻版は、直径二センチ、ゴールドとシルバーの二タイプで、いずれもビロードケース入り。ゴールドタイプは限定三十個、シルバータイプは限定百個の復刻で、価格はどちらも一個三〇〇〇円(送料込み)。ゴールドとシルバーのセットでお買い求めの場合、一セット六〇〇〇円でプラスチックケース一個がおまけについてまいります。
ただし、ゴールドタイプは残り十個あまりとのことでございますので、購入ご希望の方はまず往復はがきで在庫をご確認くださいますようお願い申しあげます(受付は先着順となっております)。シルバータイプは現金書留または郵便為替にてお申し込みください。
問い合わせ・申し込み先■〒619-0245
京都府相楽郡精華町下狛上新庄50-1
住田忠久様方 古典冒険小説研究会
2001年1月
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●1月29日(月)番犬敬白
渡辺啓助100歳記念展
1901年1月20日のお生まれとお聞きしますから、めでたく満百歳をお迎えになった渡辺啓助さんの個展がきょう、東京で開幕いたします。
主催■鴉の会
協力■東京創元社
第一会場■ギャラリー「オキュルス」
港区高輪3-10-7 Tel:03-3445-5088
第二会場■啓祐堂ギャラリー「杉」
港区高輪3-9-8 Tel:03-3473-3255
会期■1月29日(月)−2月10日(土)
午前11時−午後6時30分 会期中無休
詳細は啓祐堂のホームページでご覧ください。
●1月25日(木)番犬敬白
『彗星との日々』と『プラネタリウムにて』
以前にもご案内いたしましたが、中井英夫最後の助手、本多正一さんの著書二冊をご紹介申しあげます。
『彗星との日々 中井英夫との四年半』
発行日■1996年2月29日
本の大きさとページ数■縦17.0センチ×横18.5センチ、七十一ページ
帯の惹句によりますと■「死んだらどこへ行くんだろう」 中井英夫の最晩年、その生と死を見つめ続けた記憶の轍 最期の日々に捧げられた光と影の一冊の供物
価格■二三〇〇円(税・送料込み)
『プラネタリウムにて 中井英夫に』
発行日■2000年2月29日
本の大きさとページ数■縦19.5センチ×横12.5センチ、百七十三ページ
帯の惹句によりますと■アンチ・ミステリを謳い、今なお多くの作家を呪縛しつづける戦後推理小説の白眉『虚無への供物』の作者・中井英夫。この“奇妙な作家”の最期を看取った本多正一が写真と文章で綴る晩年の日々。未公開写真多数含む写真300点掲載
価格■二三〇〇円(税・送料込み)
『彗星との日々』は自費出版による刊行であり、『プラネタリウムにて』は版元の葉文館出版が倒産いたしましたことから、どちらも著者への直接申し込みがもっとも確実な入手方法となっております。そのことをお伝えする意味もありまして、ここにあらためてご紹介を申しあげる次第でございます。
購入申し込みは郵便振替でお願い申しあげます。
口座番号■00180-6-158655
加入者名■本多正一
郵便振替用紙の通信欄にご希望の本のタイトルを明記し、サイン(ならびに為書)のご要望がございましたらその旨もお書き添えください。
●1月20日(土)番犬敬白
藤田新策個展
ポプラ社からリニューアル刊行された「少年探偵・江戸川乱歩」全二十六巻の装幀を手がけられた藤田新策さんの個展が、東京・北青山のギャラリーハウスマヤで開催されております。「INNERZONE JAPAN ─日本幻景─」と「東京の怪人とパリの怪盗」の二部構成。「うつし世と隠世のモンタージュ」による迷宮世界をご堪能いただけます。
会場■ギャラリーハウスマヤ
東京都港区北青山2-10-26
地下鉄銀座線外苑前駅下車 三番出口から徒歩四分
Tel:03-3402-9849
会期■1月15日(月)−27日(土)
午前11時30分−午後7時(土曜は午後5時) 日曜休廊
詳細は同ギャラリーのホームページでご覧ください。
●1月18日(木)番犬敬白
戸田勝久展
名張市立図書館「江戸川乱歩リファレンスブック」の装幀をお願いしております神戸市在住の画家、戸田勝久さんの個展「静物画として──戸田勝久展」が1月20日、京都市の蔵丘洞画廊で開幕いたします。
会場■蔵丘洞画廊
京都市中京区御池通河原町西入ル
地下鉄東西線市役所前駅下車 本能寺会館一階
Tel:075-255-2232 Fax:075-255-1786
E-mail:zokyudo@meix-net.or.jp
会期■1月20日(土)−28日(日)
午前10時30分−午後6時30分 会期中無休
蔵丘洞画廊のメッセージ■独特のシュールな画風で知られる氏による初の静物画展。画家としてさらなる領域に挑む、氏の新作をご高覧ください。
出展作の一点、「ささやかな季節」(2F)をご高覧ください(いささかシャープネスに欠ける画像となっております点はご容赦いただきたいと存じます)。
●1月15日(月)番犬敬白
『孤島の鬼』と「新青年傑作選」
あまり間があくのも何でございますので、半月ぶりにご挨拶を申しあげることにいたしました。
昨年末からこちら、角川文庫で江戸川乱歩関連のリニューアルが相次いでおります。
12月には角川ホラー文庫『孤島の鬼』が刊行されましたが、これは角川文庫の『陰獣』(昭和48年)から「孤島の鬼」を、『蜘蛛男』(同49年)から「湖畔亭事件」をピックアップして再編集した一冊でございます。
「私は「孤島の鬼」をこの角川文庫で初めて読んだのだが、いや怖かったこと怖かったこと。あ。「孤島の鬼」の本文校訂を進めなければ」と主人が申しております。
さらに、中島河太郎先生の編により昭和52年に刊行されました角川文庫「新青年傑作選集」(全五冊)が「新青年傑作選」としてリニューアルされるらしく、選集2・推理編2『モダン殺人倶楽部』が『君らの狂気で死を孕ませよ』(「陰獣」所収)と改題のうえ角川文庫に再登場いたしましたのも、やはり昨年12月のことでございました。
明けて1月には、選集4・怪奇編『ひとりで夜読むな』(「芋虫」所収)が、こちらはタイトルもそのままで角川ホラー文庫にお目見えするという、いささかややこしい状況とはなっております。
主人は、「君らの狂気で死を孕ませよ、か……。譬えは古いが、全共闘くずれがメガホンを取った妙に難解なピンク映画みたいなタイトルではないか。それにしても、どうしてこの時期に「新青年」なのかな」と申しております。
●1月1日(月)番犬敬白
『貼雑年譜』完全復刻版
新世紀を迎えました番犬情報、劈頭にはやはりこの話題が相応しかろうと存じます。
東京創元社が社運を賭けて(かどうかは不明ですが)出版を決断した江戸川乱歩『貼雑年譜』完全復刻版(二分冊)が、近くいよいよ刊行されます。
克明のうえにも克明に「自己」を収集したスクラップ帳のうち、乱歩自身が筆で書き込みを加えた最初の二冊を復刻。第一分冊には明治27年から昭和3年まで、第二分冊には昭和4年から15年までの記録が貼り雑ぜされております。
この二冊は平成元年7月、講談社江戸川乱歩推理文庫の特別補巻として、一冊にまとめたものが出版されましたが、モノクロ写真による復元であったうえ、判型が縮小され、割愛されたページなどもあって、いささか不完全な内容でした。「完全復刻版」と銘打った今回の出版は、「可能な限り原本に近い形で復元」することをめざしたもので、空前絶後の試みと申せましょう。
判型■ A3 判変型(天地29.5センチ×左右43.3センチ)
造本■上製多色布装/二分冊セット(解説小冊子添付)
中性保存用(ph8.5)タトウ式堅牢箱入り
用紙■ OK プリンス上質
印刷■オフセット多色刷り
頁数■第一分冊=一六八頁/第二分冊=二一四頁
本体価格■三〇〇、〇〇〇円(消費税別/分割・分売不扱い)
問い合わせ先■東京創元社
〒162−0814 東京都新宿区小川町1−5
電話 03・3268・8231