2007年11月
5日 世田谷文学館で植草甚一展
11日 丹羽みさとさんの「乱歩の和本コレクション」
13日 天城一さんのご冥福をお祈り申しあげます
15日 丸尾末広さんの「パノラマ島綺譚」
16日 山本周五郎探偵小説全集『少年探偵・春田龍介』
19日 横溝正史関連情報ならびに出久根達郎さんの『作家の値段』
22日 また『作家の値段』ならびに柳家喬太郎さんの「赤いへや」
26日  「国際乱歩コンファレンス」ならびにフランス映画「陰獣」
28日 東元さんの「人間椅子」それから「文蔵」乱歩特集
 ■11月5日(月)
世田谷文学館で植草甚一展 

 夕刻に時間の取れぬ日がつづき、あれこれじたばたしておりましたので、結構ひさしぶりの更新となってしまいました。

 メールでお知らせをいただきました展示会、とりいそぎご案内申しあげます。世田谷文学館で「植草甚一/マイ・フェイヴァリット・シングス」が開かれております。11月25日まで。

 ウェブニュースはこちら。

植草甚一展:ゆかりの品々集め、東京・世田谷文学館で開催
 「J・J氏」の愛称で親しまれた植草さんは没後28年、来年で生誕100年を迎える。企画展では、国内外の古書やレコードなどの植草さんのコレクションをはじめ、文章とコラージュで構成された手紙や原稿も初めて公開されている。「映画」「ミステリー」「ジャズ」「エディトリアル」の4部構成で、映画評論家、故淀川長治さんや、江戸川乱歩ら親交のあった人々が植草さんについて語ったコメントやエピソードを紹介しながら、71年の生涯に残した膨大な仕事と趣味の世界を振り返る。
毎日 jp 2007/10/29

 乱歩関連では、立教大学江戸川乱歩記念大衆文化研究センターの協力で、植草甚一から乱歩に送られた洋書、その本に挟まれていたメモ、といったあたりが展示されているそうです。


 ■11月11日(日)
丹羽みさとさんの「乱歩の和本コレクション」 

 いまごろかよッ、シリーズも第何弾になるのかうろおぼえ。

 「東京人」11月号の話題です。表紙はこんな感じ。メールでお送りいただいた画像をちゃっかりそのまま使用しております。

 内容的にはこんなあんばい。

関連文献
乱歩の和本コレクション 丹羽みさと
東京人 11月号(22巻12号)
11月3日 都市出版
特集《大江戸出版繁昌記 八百八町は夜も眠れず》

 丹羽みさとさんは立教大学大学院文学研究科博士課程にご在籍、近代文学における江戸文学の受容あたりがご専門とのことです。「乱歩の和本コレクション」から、乱歩作品と和本との関係について記されたパートを引用。

 芥川龍之介や織田作之助のように、真正面から古典を題材にした小説を描きはしなかったが、大正十四年に発表した「D坂の殺人事件」や「心理試験」には『大岡忠相比事』『大岡美談』などに記された大岡越前守の名前が見られる。また同年の「百面相役者」にも平田篤胤の『古今妖魅考』が挙げられているように、乱歩は古典、特に江戸時代の作品について言及することがしばしばあった。ほかにも自信作のひとつである「押絵と旅する男」(昭和四年)には、井原西鶴の『好色五人女』などにも取り上げられている八百屋お七が押絵人形として登場する。また昭和三年に発表し、好評を博した「陰獣」のタイトルはその意味に対してさまざまな憶測を呼んだが、乱歩は後年、山岡元鄰の『百物語評判』巻三に「ねこまたとはその経あがりたる名なり。陰獣にして虎に類せり」と記してあることを挙げ、「陰獣」とはつまり猫であると述べている(「猫町」『小説の泉』第四輯、昭和二十三年九月)。これらは和本であるが、「孤島の鬼」(昭和四〜五年)の登場人物作成のヒントとなった『虞初新志』や『子不語』、また一人二役のトリックを用いた「猟奇の果」(昭和五年)に類する『捜神後記』など、江戸時代に日本で刊行された漢籍に対しても、乱歩は目を配っている(「怪談入門」『宝石』昭和二十三年六月〜二十四年七月)。

 「RAMPO Up-To-Date」には本日、こんなのも記載しました。

作品収録
目羅博士
ブキミな人びと
11月1日
 ランダムハウス講談社 ランダムハウス講談社文庫
編:日本ペンクラブ 選:内田春菊
旧版:福武書店 福武文庫 1992年12月16日
初出:文芸倶楽部 探偵小説と滑稽小説号(37巻5号) 1931年4月5日

 それでは本日はこのへんで。


 ■11月13日(火)
天城一さんのご冥福をお祈り申しあげます 

 天城一さんが9日、逝去なさいました。けさの新聞で訃報に接しました。中日新聞オフィシャルサイトに掲載された共同通信の配信記事。

 記すべきことは少なからずあるような気がいたしますが、とりあえずご冥福をお祈り申しあげたいと思います。


 ■11月15日(木)
丸尾末広さんの「パノラマ島綺譚」 

 まったくつるべ落としである。うかうかしてるとすぐに陽が沈んでしまいます。

 「コミックビーム」に連載されている丸尾末広さんの「パノラマ島綺譚」はいよいよ佳境。

漫画
パノラマ島綺譚 丸尾末広
コミックビーム 11月号(13巻11号)
11月1日 エンターブレイン
連載第5回(第六章)
原作:パノラマ島奇談

漫画
パノラマ島綺譚 丸尾末広
コミックビーム 12月号(13巻12号)
12月1日 エンターブレイン
連載第6回(第七章)
原作:パノラマ島奇談

 11月号と12月号では、当代を代表する絵師の流麗な筆致でパノラマ島の全貌が鮮やかに描き出されていて、原作よりもディテールはくっきり。細部の考証や肉づけも行き届いている印象です。次号で完結し、いずれ単行本になるはずですが、立ち読みででもぜひご一覧を。


 ■11月16日(金)
山本周五郎探偵小説全集『少年探偵・春田龍介』 

 いまごろかよッ、シリーズたしか第六弾。

 作品社から山本周五郎探偵小説全集の刊行がはじまりました。第一回配本は『少年探偵・春田龍介』。

 いまごろかよッ。

 つか、もう第二巻が出てんじゃね?

 ていうか、乱歩に関係あるのかよッ。

 いろいろなお叱りを甘受しながら説明を進めたいと思いますが、上の画像をクリックすると版元のサイトの紹介ページが開きますので、そのページの下のほうに掲載されている末國善己さんの「本全集について」をお読みいただければ、まったく予期してなかったけどいまや出るべくして出たというしかないこの全集についてよく知ることができます。同じページで収録作品も紹介されております。

 ですからここでは全集の構成をご案内。

山本周五郎探偵小説全集 全六巻・別巻一
第一巻 少年探偵・春田龍介
第二巻 シャーロック・ホームズ異聞
第三巻 怪奇探偵小説
第四巻 海洋冒険譚
第五巻 スパイ小説
第六巻 軍事探偵小説
 別巻 時代伝奇小説

 11月には第三巻が出て、完結は来年3月の予定となっております。個人的に面白いかな、というか、乱歩作品と照応させてみると面白いかな、と思われるのは、意外に軍事探偵小説の巻であったりするかもしれません。

 第一巻『少年探偵・春田龍介』には昭和5年、「少年少女譚海」に発表された「黒襟飾組の魔手」(「襟飾」は「ネクタイ」とお読みください)が収録されていて、これは1999年に出た新潮文庫『怒らぬ慶之助』で読むことができるそうですが、これ以外の収録作品はいずれも初刊となります。

 今年5月に出た出久根達郎さんの『作家の値段』(講談社)から引用。

 昭和五年、博文館発行の「少年少女譚海」という月刊誌の八月号に、文庫判よりひと回り小さい(縦十三・三センチ、横七・三センチ)四十ページの「特別付録」がついた。
 「少年探偵 黒襟飾組の魔手」という、挿絵入り読み物である。表紙には作者名がないけれど、扉に、「山本周五郎」とあり、画家は「加東三郎」とある。
 実は、つい八年前まで、山本周五郎にこのような作品があるとは、全く知られていなかった。周五郎研究の重鎮、木村久邇典氏でさえ、つかんでいなかった。その木村氏が、たまたま送られてきた古書目録に目を通していて、あっ、と驚いた。先の「特別付録」が掲載されていたからである。
 平成九年一月八日付、東京新聞朝刊で、木村氏はこう語っている。「こんな本が、あったのかと……。すぐに予約の電話を入れました。少し高価でしたが、押さえておかないと他に流れて、目にすることもできなくなりますから」
 新聞記事のタイトルは、「66年ぶり発見 幻の探偵小説」「研究第一人者も『存在すら知らなかった』」「周五郎 極貧時の短編」である。
 木村氏は無事に入手することができた。「早い者勝ち」であるから、まごまごしていると、「他に流れて、目にすることもできなくな」るところだった。
 売った古書店主の談話も出ている。
 「さすが山本周五郎研究の第一人者ですね。木村さんの著書は愛読していただけに、うれしかったですね。今後のためにも納まるべきところに納まったという感じです。ぜひ世に出してほしい」
 この古書店主とは誰あろう、おなじみの、「龍生書林」主、大場さんなのである。

 以下、この大場さんが同じく少年雑誌の別冊付録「探偵小説 シャーロック・ホームズ」を発見したゆくたてが綴られますが、つづきは『作家の値段』でお読みください。その「探偵小説 シャーロック・ホームズ」は先月刊行されました山本周五郎探偵小説全集第二巻『シャーロック・ホームズ異聞』に収められておりますので、興味を惹かれたとおっしゃる方はぜひどうぞ。

 出久根さんの『作家の値段』にはじつは乱歩を扱った章もあるのですが、その「少年探偵団の夏」と題された章のご紹介がおそらくは、いまごろかよッ、シリーズ第七弾になるものと予想されます。

 まだだったのかよッ。

 いろいろなお叱りを甘受しながらおいとまを告げたいと思います。


 ■11月19日(月)
横溝正史関連情報ならびに出久根達郎さんの『作家の値段』 

 お知らせです。

 2004年11月23日、神戸市中央区東川崎町に横溝正史の生誕地碑が建立されました。その三周年を記念した講演会が催されます。

横溝正史生誕地碑建立三周年記念イベント

日時:11月23日(金・祝日)午後2時

会場:神戸市総合福祉センター 第1会議室
   〒650-0016 神戸市中央区橘通3-4-1
   TEL 078ー351ー1464

講師:浜田知明さん(探偵小説研究家)

演題:横溝正史自選集(出版芸術社刊)に関わって

主催:東川崎ふれあいのまちづくり協議会、神戸探偵小説愛好會

 つづきまして、いまごろかよッ、シリーズ第七弾。

 出久根達郎さんの『作家の値段』です。

関連文献
9 江戸川乱歩 少年探偵団の夏 出久根達郎
作家の値段
5月21日 講談社
著:出久根達郎
初出連載:小説現代 2005年4月号−2007年3月号

 古書という視点から作家とその作品にアプローチするユニークな、というか、作家であり古書店主でもある出久根さんならではの視点から書かれたユニークな作家論。龍生書林の大場さんと出久根さんとのやりとりから引用します。

 「龍生書林」主人、大場さんから電話がきた。
 「やっぱり見つからないねえ」
 大場さんに、光文社版の「妖怪博士」を、入手できないか、依頼していたのである。
 急な注文であり、しかも、三日か四日間で探してほしい、と無理を承知の頼みである。頼む方が間違っている。
 「なつかしいよね、光文社版のシリーズ」
 大場さんも「第二期」世代である。
 「このシリーズは全巻揃うと、重版でもカバー付き美本なら、十二万から十五万円するよ」
 「へえ。あの本がねえ」
 「端本もたまに見るけど、四、五千円している」
 「田舎の友だちの家に、残っているんじゃないかなあ」
 「誰もがそう考えるんだけどね、まず、無い」
 「そうだよねえ」
 私が虎の子にして保存していた少年雑誌も、一冊残らずお袋に捨てられてしまった。汚れ防止に一冊ずつ表紙にカバーをつけ、別冊付録も散逸しないよう月号ごとに袋に入れ(何しろ薄い冊子だったから)、「宝箱」と記した茶箱にしまっておいたのに、息子が古本屋に勤めているのを知っていながら、邪魔扱いして処分してしまった。無事に残っていたなら茶箱一つで、ン百万円の値打ちだった。母親というものは、子どものお宝には価値を認めず、冷淡なのである。
 「漫画もそうだけど、乱歩の探偵物も、親には『悪書』だったからね」大場さんが笑う。
 「確かに、そうだったよねえ」
 子どもたちは、乱歩に夢中だった。チャンバラにかわって、少年探偵団ごっこに熱中した。

 子供のころの思い出など楽しげな話柄がつづきますが、おあとはぜひご購読を。

 ちなみに乱歩の著書のうちもっとも高価な古書はというと、昭和6年に博文館から出た連作小説『江川蘭子』、「およそ美本が市場に現れない探偵小説で、函付きで百五十万くらい。函無しでも二十万から三十万する」とのことです。つづきましてはやはり合作の『空中紳士』、初版再版は存在しないといわれていて、三版で三十五万から四十万。ま、別世界の話ですけど。


 ■11月22日(木)
また『作家の値段』ならびに柳家喬太郎さんの「赤いへや」 

 出久根達郎さんの『作家の値段』を読んだのは少し前のことだったので、19日付伝言を書いたときにはうっかり忘れていたのですが、この本の「15 横溝正史 「呪いの塔」の秘密」という章にも乱歩のことが出てきます。

 「呪いの塔」は昭和7年に新潮社から出版された書き下ろし長篇で、今年の3月ごろでしたか、この伝言板でもひとしきり話題にいたしました。出久根さんによりますとこの作品、昭和36年に東方社から出ているそうですので、それは知らなんだとさっそく「乱歩文献データブック」に追記したのですけれど、ネット検索で調べてみると東方社版は昭和32年が初版だったり35年が初版だったりしていて、これはどうやらあれでしょうか、奥付に何版とも何刷とも記されておらず、ただ何年何月何日発行というデータが書かれているだけのあの手の本かと推測される次第で、じつは昭和51年に出た桃源社ポピュラーブックス版の『呪いの塔』もそのパターン。じつに困ったものですが、『作家の値段』にもとづいて東方社版はとりあえず昭和36年初版ということにしておきました。

 横溝正史の話題なんですから、19日のお知らせを再掲しておきます。あしたのことです。私は近所のお宅のお葬式をお手伝いしなければならなくなり、楽しみにしていたのに行けなくなってしまいました。

横溝正史生誕地碑建立三周年記念イベント

日時:11月23日(金・祝日)午後2時

会場:神戸市総合福祉センター 第1会議室
   〒650-0016 神戸市中央区橘通3-4-1
   TEL 078ー351ー1464

講師:浜田知明さん(探偵小説研究家)

演題:横溝正史自選集(出版芸術社刊)に関わって

主催:東川崎ふれあいのまちづくり協議会、神戸探偵小説愛好會

 それでは『作家の値段』の「15 横溝正史 「呪いの塔」の秘密」から、出久根達郎さんによる「呪いの塔」論を引用。

 横溝は「陰獣」の手法を踏襲した物語を作ろうとした。乱歩の考えたトリックを、もうひとひねりした。これは「陰獣」のバリエーションですよ、と読者に示す意味で、大江春泥を思わせる大江黒潮なる人物を登場させたのだろうと思う。「陰獣」を参考にしている、と読者に思われてこそ成功する物語であり、結末なのだ。「陰獣」の大江春泥という小説家が、作者の乱歩に似ているから、読者は、いつか春泥即乱歩のつもりで読んでいる。その錯覚につけこんで成功した小説なのである。横溝はそこを見習ったといってよい。
 その上で私が惜しいと思うのは、「壁図書館」の使い方である。これを読んでいる白井三郎の空想力を、物語の柱にしたら面白かったと思う。新聞は事実を伝えるが、「古い新聞」はむしろ空想を誘うのではないか。具体的にトリックを明かせないので、何とも歯がゆいのだが、実体験を元に小説を書くのでなく、新聞記事によって醸しだされた怪しい物語、それを空想するのが私だとすると、第三者が私の空想を盗んで小説に書いてしまう。つまり、「壁図書館」の目に見えぬ効用を前面に打ち出すべきだった。
 そうすれば、乱歩の「陰獣」を上回る、複雑で名状しがたいトリックになったのではないか。

 そうかなあ、と思わないでもありませんが、古書にあんまり興味のない私でもすこぶる面白く読めました『作家の値段』。登場作家は司馬遼太郎、三島由紀夫、山本周五郎、川端康成、太宰治、寺山修司、宮澤賢治、永井荷風、江戸川乱歩、樋口一葉、夏目漱石、直木三十五、野村胡堂、泉鏡花、横溝正史、石川啄木、深沢七郎、坂口安吾、火野葦平、立原道造、森鴎外、吉屋信子、吉川英治、梶井基次郎といったところです。ついでですから、中日新聞と東京新聞に掲載された樽見博さんの書評「古書を読み解く確かな目」もどうぞ。

 つづきましては落語の話題。乱歩作品を原作にした柳家喬太郎さんの新作落語「赤いへや」が CD になりました。

笑いたい:今日のお題 柳家喬太郎 ドキドキじっくり大人の落語
 「やっぱり落語が好きだから、やってみたいからできるんだと思う」と、落語のさまざまな可能性に挑んできた。「乱歩作品なら何でもどうぞ」と遺族の許可を得て昨年9月に開かれた落語会「乱歩作品集」で、喬太郎が選んだのは「赤いへや」だった。

 「ゾクゾク感がありました。現代の作品としてやりたかった。中学生のころ、横溝正史ブームがあったんですが、同じように自分の周りでは乱歩にも人気があって、なかでも『赤いへや』はちょっとしたブームだったんです。知的な部分、トリックを表現したかった」という。

 自作ではなくても、原作をそのまま演じるというわけではない。「高座でやりやすいように、登場人物を噺家(はなしか)に変えました。噺家を主人公にすることでリアリティーを出したかった。さげ(オチ)もちょっと変えて、あえて原作にある、どんでん返しを使わなかった。僕らの仕事は原作を語りによって伝えるのではなくて、落語の芸として伝えること。こうすればお客さんは飽きないだろうと。乱歩の文章と違う魂が宿ったと思う」

毎日 jp 2007/11/17

 「柳家喬太郎落語集 アナザーサイド Vol.1」はきのう発売されたみたいです。詳細はコロムビアミュージックエンタテインメントオフィシャルサイトのこのページでどうぞ。

 おあとはウェブニュース二連発。

レトロな小路、昭和30年代風
 鳥羽市の「鳥羽みなとまち文学館」に昭和情緒が漂う小路(こう・じ)が完成し、20日に内覧会が開かれた。

 文学館は、市出身の画家で風俗研究家の岩田準一の生家を、鳥羽商工会議所が整備し、02年にオープンした。

 岩田は探偵小説の草分けとして知られる江戸川乱歩と交流。乱歩がこの家に滞在したこともあり、数多くの貴重な資料が展示されている。

asahi.com 2007/11/21

鳥羽みなとまち文学館:昭和30年代イメージ、路地裏再現 小路が完成 /三重
 岩田が探偵小説家、江戸川乱歩(1894〜1965)と叙情画家、竹久夢二(1884〜1934)と深い交流があったことから02年に岩田邸を文学館として整備。その後、「乱歩館・鳥羽文学ギャラリー」、東京・池袋の乱歩邸にあった土蔵を模した「幻影城」を相次いで整備した。

 完成した小路は、幅1〜3メートルのL字形の通路で、両側の板塀は「味の素」や「たばこは現金で」「ナショナル電球」などと書かれたほうろう看板計24枚が取り付けられた。さらに、当時の映画のポスター、紙芝居「黄金バット」の自転車などが置かれている。文学館周囲の民家の塀にもほうろう看板が設置された。費用は約800万円。

 小路は国土交通省の観光ルネサンス事業の補助を受け、鳥羽商工会議所が整備を進めていた。今年度中に文学館の全体整備は完了する予定。

毎日 jp 2007/11/21

 小路の完成はご同慶のいたりです。鳥羽と名張との比較みたいなことは、機会があればブログのほうに記しましょう。

 それでは今夜はお通夜のお手伝いということになっておりますので。


 ■11月26日(月)
「国際乱歩コンファレンス」ならびにフランス映画「陰獣」 

 本日のお知らせ。12月7日から9日までの三日間、立命館大学衣笠キャンバスで「国際乱歩コンファレンス 江戸川乱歩とグローバル文化としてのモダニズム」が催されます。主催は立命館大学国際言語文化研究所。

 ポスターがこちら。クリックするとでっかい PDF ファイルが開きます。

 日程とテーマはこんな感じです。

国際乱歩コンファレンス

12月7日(金)
・セッション I(13:00−18:00)
 1920年代−30年代の国際探偵小説と日本探偵作家

12月8日(土)
・セッション II(10:00−12:30)
 乱歩、昭和エログロナンセンスの探偵小説と映画/映像メディア
・セッション III(14:40-18:15)
 グロバールなメディア社会における、乱歩文学の翻訳、影響、パロディー、再編成

12月9日(日)
・セッション IV(10:00−13:00)
 乱歩研究の前線:書誌、作品再分析、乱歩資料発掘とその資材の活用について

 詳細はポスターの画像でご確認ください。

 乱歩コンファレンスは2001年3月にシカゴで第一回、2007年4月にニューヨークで第二回が開催されたグローバルな発表と議論の場で、今回が第三回、といったようなことは立命館大学オフィシャルサイトの「国際言語文化研究所」のページで知ることができます。私は乱歩をめぐる海外の潮流といったことにはとても暗いため、このページを読んでたいそうびっくりいたしました。

 乱歩のグローバル化はアカデミズムの世界のみにはとどまらないようです。今年の春ごろから伝えられていた「陰獣」映画化の話が、いよいよ具体化してきました。

乱歩「陰獣」復活!フランスで映画化
 江戸川乱歩の「陰獣」がフランスで映画化されることになった。「INJU」のタイトルで、「運命の逆転」などで知られるバルベ・シュロデール監督(66)がメガホンを取り、ほとんどを日本で撮影。「バベル」にも出演した原田佳奈(25)がオーディションで役を射止めた。関係者は来年のカンヌ国際映画祭への出品を視野に入れており、原田にとっても飛躍の1本となりそうだ。

 東京女子大卒業後の04年、「私を主演に映画を撮って下さい」と国内外の映画監督に売り込みをかけ、“就活女優”として話題を呼んだ原田が大きなステップを踏む。

 7月に「芸子」役を決めるオーディションが日本で行われ、見事に合格。「浴衣を着て行ったんですけど、印象が役に近かったのかな?あとで監督にも“キュートだったよ”と言われました」と笑顔を見せた。実年齢より9歳も若い16歳という設定にも「自分でもイケてると思いますよ」と自信を示した。

Sponichi Annex 2007/11/23

 この記事によれば、主人公の寒川は自著の PR のために来日したフランス人の探偵小説家、小山田静子はその主人公が京都で出会った芸者という設定になるそうです。楽しみなような、不安なような。


 ■11月28日(水)
東元さんの「人間椅子」それから「文蔵」乱歩特集 

 本日はまず乱歩原作漫画のお知らせ。2ちゃんねるの「【緑衣の鬼】 江戸川乱歩 第十一夜」で教えてもらった情報です。

 「BJ 魂」最新号に東元さんの「人間椅子」が掲載されております。「赤い部屋」というタイトルの連作になっているらしく、「人間椅子」もまた赤い部屋のなかで語られる「何事か怪異な物語」の一篇に仕立てられております。

 2ちゃんねる乱歩スレには「オクに乱歩文献データブックが出ているが、役に立つのだろうか」とのレスも見られますが、役に立つかどうかは別にして、当サイト「乱歩文献データブック」のほうが増補を経てはるかに充実した内容となっていることをお伝えしておきたいと思います。

 つづきましては「文蔵」11月号、乱歩特集の話題です。だいたいがこんな感じです。

雑誌特集
二十面相な作家 江戸川乱歩のパノラマワールド
文蔵 11月号(26号)
11月19日 PHP 研究所
企画・構成:造事務所
68頁
インタビュー 古びないのは、現実から少しジャンプしているから 綾辻行人 千街晶之(取材・文)、稲垣徳文(写真撮影)
エッセイ& イラスト 乱歩の漫画化作品について
 高橋葉介
乱歩・パノラマ島の楽しみ方 その生きざまと作品がよくわかる
 髭照雄(イラスト)
江戸川乱歩とは、何者だったのか? 高橋一人(構成・文)
パノラマワールド別作品ガイド 乱歩の世界3つの入口 奈落一騎・高橋一人(構成・文)
作家以外の二つの顔 幻影の城主・乱歩の夢見たもの 奈落一騎
東京「事件の舞台」地図 佐藤賢二(構成)、髭照雄(イラスト)
旧江戸川乱歩邸を探訪 造事務所(取材・文・写真)
ジャンル別 いま読める全作品リスト 佐藤賢二(構成)

 もうひとつ、こんなのも出ておりました。二十年ほど前に出た「國文學」別冊「幻想文学の手帖」の改装版です。

関連書籍
知っ得 幻想文学の手帖
10月25日 學燈社
編:國文學編集部
旧版:國文學 3月臨時増刊号《幻想文学の手帖》33巻4号(1988年3月25日)
幻想文学キーワード
 きみを、どこかへアッシャー・イン
 高山宏
知性狂乱
 江戸川乱歩 パノラマ島綺譚 瑰麗なるユートピア
 浜田雄介

 つづきましてウェブニュース。11月24日に催されたミステリー講演会「なぞがたりなばり」の記事です。

講演会:「なぞがたりなばり」 作家の北森鴻さん「旅とミステリー」と題し /三重
 ◇乱歩の「月と手袋」をいつか超えたい

 ミステリー講演会「第17回なぞがたりなばり」(名張市主催)が同市蔵持町里の市武道交流館で開かれ、作家の北森鴻(こう)さんが「旅とミステリー」と題して話した。北森さんは名張生誕の江戸川乱歩の作品に少年時代から親しみ、「彼の『月と手袋』を超える作品をいつかは書きたい」と話した。

毎日jp 2007/11/28

 講演を拝聴していて、「月と手袋」ってそんなすごいか? と思わないでもありませんでしたっけ。講演のあと、東京よりも早く名張市で購入が可能になったという最新刊『香菜里屋を知っていますか』にサインをしていただきましたところ、封筒に入った北森さんのメッセージカードを頂戴しました。こっそり一部引用いたしますと、「われわれミステリ作家は等しく大乱歩の遺伝子を受け継ぐものです」、で、「その出生の地で講演させていただいた喜びを、どう表現していいかよくわかりません」。ここまでおっしゃっていただけると、名張市民のひとりとしてとても嬉しく思います。