新青年

大正15・1926年

編輯局より  神部
◆十月増大号の評判はすばらしいものだつた。多数の読者諸君から激賞讃美の手紙を寄せられたことを、爰に厚く感謝します〔。〕殊に江戸川乱歩氏の「パノラマ島奇譚」は、第一回にしてすでに読者を魅了したかの感がある
◆それにしても、一読者からの投書には、パノラマ礼讃のあまり「この名作全篇を一度に掲載しないやうな、物惜しみの編輯者よ!地獄へ行け!」とあるにはいさゝか驚いた。
◆事実、原稿が記者の手許にあるのなら、腹も切らうが、続稿は作者乱歩氏の幽玄はかり知れぬ頭の中にあるのだから仕方がない。マア地獄へも極楽へも行かずにすむ訳だが、何にしても乱歩氏近来の大力作だけに、号を追ふて、定めし諸君を魅惑せしめずにはおかぬだらう。
初出・底本:新青年 大正15・1926年11月号(7巻13号)
掲載:2009/02/12

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