新青年

昭和3・1928年

編輯局より  横溝生
◇「陰獣」は果して素晴らしい評判である。編輯者の机上には既に投書が山積してゐる。中には、この小説を一度に掲載しない編輯者を目して、詐欺呼ばわりをした手きびしいものもある。これは増刊の編輯後記にも書いた通り、雑誌として止むを得ない事情があるのだから悪しからず御了承下されたい。
◇今月号の「陰獣」の後に書かれた乱歩氏の追記を読まれた人人は作者のこの素晴らしい自信に、いかに驚歎されても構はない。この小説の背後に隠されてゐるあの恐ろしい秘密こそは、読者がいかなる明智を振つても恐らく解き難いものであらうからである。
初出・底本:新青年 昭和3・1928年9月号(9巻11号)
掲載:2009/02/28

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