新青年

昭和7・1932年

編輯だより J・M
◇続いて新年号だ。目下編輯部では、この意義ある一九三三年第一号を迎へるために、まるでオリンピツクにでも出掛けるやうな大はしやぎである。来年はする事が山のやうにあるのだ。最近筆を折つて、暫らく静養してゐた江戸川乱歩氏が、いよいよ明年を期して大探偵小説を本誌に寄せることとなる。毎度諸君にお約束して置きながら、実現の機に到らなかつたけれども今度こそは氏自身の覚悟のほども断乎として固い。恐らく驚天動地の作品が約束されるだらう〔。〕それから、「武州公秘話」も、前篇を終つて、また筆を新たにして後篇が出る筈である。いよいよ秘話の秘話たる豪華版でなければならぬ。その他、これまた天機洩すべからざる珍案快案続出で、一体どれをピツクアツプするか大悩みの態。などと、手前味噌ばかり並べても、諸君は本当にしないだらうが、ひとつ騙されたと思つて、御期待願ひたい。
初出・底本:新青年 昭和7・1932年11月号(13巻13号)
掲載:2009/05/31

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