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2009年1月19日(月)

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1月18日 L&S
『チェチェンへ』若松孝二監督トークショー
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 いくら確信犯的に著作権を無視するのだと宣言してみても、さすがにこれはまずいだろうと思いつつ、天下御免の全文転載。乱歩の「芋虫」が若松孝二さんの手で映画化されるそうです。乱歩関連では新春一番のビッグニュースだと思います。
 
『チェチェンへ』若松孝二監督トークショー

(2009.01.18)

2009.01.17@ユーロスペース

トークゲスト:若松孝二監督(◆)
司会:吉川正文

−本日はお越しいただきまして誠にありがとうございます。映画監督の若松孝二さんをお招きしてお話を伺って参ります。よろしくお願いいたします。

−早速ですが、若松さんは1936年生まれと言うことで、子どもの頃に戦争を経験していらっしゃいます。戦場では、いわゆる普通の人が、殺しあったり、強盗、強姦、拷問したりしてしまい、それはどこの地域でも同じようなことが起きてしまう・・・このことについてどのように思いますか?

◆僕は、終戦がちょうど、小学校3年生。仙台の大空襲のとき、少し離れていたところに住んでいて、焼夷弾が線香花火のように降ってきて、勢いよく燃えるのを遠くに見ました。そういう時代で、とにかく飯が食えない・・・毎日、じゃがいもとサツマイモしか食えない。家は百姓でしたが、米を作っても全部持ってかれてしまっ た。だから、戦争は絶対に嫌だと思っています。1972年にパレスチナに行き、今日の映画(『チェチェンへ』)と同じように、前線を歩いて取材したドキュメンタリーがあるのですが、どこも同じように若者が前線に行くわけです。前線から戦いに行き、帰ってこない人もいたし、血だらけになって帰ってきた人もいた・・・それは パレスチナのコマンド(ゲリラ隊員)ですけど・・・。1982年にはベイルート(レバノン)の、シャティーラというパレスチナ難民キャンプに(イスラエル軍による)大虐殺があって、その2日後に入ったのですが、そのキャンプというか、いわゆるひとつの村に死体の山。しかも女性と子どもだけ。何故かと訊くと、「子どもは大きくなると必ずコマンド(ゲリラ隊員)となって我々の敵になる、女性は子どもを産むから、みんな殺してしまう」と・・・。兵隊は皆若いので、殺す前に女性をレイプしたり、殺した後に火をつけたりする、など、必ずそういうことをしてしまう。そういうことを幼いときに、自分の目で見てしまったら、大きくなっても怨み辛みをずっと持ち続ける・・・パレスチナはよく自爆テロが多いといいますが、僕なんかはそういうのをある程度わかるような気がします。だから、戦争っていうのは、正義の戦争っていうのは絶対ないし、平和のための戦争もないし、戦争は殺すか殺されるしかない。

−イスラエルは2月に選挙を控えていて、支持率を上げるためにこの戦争をしている・・・事実、イスラエル国内ではこの戦争に対する支持率が9割を超えているということです。この映画の舞台、チェチェンでも、戦争のきっかけはエリツィンの支持率が低下していたことにあり、戦争を仕掛けたことで支持率が跳ね上がった・・ ・その戦争で殊勲をたてたプーチンが次の大統領になった・・・戦争が政治の道具になっているわけですよね?

◆権力を握ろうと思っている者たちに、一般の弱者が利用されている。映画でも描かれていたけれど、若い人たちが、戦争の前線に行き、装甲車に乗る。みんな若い。日本だって、かつての戦争で、学校を卒業するかしないかの若い人たちがたくさん徴兵されて行った。そういうことがあるから、政治的歴史というものをもっともっと認識してほしいと思う。3,4日前に東大安田講堂事件をテーマにしたテレビ番組があったけれど、最後に原作者の佐々淳行(大学闘争を抑える警察側の現場指揮担当者)が出てきて、「今の若者は本当に怒らなくなった。当時の若者は怒ってああいうことを起こした。なぜ、今の若者は怒らないのか」などと言っていた・・・。 おまえに言われたくないよって、取り締まっていたのはおまえじゃないかと思ったけどね(笑)。今の時代、闘争とかないし、予算取りにくいから、そんなことを言っているんじゃないかと思うよ。最近のデモは機動隊の方が多いし。

−そうですね、機動隊がデモの後をずっとくっついてきますね。日本は公安警察が頑張りすぎているのですかね!?みんな去勢されて、骨抜きにされて、逆に佐々さんのような人に焚きつけられているのではないでしょうか。

◆僕がつくった『実録・連合赤軍−あさま山荘への道程』にもあるけれど、連合赤軍のあさま山荘事件によって運動が失速した・・・。イラク戦争でもアフガンでも、日本人の若い人たちは本当に怒らなくなっている。勇気を持って立ち上がることがだんだんなくなった。それとやっぱり年配の人たち、僕たちもそうだけど、昔、こういうことがあった、なんのために起きたのかということを伝えていかないといけない。団塊世代の子どもの子どもが今の若い人たちですから。団塊の人たちは自分たちがやってきたことが後ろめたくてそっとしている。まぁ、最近になってその頃戦っていた人たち、いろいろな人たちが顔を出すようになってきて、よい傾向ではあるけれど。

−少し、話が変わりますが、戦争に借り出されるのは若い人たち。それから、チェチェンゲリラもそうですし、連合赤軍も日本赤軍もそうですが、皆若い人がやっていたわけです。それについてはどうお考えですか?

◆若くなくっちゃできないんです。戦争というか、権力者が騙すことができるのが若者。結婚して子どもが何人かいたりすると戦争に行って死にたくないと思うだろうし、自分の家族を思ったらできない。だから、ほんとにそういう若い人たちを上手くおだてて戦争に行かせる。アメリカだってそう。お金のない人たちや、マイノリティの人たちに、市民権を与えるとか何とか言いながら、どんどん戦場に送り込む・・・で、自分たち金持ちは行かないという・・・それが戦争。だから正義のための戦争なんてないんだよ。

−若者が権力に立ち向かうのは?

◆韓国では李承晩大統領を辞任に追い込む事件(1960年)があったけれど、これは高校生からはじめて、大学生にも広がったんだよね。この間の牛肉事件も高校生が動いた。日本の高校生がもしここにいたら聞いてほしいけれど、高校生なんて捕まってもたいしたことないんだから、行動を起こしてほしいよね。派遣切りに遭った人たちが公園に集まって仕事ないとかなんとか言ってごちゃごちゃしているけれど、全員で国会に突入しちゃえばいい。そしたら暖かいところで3食食えて眠れる。まぁいいとこ20日くらいの拘留。20間ご飯食えて、行動を起こすことでマスコミが取り上げてくれる・・・政府も黙っていないだろうし。そういうことを勇気を持ってやりなさいって僕は言いたい。ただ、仕事がない仕事がないって言ってさ、俺より良い物着てるからね、みんな。なんにもしないでいるっていうのは俺は同情しないんだよ。で、あそこで炊き出しやっているっていうのはどっかの党派でしょ。言いたくないけど、みんな自分たちの組織を守るためにやっているだけであってさ。みんな怒ればいいの。国会が近いんだからさ。みんなが一気に突っ込んでいけばいいんだよ。みんなが一斉に捕まったら、牢はいっぱいになるし、向こうも困るだろうし。今、全部暖房付ですからね。僕たちの時代とは違う(笑)。ほんと、今、1000人くらい捕まったら面白いだろうね。全共闘の争いで、最高捕まったのが470人くらいかな。このとき警察はたいへんだったんだから。

−お話をもっとお聞きしたいのですが、時間がそろそろということです。最後に次回作、次々回作について少しお話ください。

◆次回作は、今、脚本第1稿があがって、今、第2稿目に入っています。江戸川乱歩の『芋虫』が原作。太平洋戦争の話。満州に行き、多くの中国人を殺すも、自分もやられて、芋虫のようになって、多くの勲章と新聞記事と共に帰ってくる男の話。“戦争はいろんな人に不幸を与える”っていうことを僕は言いたいし、撮りたい。 その後に、もう1本、自分で考えて撮りたいと思っているのがあります。もう1本、もう1本とだんだん欲が出てきているから、きっと死ぬまでやってんでしょうね。 とりあえず、次回は満州、中国ロケありで、撮ろうと思ってます。

−本日はどうもありがとうございました。

 
 しかしそれにしても、いくらなんでもここまでの無断転載はほんとにまずいなと思います。資本の上にあぐらをかいたそこらのマスメディアの記事ならどうということもないのですが、いっちゃなんですけどこういった弱小サイト、それもどうやら熱烈なファンの情熱に支えられて運営がつづいているらしい映画系サイトの著作権を、まるで国家権力のごとく傍若無人に侵害してしまうことには心の痛みを覚えずにいられません。しかも記事の主役が若松孝二さんと来るのですからとても恐ろしい気がするのですが、そういえばもう十年ほど前のこと、大阪の飲み屋で飲んでいて見知らぬ映画関係者と話を交わしたところ、おまえは若松孝二にそっくりだといわれていろいろな意味で驚いたものでしたが、ま、似たもの同士ということにしていただいて、それに私もここへ来て一応は映画関係者であるということにもなりましたので、今回は無断転載の強行突破を図りたいと思います。それはそれとして、「芋虫」が若松孝二さんによって映画化されるということは、およそ交わるはずがないと思われていた二本の線が鋭く交差することにほかならないと思われるのですが、こうして映画化の報に接すると、むしろこれまで交わっていなかったのが不思議だという気もしてきますから不思議なものです。
 
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 Wikipedia:若松孝二