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2009年2月23日(月)

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2月21日 読売新聞社
ノーベル物理学賞受賞 益川敏英さん〈中〉
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ノーベル物理学賞受賞 益川 敏英さん<中>

「ああしろ、こうしろと言われると、絶対にやるもんかという子どもだった」と振り返る益川さん=菊政哲也撮影

図書館通い 芥川に没頭

 中学に入っても、相変わらず、先生の話を聞いてない。3年の3学期、先生から紙を渡され、作文を書かされました。僕のテーマは「星の進化」。宇宙に漂うガスが集まり、核融合して太陽のように燃え出し、再び宇宙に散り……とか。

 ところが、友達はみんな、「将来ナントカになりたい」って書いている。よく聞いてみると、卒業文集用の作文だった。僕だけですよ、将来について触れてないのは。自分の好きなことだけ勝手にやってたんですなぁ。

 世界中に苦手なことが知られちゃった英語も、今から思えば、「聞き取って」発音し、覚えるのが苦痛だったから。語学は、まず聞かないと始まりませんから。正直、英語は中学生ごろに捨てちゃいました。音楽も実技が悪かった。音痴なのね。中学の成績表には、5やら2やら、いろんな数字を取りそろえておりました。

 でも、本はね、小学校高学年からよく読むようになりました。学校でグループ学習をすることになり、友達の家で、誰が何を調べるか作戦会議をして、近くの図書館に出かけたんです。

 その時初めて、「本を手に取って読む」ことを覚えました。こんな面白いものがあるんだと。それからですね、江戸川乱歩の「少年探偵団」や理科の本など、夢中で読み始めたのは。

 特に、芥川龍之介は、物語の組み立てが非常に巧みで面白く、作品の97%は読んだと思います。いつか芥川論を書いてやるぞ、と思っていたほどですが、すでに書いた人がおられて、僕の出る幕は全くなし。

 新しい知識への貪欲さ、法則性を持つものへの興味は、そのころから生まれた気がしますね。

 でも、図書館通いには、不純な下心もありました。おやじに、砂糖の配達をさせられるのが嫌でね。「ちょっと図書館へ調べ物に行ってくる」って、逃げ場にしてたんです。

 ちなみに、砂糖の袋は、上白糖は30キロ。中学時代には、キューバ糖、いわゆるザラメの100キロの袋を担がされていました。こういう環境で育ちますと、体は小さいけど、筋力には自信がつきましたね。

(2009年2月21日 読売新聞)

 
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