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2009年11月4日(水)
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第六章 ウィリアムスン『灰色の女』と黒岩涙香『幽霊塔』をめぐって
小森健太朗 そしてまた、原作が『灰色の女』らしいとわかっても、現物を参照した者がいないために、色々と不確実な憶測が、『幽霊塔』のテキストをめぐってなされていた。たとえば、江戸川乱歩著・『幽霊塔』の創元推理文庫解説でジョルディ・フィリップは「最初の『幽霊塔』は、外国作品を自由奔放に切り貼りした、いわば複合翻案ものであったと考えられます」と述べている。これは、この『灰色の女』と涙香の『幽霊塔』を読み比べてみれば、まったくそうではないことが明らかとなる。『幽霊塔』は複合翻案ものでは全くなく、専らウィリアムスンの『灰色の女』を原作とする(原作に比較的忠実な)翻案である。 |
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第十章 密室講義の系譜
小森健太朗 乱歩の分類の卓見は、犯行時の被害者と犯人の位置という観点を導入して、より厳密な分類をしているところにある。乱歩の密室分類は、カー、ロースンの密室分類を継承しつつ、完成度を高めたものとして評価すべきだろう。しかし、この分類もまた、仔細に検討してみると、いくつかの不備があることに気づかされる。 |
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▼東京創元社:英文学の地下水脈 古典ミステリ研究〜黒岩涙香翻案原典からクイーンまで〜 |