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2009年4月8日(水)

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4月8日 毎日新聞社
ひと:安藤礼二さん 第3回大江健三郎賞受賞の文芸評論家 棚部秀行
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ひと:安藤礼二さん 第3回大江健三郎賞受賞の文芸評論家

 「評論を文学の言葉と認めていただき、非常に光栄」と童顔を崩して喜ぶ。

 受賞を決めた評論集「光の曼陀羅(まんだら) 日本文学論」(講談社)。民俗学者で歌人の折口信夫(しのぶ)の小説「死者の書」を軸に、日本近代文学への論考を深めた。

 「死者の書」は中高生のころに手にして以来、何度も読み返してきた作品。「一人の死者の面影から数千の仏様がわき上がる。無数の言葉が一つの光の形になり、逆に無限なものに広がっていく。折口作品の原形であり、自分が追い求める文学の原形です」

 「光の曼陀羅」は丹念に作品と資料を読み解き、折口信夫の同性愛、宗教観に新たな解釈を加えていく。共に読み続けてきた埴谷雄高(はにや・ゆたか)や南方熊楠(みなかた・くまぐす)、江戸川乱歩……。「死者の書」を起点に<死者たちへの捧(ささ)げものとしてある文学>の新たな系譜を描いた。「10代の私の読書のケリをつけるつもりで書き終えました」と語る。

 文芸評論家としてデビュー7年目。一人で選考した大江さんは「散文を読む喜びと刺激に満ちている文章の書き手」と称賛した。受賞作は、執筆の過程で次々と明らかになった新事実について、解釈に解釈を重ねて完成させたという。

 「対象の分析だけではなく、解釈の奥底まで行って、現実を変える。当たり前の歴史を、どう解釈し直すか。それが未来につながると思います」と力を込めた。【棚部秀行】

 【略歴】安藤礼二(あんどう・れいじ)さん 東京都出身。多摩美術大准教授。02年「神々の闘争 折口信夫論」で群像新人文学賞評論部門優秀作受賞。41歳。

毎日新聞 2009年4月8日 0時09分(最終更新 4月8日 2時41分)

 
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