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2009年4月12日(日)

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4月12日 産経新聞社、産経デジタル
第3回大江健三郎賞を受賞した安藤礼二さん(41) 海老沢類
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第3回大江健三郎賞を受賞した安藤礼二さん(41) (1/2ページ)

2009.4.12 09:04

大江健三郎賞の受賞が決まった安藤礼二さん(41)

 ■「評論は文学 大変な励みに」

 第3回大江健三郎賞(講談社主催)の受賞が決まった。評論が選ばれたのは初めてだけに、「批評は単に対象を分析するのではなく、解釈を重ねて全く新しいものを生み出す創作だと思う。評論を文学として評価していただけて大変励みになった」と喜びもひとしおだ。

 受賞作『光の曼陀羅(まんだら)日本文学論』(講談社)は、歌人・研究者・小説家…と多彩な顔を持つ折口信夫(しのぶ)の読解を足がかりに、埴谷雄高(はにやゆたか)、稲垣足穂(たるほ)、江戸川乱歩ら個性的な表現者の系譜を描き出した評論集。なかでも、折口の小説「死者の書」については、雑誌掲載時の初稿と4年後に出た単行本の比較検討を通して、同性愛や新仏教とのかかわりなどユニークな視点を提示した。

 「話の筋は全くわからないけれど尋常でないことが書かれている気がした。唯一のことを描きながら、それが無限に広がっていく…そんな自分の思い描く文学の原型がある。書き進めながら10代のころ読んだ本が一つの形に収斂(しゅうれん)していくのを体感できました」

第3回大江健三郎賞を受賞した安藤礼二さん(41) (2/2ページ)

2009.4.12 09:04

 受賞作は海外で翻訳・刊行される予定だが、「本当は『死者の書』を(翻訳して)紹介したい。日本文化の見方が変わるかもしれないから」。7日発売の文芸誌「新潮」に発表した「霊獣」は「死者の書」の私家版完結編だ。「自分の推測を交えた“評論兼小説”。これで二十年来の『謎』にけりをつけたつもり」と笑う。

 昭和42年東京生まれ。約10年間の出版社勤務を経て、平成18年に『神々の闘争折口信夫論』で芸術選奨文部科学大臣新人賞を受けた。大学時代に学んだ考古学的なアプローチが、文芸評論家としての足場を支えている。

 「感覚はもちろん大事だけれど、具体的なモノの発掘を通してしか歴史は塗り替えられない。誰もがアクセスできる資料空間に、無数に宝が埋もれている。じっくり調べていけば文学の歴史や社会史もかなり変わってくると思うんです」(海老沢類)

 
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