RAMPO Entry 2009
名張人外境 Home > RAMPO Entry File 2009 > 05-22
2009年5月22日(金)

書籍
少年探偵団 怪人二十面相 田中顕
5月22日初版 竹書房 BAMBOO COMICS
B6判 カバー 225ページ 本体476円
著:江戸川乱歩(原作)、田中顕(作画) 協力:平井憲太郎
少年探偵団 怪人二十面相
漫画 p1−222
制作手記
エッセイ p224−225

 昨年末に映画「K-20 怪人二十面相・伝」が封切られ、年明けに「月刊コミックブンブン」で「少年探偵団BD」の連載が始まったかと思ったら、今度は書き下ろしの漫画になりました。最近ではダークヒーローと呼ばれているらしい怪人二十面相の話題です。
 
 
 表紙カバーに「最モ原作ニ忠実ニシテ」とあるとおり、乱歩の「怪人二十面相」をほぼそのままなぞったストーリーが展開されますが、巻末の「制作手記」にはこんなことも記されています。
 
二十面相の変装や予告状のアイデアは怪盗ルパンを初めとするミステリーのヒーローたちがモデルになっているそうですが、『屋根裏の散歩者』や『人間椅子』などの人間の闇の心理を描くことが得意であった乱歩独特のキャラ付けもあり、二十面相がただの子ども向け読物でないことも魅力のひとつだといえるでしょう。二十面相は宝物を盗み終わった後もすぐに逃げずに、わざわざ変装して敗北者の顔を見物する事に愉しみを感じるサディスティックな性格ですし、明智探偵と小林少年の関係も、単なる師弟関係以上の妖しげな雰囲気を感じさせます。余談ですが、この関係を絵的にどのように描くか?について、同じ昭和初期愛好家にして師匠でもある小畑健先生に相談をしたところ「いいじゃん! BLっぽく描いちゃってよ〜」という激励のお言葉をいただきまして、吹っ切れる事が出来ました。
 
 ですから終幕、怪人二十面相を捕縛するという大手柄を立てた小林少年が明智先生の胸に飛び込んでゆくシーンでは、一ページをフルにつかってこんなふうにBLっぽく描かれちゃった絵が登場します。
 
 
 原作でいうと「明智探偵も、思わず少年の名を呼んで、両手をひろげ、かけだしてきた小林君を、その中にだきしめました。美しい、ほこらしい光景でした。この、うらやましいほど親密な先生と弟子は、力をあわせて、ついに怪盗逮捕の目的をたっしたのです」とあるあたり、BLっぽさが頂点に達するシーンですが、小林君が女の子に変装しているのはこの漫画独自のそれこそ変奏で、こうなるとBLというのもなかなか複雑なものなのだなと感心させられてしまいます。
 
 竹書房:Home