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2009年6月21日(日)
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6月19日 毎日コミュニケーションズ | |
『K-20 怪人二十面相・伝』の佐藤嗣麻子監督が語る映画と VFX の深い関係 国領雄二郎 | |
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『K-20 怪人二十面相・伝』の佐藤嗣麻子監督が語る映画とVFXの深い関係
国領雄二郎 2009/06/19 感動ものでないエンターテインメント映画 佐藤嗣麻子 江戸川乱歩が創造した不朽の人気キャラクター「明智小五郎」と「怪人二十面相」。この二人の対決を、斬新な世界観で描いた映画「K-20 怪人二十面相・伝」の監督と脚本を担当した映画監督・佐藤嗣麻子に話を訊いた。 ──佐藤監督はこれまでもテレビドラマで江戸川乱歩の作品を何作か手掛けられています。今回の『K-20 怪人二十面相・伝』はとにかく江戸川乱歩の原典、北村想の原作にあるジュブナイル要素は残しつつも、大胆なアレンジがなされているのが印象的でした。 佐藤嗣麻子(以下、佐藤)「元々、制作のROBOTから映画化の依頼があったのですが、北村想さんの原作は長いのでそのままでは、映画化は難しいと思いました。ROBOTからの希望は『日本にない冒険物をやりたい』という話だったので、原作から映画になりそうな要素を抽出して、今回の物語を創りました」 ──日本にはない冒険物といいますと、具体的には? 佐藤「『インディ・ジョーンズ』のような冒険物という事ですね。深いテーマがあるという作品ではなく、感動物でもなく、カラッとした爽快な映画という事です」 ──この作品の設定は第二次世界大戦が起こらなかった「もうひとつの日本」となっています。敗戦による他国からの支配がないままの日本の姿は、とても新鮮でした。ビジュアルひとつとっても、スチームパンク的というか……。 佐藤「この映画の世界観は戦前までの文化を良く調べて描いたつもりです。戦争で失われたものも、戦争がなければ現在とは違う形で残り発展していたという考えで、世界を創りました」 K-20 怪人二十面相・伝 1949年、架空都市の「帝都」は19世紀から継続する華族制度により、極端な格差社会となっていた。そんな世の中に、富裕層のみをターゲットにした怪人二十面相が出現し、世間を騒がせていた。名探偵・明智小五郎は怪人二十面相を捕らえようと奮闘しているのだが……。 2 『ALWAYS 三丁目の夕日』のVFXスタッフが別世界を創造 この映像にVFXは不可欠 佐藤監督はVFXがまだSFXと呼ばれていた時期から、自身の映画の中でその力を活用していた ──階級や軍部が残った社会という設定面だけでなく、現実では有り得ないビジュアル表現には、VFXを担当した白組の尽力が大きいと思います。佐藤監督はホラー映画から業界に入られたという事もあり、映画におけるVFXの有効性を、普通の監督よりも強く感じられていると思います。この作品では、やはりVFXが重要だったと思うのですが。 佐藤「例えば、脚本を担当した『アンフェア』のような、映像的にVFXを多用していないと思われる作品でも、VFXは意外と多いんです。そういう意味ではVFXを特別とは思わないのですが、『K-20』に関しては当時の小道具ひとつとってみても、現在はないという部分などで苦労しました。ただ、VFXを担当した白組は『ALWAYS 三丁目の夕日』で、現実にはない映像を丸ごと作るというVFXに挑戦しているので、大変な仕事なのですが、こなれてきたという部分があったかもしれません」 ──佐藤監督は白組とCFなどでもお仕事をされていますね。 佐藤「実は『エコエコアザラク』やテレビドラマ『南くんの恋人』といった作品で、白組にはずっと以前からVFXを担当していただいてます。以前は色々とオーダーを出したのですが、最近は最初から凄くクオリティの高い映像を作ってくださるので、助かっています」 ──あそこまでスチーム・パンク的な映像というのは、邦画ではほとんどアニメ以外では見た記憶がないのですが、あの映像は佐藤監督の嗜好なのでしょうか? 佐藤「元々『メトロポリス』とか、ああいうスチーム・パンク的な世界観は大好きなんです。今回、登場したテスラも、SFファンには有名な存在ですし、乱歩にも出てきます」 「もうひとつの日本」という現実とは違う世界。白組のVFXがこの架空世界の映像化を実現した ──江戸川乱歩のイメージから大きく変わったキャラクター造形も斬新でした。 佐藤「二十面相のマスクに関しては、ゴムや鉄でなく木で出来ているというイメージなんです。海外の黒いマスクの怪盗というより、日本の仏像をモチーフにしています」 ──ダークというか、一癖あるような明智小五郎も意外でした。 佐藤「頭は良いけど、嫌な奴で性格も悪いという明智小五郎は、北村さんの原作のままなんですよ(笑)」 ――そんなふたりの対決を軸とした冒険活劇という部分以外では、どんな部分にこだわりましたか? 佐藤「やっぱり江戸川乱歩ファンを裏切らないという部分は意識しました。『怪人二十面相が逃げる時、縄梯子に捕まって高笑いを残す』とか、江戸川乱歩の荒唐無稽さは大切にしました」 ──乱歩作品は猟奇の部分ばかり強調されますが、ポプラ社の一連のジュブナイル作品は、とにかく荒唐無稽で面白いですからね。 佐藤「大人が読むとバカバカしいところが面白いんですよ(笑)。二十面相の変装にしてもポストに化けたりとか、小林少年も金粉を塗って仏像に化けたりとか。そんな、原典にある『あり得ない荒唐無稽さ』を楽しむ映画にしたいと思いました。あり得ない事を真面目に撮るという事を意識しています」 フランスのパルクールを取り入れた生身のアクション ──よく考えると、お話は荒唐無稽なジュブナイル冒険活劇で、映像は誰も観たことないようなスチーム・パンクな日本という凄い映画ですよね。そんな世界で、佐藤監督がほかに力を入れた部分はありますか? 佐藤「VFXだけでなく、しっかりとアクションを描くということに注力しました。具体的には、北村さんの原作にもある二十面相の泥棒修行ですね。どんな障害物があっても直線で走るというやつです。このアクションには、フランスのパルクールという手法を使いました。最近の『007』シリーズや『ボーン・アルティメイタム』で使われた手法なんですが、CGやワイヤーに頼らず本当に飛んだり、跳ねたり、飛び降りたりする激しいスタントです」 主演の金城は見事にパルクールに対応。生身のアクションを見せてくれる ──アクションシーンは、ワイヤーに頼っていないせいか、確かに良い意味で「重い」印象がありました。1980年代までの作品では、そのようなリアルに身体で魅せるアクションが主流でしたが、最近は減少してますよね。主演の金城武さんは、どれぐらい対応出来ていましたか? 佐藤「金城さんは、身体もよく動く器用な方で『やって』とお願いした事は大抵こなしてくださいました」 ──この作品をDVDで観る方に、どう楽しんで欲しいでしょうか? 佐藤「全年齢層に楽しめる作品だと思います。荒唐無稽な冒険活劇なので、皆でつっこみを入れながら見て欲しいですね(笑)。あと、白組が過去の映像作品で使った小道具が、ゲスト出演というかこっそり登場しているので、DVDを良く観て見つけて欲しいですね」 アート系の監督とは違う場所を目指している ──佐藤監督が「エコエコアザラク」で注目を浴びた当時は「女性の映画監督」という存在自体が稀有なものでしたね。 佐藤「そうですね、ほとんどいなかったですね」 ──最近では、当時より女性監督が増えているという印象があります。 佐藤「単館係というか、アート系の監督は増えてきていると思うのですが、エンターテインメント系の女性監督は、ほとんどいないと思います」 ──そういったアート作品の女性監督とご自身の違いを感じたりはしますか? 佐藤「よくわからないのですが、男女問わずアート系と呼ばれる監督の方々は何か言いたいことがあって作品を創っているのだと思います。私は職人というか企画に合わせて面白いエンターテインメントを創りたいというタイプなので、目指している部分がまったく違うと思います」 やっぱり楽しい物を創りたい ──佐藤監督は、どういうエンターテインメントを目指しているのでしょうか? 佐藤「やっぱり楽しい物を創りたいですよね。ファンタジーが大好きなので、『ゲド戦記』とか実写で映画化したいんですよ。本当は『ロード・オブ・ザ・リング』を映画化したかったのですが、もうやられちゃったので……。マーケットとかを考えないで、純粋な夢ですが、萩尾望都さんの作品が好きなので、萩尾さんの『銀の三角』とか『スター・レッド』とか映画化してみたいですね」 ──佐藤監督は『アンフェア』などで脚本家としても活躍されていますが、両者の違いは感じますか? 佐藤「実は、脚本のほうが楽です。文章を絵にしていく監督の仕事は、大変な作業の割りに儲からないんですよ(笑)」 ──それでも、映画監督を目指す人は絶えません。映画監督を目指す人に、なにか佐藤監督からアドバイスのようなものはありますか? 佐藤「とにかく作品を作ることですね。学生さんなら、マーケットや倫理の制約がないので創り易いと思うんです。その立場を利用してバンバン作品を作っておかないと、映画監督にはなれないと思います。作ったことがない人、作品がない人が業界に入って助監督になり『映画を監督させてください』と言ったとしても、やっぱり作品がないと難しいと思うんですよ。だから、とにかく完成度の高い作品をどんどん作る事が大切だと思います」 ──今日はどうもありがとうございました。 K-20 怪人二十面相・伝
DVD 豪華版 6,090円(写真左)、通常版 3,990円(写真中央)、Blu-ray 5,040円(写真右) 撮影:石井健 |
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