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生身の人間によるアクションへの“こだわり”
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生身の人間によるアクションへの“こだわり”

(2009年06月24日 14時00分)

 昨年12月公開映画『K-20 怪人二十面相・伝』のDVD&Blu-ray発売を記念して、佐藤嗣麻子監督がこのほど、ORICON STYLEの取材に都内で応じた。佐藤監督は「最もこだわったのは、生身の人間によるアクションシーン。日本映画でパルクールを取り入れたのは、私が知る限り初めてのはず」と作品の見どころを語っている。

◆300を超える規模は初めて。そういう意味ではメジャーデビュー作品

「金城さんは、『こうやったら面白いんじゃないの?』とディスカッションをしながら役を作っていくタイプの役者さんで、みんなに好かれるとてもお茶目な人でした」(佐藤監督談)

 同映画は、佐藤監督のもとに『ALWAYS三丁目の夕日』シリーズのスタッフが再結集し、1989年に劇作家・北村想が発表した小説『怪人二十面相・伝』を映画化。2008年12月20日より東宝系全国322クリーンで公開された。

 「初めて脚本・監督を務めてから18年になりますが、いずれも単館系の作品だったので、300を超えるスクリーン規模は初めてでした。そういう意味ではメジャーデビュー作品。ビッグバジェットでエンターテインメント大作を作るのが、元々の夢でした。やっぱり、みんなに見せたいし、見てもらいたいから」。

 これまでテレビの連続ドラマを手がけることも多かった佐藤監督は「連ドラの場合は予算枠が決まっていて、セットの感じも決まっているので、カット割りも撮り方も同じになってしまう。その繰り返しだけだと、正直、飽きるんです(笑)。私は、毎回新しいことをやりたい方なので、今回はほぼ全てがチャレンジで楽しかったのです」と振り返った。

 明智小五郎が登場する作品を手がけるのはこれが3度目の佐藤監督だったが、脚本作りには相当苦労したという。最初は原作に忠実に書いていた脚本を、どんでん返しのある冒険活劇に書き直し、舞台設定も大胆に変更した。原作では昭和の戦前戦後の東京を舞台にしているが、映画では舞台を1949年、“第二次世界大戦がなかった”日本の架空都市・帝都としたのである。

 この架空都市・帝都を埋めつくす建築物や、街中を走る鉄道は、VFX(ビジュアルエフェクトのこと。実写では得られない画面効果を実現するための技術)を駆使して街を再現。“三丁目”の技術を総結集し、なおかつそれを上回るクオリティの映像について「劇場のスクリーンで見せるためのものだったので、ご自宅で見る場合は出来るだけ大画面のテレビで見てください」と冗談まじりに懇願した。

◆生身の人間で撮影するほうが実はお金はかかる

「ワイヤーアクションの撮影は肉体的に辛かったと思いますが、さすがプロの女優・松さんは文句一つ言わないで辛抱強く演じ切ってくださいました」(佐藤監督談)

 VFXはもちろん、ドラマとしても見ごたえのある作品になっているが、「自分にとって、一番こだわったのはアクションシーン。生身の人間でやりたかった」と佐藤監督は振り返る。本場・香港や中国の撮影現場を体験してきた主演俳優の金城武でさえ「見たことがない」と驚いた機材を使い、キャスト自らがワイヤーアクションに挑戦した。

 さらに、映画『007 カジノロワイヤル』(2006年)を参考に、フランス発祥のストリートスポーツ“パルクール”を採用している。これは、道具を用いずに自分の体だけで障害を乗り越え、より早く移動するテクニックを磨くもの。スタントマンとしてロシア人2人組が撮影に参加し、CGを一切使用せず、実際の生身の人間の技で撮影された。「生身の人間で撮影するほうが実はお金はかかるんですよ。CGのほうが安く上がる。でも、私はパルクール同士が闘うアクションシーンが撮りたくて、この映画を撮っていたんです。生身の人間は肉体の重さを感じるというか、それだけで迫力が増すと思います」。

 また、大勢のスタッフ・キャストを取りまとめ、映画を完成させていくのも大きなチャレンジだったという。ビッグバジェットの作品を背負うプレッシャーはなかったのか聞くと、「プレッシャーを感じているとエネルギーがそちらにいってしまうので無駄」とキッパリ。そんな佐藤監督がアドバイスしてくれた処世術は「我を張らず、みんなの意見を聞くこと。人は意見を聞いてもらえないと心を閉ざす傾向があるので、受け入れる、受け入れないは別にして、全部、聞いて、それから決める。人からもらったアイディアのほうが面白いこともけっこうあるし。そうやって人の意見を取り入れつつも、自分らしさというのは必ず出るものだから」。

 最後に佐藤監督は「2度と同じことはしたくない」と前置きしつつも、「もし、続編を撮るなら、もう少しサスペンス色を濃くして、大人っぽく作りたい」と今作で意外な正体が明らかになる“二十面相”のその後に期待を残した。

佐藤嗣麻子

【PROFILE】
1964年生まれ。1987年、ロンドン・インターナショナル・フィルム・スクールへ留学後、脚本・監督を務めた日英合作映画『ヴァージニア』(1992年)で東京国際ファンタスティック映画祭「アボリアッツ賞」を受賞。また、1995年の監督作『エコエコアザラク』が、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭で批評家賞(南俊子賞)を獲得したほか、2000年、ゲーム『鬼武者』のオープニングムービーでは、シーグラフの“Best of show”を日本人として初受賞。脚本家・監督として映画、ドラマ、CM、ゲームと多方面にわたり活躍を続けている。おもな脚本作品にフジテレビ『横溝正史・金田一耕助』シリーズ(2004年〜)、関西テレビ『アンフェア』シリーズ(2006年)、『アンフェア the movie』(2007年)などがある。

『K-20 怪人二十面相・伝』

Blu-ray 5040円(税込)

DVD 豪華版 6090円(税込)/DVD通常版 3990円(税込)

【ストーリー】
舞台は、1949 年―架空都市《帝都》。19 世紀から続く華族制度により、極端な格差社会が生まれ、帝都の富の9 割は、ごく一部の特権階級に集中していた。そんな中、富裕層のみをターゲットとし、次々と美術品や骨董品を、魔法のような手口で盗んでしまう《怪人二十面相》の出現が世間を騒がせていた。人は彼を“K-20”と呼ぶ−。

江戸川乱歩の少年向け探偵小説『少年探偵団』シリーズに登場する大怪盗・怪人二十面相。狙ったものは必ず手に入れ、変装が得意で素顔は誰も見たことがない。そんな怪人二十面相に間違われてしまったら!? 濡れ衣を着せられたサーカス団の男が、真相を求めて本物の二十面相に挑む冒険活劇。

原作:北村 想 『怪人二十面相・伝』(小学館 刊)
脚本・監督:佐藤嗣麻子
脚本協力・VFX協力:山崎貴
VFXプロダクション:白組
企画・制作プロダクション:ROBOT
出演:金城武、松たか子、仲村トオル
発売日:6月24日(水)
発売・販売元:バップ
(C)2008 「K-20」製作委員会

 
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