RAMPO Entry 2009
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2009年10月30日(金)

書籍
〈東海〉を読む 近代空間と文学 日本近代文学会東海支部
6月30日第一刷 風媒社
A5判 カバー 352ページ 本体3800円
編:日本近代文学会東海支部
愛知の文学者たち ──終戦以前 助川徳是
ガイド p24−40

愛知の文学者たち ──終戦以前

助川徳是  

 小酒井不木は蟹江町の生まれだが、晩年は名古屋市昭和区鶴舞四の五の一三に住んだ。大正一二年一〇月から急性肺炎のためわずか四〇歳で世を去る昭和四年四月一日まで、不木はこの家で『恋愛曲線』『死の接吻』『疑問の黒枠』『人工心臓』など彼の探偵小説のすべてを書いた。不木は小説のほかに『犯罪文学研究』など権田萬治が不朽の価値を持つ独創的研究と呼ぶ随筆を書き、豊かな語学力を駆使して、ドゥーゼの『夜の冒険』チェスタートン『孔雀の樹』をはじめとする翻訳も残している。
 不木は名古屋を舞台にした作品を多く書いている。最大の長編『疑問の黒枠』がそうであるし、短編もほとんどがそうである。『大雷雨夜の殺人』も大須あたりを中心として昭和初頭の名古屋の街が浮かび上がってくる。
 不木によって見出された江戸川乱歩もゆかりの文学者であろう。彼は三重県名張市の生まれだが、愛知五中に学び、昭和二年一一月から、長谷川伸、国枝史郎、土師清二らと耽綺社に加わり、劇や探偵小説を合作で作るという運動に参加したりしている。


 図書出版 風媒社:〈東海〉を読む