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2009年11月3日(火)

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7月9日 読売新聞社
市川染五郎 in 6月歌舞伎座(3)
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市川 染五郎in6月歌舞伎座(3)

●逃げた人間豹に決着
<聞>市川染五郎インタビューのつづき。

──10月は国立劇場で、岩豪友樹子脚本、九代琴松(松本幸四郎)演出の「京乱噂鉤爪(きょうをみだすうわさのかぎづめ)」に出演しますね。江戸川乱歩「人間豹」を原作にした昨秋の「江戸宵闇妖鉤爪」に続く乱歩歌舞伎第2弾です。続編を作ることになった経緯は。
 「昨年の公演中に、来年も何かやりましょうという話が出ていました。僕は、乱歩の作品をいろいろやる必要はない、やるんだったらこの続きを書き足そうと思いました」

──昨年の「江戸宵闇妖鉤爪」では、原作の昭和から江戸に時を移し、名探偵ならぬ同心・明智小五郎(幸四郎)に追い詰められた殺人鬼の人間豹・恩田乱学(染五郎)が、大凧に乗って空高く逃げるところで終わりましたね。
 「それから恩田はどうなったか。決着をつけなければと思ったんです」

──前作は、社会の悪い構造が恩田のような悪を生んだという話でした。今回は。
 「そのテーマは同じだと思いますが、権力者をかき回し、恩田は最期を迎えます」
──前作の大凧のような見どころは。
 「大凧は出ませんが、また違う形で宙乗りをします。そして、恩田はどのように死ぬか、完結性を感じていただけるようにしたいですね。幕末という混沌とした時代。誰が善か悪か分からない。悪だが善の面もある象徴として恩田があると思う。悪いことをする権力者をつぶすのなら恩田は正義の味方ではないか。この混乱のうちに、江戸時代は終わりを迎えるのです」

──新作に大変魅力を感じているようですが。
 「今の時代に影響された作品を作ることも大事ではないかと思っています。古典というものを踏まえてのことですが。まっさらなところに作っていくためには、神経を磨いていなければと思います。将来は新作を書きたいし、演出もしてみたいですね」
――10月の舞台も、将来、染五郎さんが書く新作にも期待しています。ありがとうございました。
(写真は市川染五郎)=おわり

 
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